復活のステージに立つ「外食関連株」、サプライズ決算が急騰を呼ぶ <株探トップ特集>

特集
2019年7月22日 19時30分

―外食全体は堅調に推移、吉野家の「超特盛」株高パフォーマンスに続く銘柄は―

外食関連株の業績が好調だ。ここ決算発表が相次ぐなか、サプライズ決算となった吉野家ホールディングス <9861> をはじめ、外食関連株には好業績発表を受け株価が急伸するものが目立っている。正直なところ、投資対象としていまひとつ魅力が乏しかった外食関連だが、ここにきて様変わりの気配も感じられる。また、日米金利差縮小がドル売り・円買いを誘発するなか、「円高」は総じて原材料安につながるとの思惑もあり、これも外食関連株にとっては追い風となる。更に、混沌とする世界経済を背景に主力株が手掛けにくいなか、内需関連の一角としての魅力も加わり妙味が増しているようだ。変化の兆しが見えはじめた外食関連の動向を追った。

●吉野家HD、「超特盛」大ヒットで株価はホームラン

7月10日、吉野家ホールディングスの大幅高に市場の注目が集まった。この吉野家の好決算を皮切りに、外食関連株の好決算を受けた急動意が始まることになった。

吉野家HDは、9日取引終了後に第1四半期(3-5月)連結決算を発表。営業利益は10億4400万円(前年同期1億7800万円の赤字)、最終利益10億9700万円(同3億8800万円の赤字)となり、大幅に黒字転換したことがサプライズとなり物色の矛先が向かった。株価は4月22日に1669円まで売られ年初来安値を更新したが、ここを底にジリ高を続けていた。9日に発表した決算が好感され、1900円近辺にあった株価は翌日にはマドを開けて急伸、17日には2198円まで買われ年初来高値を更新し、現在も高値圏で推移している。

主力の吉野家で、牛丼の新サイズ「超特盛」が想定を超える大ヒットとなるなど、既存店売上高が前年同期比6.1%増と好調、また各セグメントの既存店売上高が堅調だったことが寄与した。加えて、積極的に出店を進めている「はなまる」「京樽」及び海外セグメントの売り上げも伸長、アルバイトなどの時給上昇による人件費増加を吸収した格好だ。なお通期は、営業利益10億円(同9.6倍)、最終利益1億円(同60億円の赤字)の従来見通しを据え置いている。

同社では「いままで散発的に行っていた新メニューなどの投入を、手を緩めることなく2ヵ月おきくらいに進めた。創業120周年を迎えたなか、より一層計画的に牛肉関連商品などの新商品投入、プロモーションなどを行っていく」(グループ企画室 広報・IR部)と、攻勢を強める構えだ。

また、10月の消費増税に伴い、株式市場では軽減税率で恩恵を受ける銘柄の一角としても思惑を呼びそうだ。軽減税率は、消費税率が8%から10%に引き上げられることに伴い始まる制度で、「酒類・外食を除く飲食料品」に対して税率を8%に据え置くというもの。外食の範疇(はんちゅう)から外れる「出前」や「お持ち帰り」は軽減税率が適用され、以前からテイクアウトを行っている吉野家にも注目が集まりそうだ。これについては吉野家HDでは「特に軽減税率対応ということは考えてはない。ただ、出前需要については、(デリバリー企業の)出前館やウーバーイーツと取り組みを進めており、現在は約400店舗でサービスを行っている。ここは積極的に展開を図っていきたい。この結果として、軽減税率が導入された場合、こういった面での需要も増加すると考えている」(同)と話す。

軽減税率に絡み、同社以外でも牛丼大手の「すき家」「なか卯」などを展開するゼンショーホールディングス <7550> 、「松屋」「松乃家」の松屋フーズホールディングス <9887> なども思惑買いを誘いそうだ。

●外食全体は堅調に推移

日本フードサービス協会が6月25日に発表した「外食産業市場動向調査・2019年5月度結果報告」によると、売上高で「ファーストフード業態」が3.9%、「ファミリーレストラン業態」が(同)3.4%、「パブ・居酒屋業態」ではパブ・ビアホールが1.5%、居酒屋は0.2%とそれぞれ前年を上回ったと発表している。これについて、同協会では「外食全体は堅調に推移している。足もと単価上昇が受け入れられたとみており、これが好影響となって数字に表れたようだ」と分析。今後については「大雨など天候要因が懸念される」と慎重な姿勢も見せるとともに、「消費増税の影響については注視していきたい」と話す。

外食全体が好調ななか、最近では好材料に対しても株価は反応薄というのが正直なところだった。人工知能(AI)をはじめとする先端技術に絡む関連株に、まばゆいばかりのスポットライトが当たる一方、外食関連株は影が薄い存在であったことは事実だ。それがいま、好業績や企業のニュースなどに株価は素直に反応しており、風向きの変化を感じる状況にある。

●クリレスHDは高値圏で頑強展開

カジュアルなフードコートから、居酒屋、ディナータイプのレストランまで、さまざまな店舗を企画・開発し直営するクリエイト・レストランツ・ホールディングス <3387> は12日の取引終了後、好調な第1四半期決算を受けて20年2月期の連結業績予想を上方修正した。売上高を1240億円から1300億円(前期比9.0%増)へ、営業利益を58億円から67億円(同68.5%増)へ、純利益を31億円から33億円(同2.5倍)へ上方修正。直近の業績動向が順調に推移していることに加えて、9月1日付でエスエスエルの株式を取得し連結子会社化することが寄与する見通しだ。株価は、12日の決算を受け3連休明けには急騰しきょうも1640円まで買われ年初来高値を更新している。

サイゼリヤ <7581> は10日取引終了後、19年8月期第3四半期累計(18年9月-19年5月期)連結決算を発表。売上高が前年同期比1.5%増の1157億8200万円、営業利益が同1.9%増の65億4600万円と増収増益となった。これを受け2400円近辺だった株価は翌日には一気に2700円目前まで買い進まれ急伸。同社は、低価格メニューのイタリアンレストランを展開するが、不調だった既存店売上高も、ここ2ヵ月は前年同月比プラスと業績の回復色をうかがわせる。現在株価は調整し2600円を挟みもみ合う。

●下値模索の串カツ田中は禁煙“織り込み済み”

ある飲食業界の関係者は「居酒屋業態に関しては、あくまで肌感覚だが、ようやく底打ち感が出てきたように思える。数字的にも一方的に不透明な状況から、強弱感が出てきており、ここからが正念場」と話す。人口の減少、若者の居酒屋離れなど厳しい状況が伝わるなか、薄日が差し込みはじめているとの見方もある。

そうしたなか、昨年6月に先駆けて店舗禁煙を打ち出し話題になった串カツ田中ホールディングス <3547> は、12日の取引終了後に第2四半期累計(18年12月-19年5月)連結決算を発表。売上高46億8200万円、営業利益3億300万円、純利益2億1700万円となり、18年11月期第3四半期から連結決算に移行したため前年同期との比較はないものの、従来予想の売上高44億円、営業利益2億6000万円を上振れて着地している。

店舗の禁煙について、会社側では「長期目的として串カツを日本を代表する食文化にするために、メインターゲット(20~40代)だけでなくお子様も大切にしており、受動喫煙対策として禁煙を始めた。開始当初はメディア露出が多く、特にファミリー層を中心に客数増加に結びついた。土日はファミリー層が定着し現在も順調だが、平日のサラリーマン層が減少している。メディアで取り上げられることが減り、禁煙の影響がでていると考えられる」という。6月10日からは平日開店から午後6時まで串カツ田中全店でハイボール・レモンサワーが1杯50円という「超絶ハッピーアワー」をスタートしている。これについては「日に日に認知度が上がっており、客数、売り上げともに伸びている。午後6時以降も売り上げが伸びており現時点ではいい効果がでている。平日の減少した層を、もう一度盛り上げるために、こうしたハッピーアワーなどのアルコール施策を今後も実施していく。新しい施策によって、新たな顧客にも訴求を図っていきたい」と攻勢をかける構えだ。

株価は決算を受けて3連休明けの16日に反発したものの、現在は2000円割れ目前と安値圏で下値模索が続いている。来年4月には東京都では受動喫煙防止条例が施行されるなど、飲食店での喫煙が姿を消すなか、禁煙による影響が既に“織り込み済み”の同社には再評価機運が台頭する可能性もある。

●踏ん張りどころの鳥貴族

鳥貴族 <3193> は17年10月に全品を税抜き280円から298円に値上げをして以降苦戦が続いている。6月7日の取引終了後に発表した第3四半期累計(18年8月-19年4月)単独決算は、売上高270億5100万円(前年同期比7.3%増)、営業利益7億9900万円(同45.7%減)、最終利益3億1000万円(同65.9%減)となったものの、通期計画の営業利益を上回って着地したことで底打ち感も出ている。7月2日には2303円まで買われ年初来高値を更新したが、 5日の取引終了後に発表した6月度の月次報告で、既存店売上高が前年同月比2.8%減と18ヵ月連続で前年実績を下回り、その後は軟調展開が続いている。現在は2100円近辺で推移しており、まさに踏ん張りどころの状況にある。

●本場インドで壱番屋、ハブは発祥イギリスで注目

海外展開の発表で、株価が急動意したのが壱番屋 <7630> だ。同社は「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開するが、8日取引終了後、三井物産 <8031> の海外拠点であるアジア・大洋州三井物産とインドに合弁会社イチバンヤ・インディアを設立したと発表。カレーの本場であるインド進出が話題を呼び物色の矛先が向かった。これをハヤして株価は上昇し16日には5040円まで買われ年初来高値を更新、現在も高値圏でもみ合っている。まずは高値奪回から5000円台地固めに期待がかかる。

英国風パブ「HUB」を展開するハブ <3030> も面白い存在だ。9月20日からラグビーワールドカップ2019日本大会が日本各地で開催されるが、イギリスがラグビー発祥の地ということもあり、思惑買いを呼びそう。11月2日までという長期の開催であり、日本国内の盛り上がりはもちろん、ビールの大量消費が伝わる欧州のラグビーファンなど訪日観光客は40万人に達するともいわれており、これも同社にとって追い風になりそうだ。

夏を過ぎれば、すぐそこに熱いラグビーの季節が待っている。

また、物語コーポレーション <3097> は16日の取引終了後に発表した6月度の月次売上高で、既存店売上高が前年同月比4.7%増と4ヵ月連続で前年実績を上回っており、目を配っておきたい。

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