温暖化で洪水リスク拡大、「治水」関連株に活躍の時迫る <株探トップ特集>
―将来予測を取り入れた治水計画、国交省による後押しで堤防・ダムの強化検討へ―
国土交通省の有識者検討会は7月31日、地球温暖化による影響で豪雨災害が一段と頻発化・甚大化するという前提に立ち、河川の治水計画を見直すよう求める提言をまとめた。これまでの対策は過去に発生した災害の経験を踏まえて講じられてきたが、近年では雨量が想定を上回る事例が相次いでいることから、検討会は気候変動の将来予測を取り入れる方法に転換すべきだと指摘している。この提言を受けて同省は堤防やダムの強化などを進めるとみられ、関連企業の活躍が期待される。
●水災害リスクが増大
これまでに経験したことのないような豪雨が毎年のように各地で発生し、深刻な水災害をもたらしている。2015年9月の関東・東北豪雨は総降雨量が関東地方で600ミリ、東北地方で500ミリを超え、月降水量平年値の2倍超を記録。16年には北海道・東北地方を相次いで台風が襲い、中小河川を中心に堤防決壊などが生じ、17年7月の九州北部豪雨では筑後川右岸流域などで12時間の間に600ミリを超える雨が降り、赤谷川流域では多数の斜面が崩壊した。
18年7月には西日本を中心に広い範囲で豪雨となり、総降雨量が四国で1800ミリ、東海で1200ミリを超えるなど月降雨量は平年値の4倍となった。広域的かつ同時多発的に河川の氾濫や下水道などの処理能力を超える内水氾濫、土石流などが発生したことで、全半壊した家屋は約1万7000棟、浸水被害は約3万8000棟に上り、被害額は約1兆1580億円と、統計を取り始めた1961年以降で最大。気象庁ではこの記録的な大雨について、地球温暖化が一因との見解を示しており、気候変動の影響は既に顕在化している。
●気温上昇で洪水頻度2倍に
こうした状況を受けて7月末に開かれた「第5回 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」は、世界の平均気温が今後更に上昇した場合の影響を試算し公表した。産業革命前に比べて2度上昇した場合、豪雨時の降水量(20世紀末に対する21世紀末の状態で、降雨が12時間以上続いた場合の試算)は全国平均で1.1倍となり、河川の水量増加で洪水が発生する頻度は2倍に高まると予測。4度上昇した際の降雨量は1.3倍、洪水発生の頻度は4倍になると指摘している。
一方で、高度経済成長期に集中的に整備された各インフラ施設は老朽化が進んでおり、国交省によると建設後50年以上経過する施設の割合は、河川管理施設(堰、水門、ダムなど)が18年3月時点の32%から23年3月には42%に、下水道管きょは4%から8%に達する見通しだ。将来起こり得る事態に備えるには、高規格堤防や遊水地、放水路の整備に加えて、雨水貯留施設の拡充などの対策を地域の特徴にあわせて進める必要があり、関連工事の需要が今後拡大することが見込まれる。
●東洋建、日特建などに注目
河川・ダムの工事は、不動テトラ <1813> 、青木あすなろ建設 <1865> 、東亜建設工業 <1885> 、若築建設 <1888> 、東洋建設 <1890> 、五洋建設 <1893> といった海洋土木大手が得意としているほか、コンクリートの補強で独自の強みを持つショーボンドホールディングス <1414> 、法面工事に実績のあるライト工業 <1926> 、特殊建設工事に定評のある日特建設 <1929> も要マーク。
また、グループ会社が「3D堤防/河道計画・設計システム」を販売している川田テクノロジーズ <3443> 、鋼矢板や鋼管杭など剛性の高い許容構造部材を地中に連続して打ち込むことで被災時の堤体損壊を防ぐ「インプラント堤防」を手掛ける技研製作所 <6289> 、河川護岸材を扱う前田工繊 <7821> にも注目したい。
●雨水対策関連にも関心
雨水対策では、高品質の地下構造物を構築できる「ニューマチックケーソン工法」を使った雨水地下貯留施設の建設を手掛ける大豊建設 <1822> 、雨水流出抑制施設「プレキャスト遊水池」の施行実績がある日本興業 <5279> [JQ]、集中豪雨による都市部での路面冠水を抑制するシステムを手掛けるイトーヨーギョー <5287> [東証2]、雨水貯留浸透施設の流入部分にフィルターを設置することで施設内のごみや土などの堆積物を除去する「ハイブリッド雨水貯留システム」を提供するベルテクスコーポレーション <5290> [東証2]に関心が高まりそうだ。
このほか、上下水道工事を手掛ける大盛工業 <1844> [東証2]、ICT(情報通信技術)とシミュレーション技術を活用したリアルタイム浸水対策システムを提供するNJS <2325> 、防災気象サービスを扱うウェザーニューズ <4825> 、短時間で簡単に設置できる止水製品をラインアップする文化シヤッター <5930> 、ポンプ大手の鶴見製作所 <6351> 、土石流発生監視装置を展開する明星電気 <6709> [東証2]、土のうなどの防災資材を販売するコンドーテック <7438> 、3次元浸水ハザードマップを提供するアジア航測 <9233> [東証2]、自治体向けハザードマップを手掛けるゼンリン <9474> も関連銘柄として挙げられる。
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