藤商事 Research Memo(8):「変化の時はチャンス」と捉え、新規則機市場でシェア拡大を目指す

特集
2019年6月25日 15時48分

■今後の見通し

3. 成長戦略

藤商事<6257>は今後の成長戦略として、開発力および利益体質の強化を重点施策として継続的に取り組み、業界全体が伸びないなかでも、販売シェアを拡大していくことにより収益成長を目指していく方針としている。特に、ここ1~2年は新規則機への移行期となるため、新規則に対応したゲーム性の高い機種を開発することでシェアを拡大する好機とも言える。このため同社では今後も「開発力の強化」「利益体質の強化」を重点施策とするほか、新規事業となる「デジタルコンテンツ事業」の育成にも取り組んでいく方針となっている。

(1) 開発力の強化

開発力の強化では、投入機種の長期稼働の実現、パチンコ・パチスロ機のタイアップ戦略、斬新な演出やアイデアなどの積極採用、差別化された商品性の実現をテーマに、今までになかったものづくりに取り組んでいる。また、パチンコ・パチスロ機のタイアップ戦略も、「リング」や「地獄少女」などパチンコ機で高評価を獲得したタイトルでパチスロ機の市場投入を図り、パチスロ機市場でのブランド力を着実に高めている。このため、今後も有力タイトルに関してはタイアップ戦略を継続していくものと思われる。

また、斬新な演出やアイデアなどの積極採用については従来から同社の得意とするところであったが、今回の規則改正により射幸性が一段と抑えられるなかで、ギミックを用いた演出など、いかに楽しめる機種を開発できるかが稼働力を高めるうえで重要になってくると思われる。パチンコ機での大当たり確率の設定機能を生かしたゲーム性や独創的な役物、サイドユニットなどを使った迫力ある多彩な演出を備えた機種を開発し市場投入していくことで、販売シェアを拡大していく戦略だ。

また、2019年3月期にパチンコ機1機種を発売したJFJでは、今後、パチンコ機だけでなくパチスロ機の参入も進めていく予定となっている。前述したとおり型式試験の適合率が低水準のままとなっており、JFJを活用することで申請数の枠を広げ、発売機種数の維持拡大に取り組んでいく戦略となっている。

(2) 利益体質の強化

利益体質の強化では、開発から製造、営業までのすべての工程においてコスト低減に取り組んでいる。開発工程では内製化率の向上や、開発プロセスの効率化、仕様の見直しを行うことで1機種当たりの開発コスト削減に取り組んでいる。具体的には、リユース部品の活用や金型の共通化による設計段階からのパネル原価低減のほか、映像コンテンツの制作コスト低減などに取り組んでおり、改善余地はまだ残されていると見られる。

部材調達では、発注数量の最適化や新規リユース部品の採用、複数回リユース部品の拡充、リユース対象機種の拡充と調達力の強化に取り組んでいる。特に、ホールからのリユース対象機種の回収率向上や、調達ルートの見直しによるコスト低減余地はまだ残っていると見られ、材料費率も現状からさらに引き下げることが可能だ。

製造面では、セカンドブランドのJFJから今後発売するパチンコ・パチスロ機の生産効率化を目的として、名古屋事業所の製造ラインについて再構築を進める予定である。両社の生産拠点を集約することで物流コストの軽減が図れる効果も期待されている。

同社はこうした取り組みを行うことで、売上総利益率を50%程度の水準を維持していくことが可能と見ている。実際、2019年3月期は52.0%まで上昇している。2020年3月期は販売台数の拡大とともに、「エコ割」によるパネル販売やユニット販売比率が一時的に低下し売上総利益率の低下要因となるが、50%程度が適正な利益率の水準と弊社では見ている。

販売シェアについては、パチンコ機で10%程度を当面の目標としている。一方、パチスロ機に関しては稼働力を備えた機種を投入し、1機種当たりの販売台数を増やしていくことでブランド力を向上させ、販売シェアを着実に伸ばしていく戦略となっている。

(3) デジタルコンテンツ事業の育成

同社は新たな収益源の創出に向けて、スマートフォン用ゲームアプリの市場に参入し、育成に取り組んできた。2016年3月に美少女系の本格対戦RPG「マギアコネクト」、同年7月に麻雀バトルゲーム「アドヴェントガール」をテストマーケティングも兼ねて配信し、2018年3月に完全オリジナルとなるファンタジーRPG「23/7トゥエンティ スリー セブン」の配信を開始、メディアミックスによる広告展開も図りながら収益化を目指してきた。しかし、想定よりもユーザー数が伸びなかったことなどから2018年12月に配信サービスを終了している。

こうした経験を踏まえて、同社は第4弾となるゲームアプリを2020年前半のリリースに向けて開発している。同社オリジナルIPによるキャラクターを生かした独創性の高いゲームとなるようで、RPGをベースに新たな遊び方も取り入れている。ゲーム制作チームを新たに組織化し、著名なゲームクリエイターを起用するなど外部リソースを活用して開発を進めている。

その他、デジタルコンテンツ事業では提携先のサン電子を通じて、パチンコ機やパチスロ機の実機シミュレーションアプリを配信(1タイトル2千円)しており、同社はサン電子からロイヤルティ収入を得る格好となる。2019年3月までに「パチスロ リング 終焉ノ刻」「CRリング 終焉ノ刻」「CR戦国†恋姫」の3タイトルをリリースし、合計で5.7万ダウンロードを配信し、2019年4月に4タイトル目となる「CR緋弾のアリアAA」の配信を開始した。直接的な業績への影響は軽微だが、実機のファンがアプリでも楽しめるほか、新規ユーザーがアプリを体験後にホールの実機で遊技する流れを作るなど、ファン層の広がりが期待できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

提供:フィスコ

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