輝き放つ「電子カルテ関連」、大相場へと動き出した“有望銘柄のリスト” <株探トップ特集>

特集
2019年8月19日 19時30分

―意外性に富む内需の成長セクター、データの一元管理で飛躍的な業務効率化を実現―

世界経済が大きく揺れている。米中貿易戦争に加え、米長短金利の逆転現象を受けた景気後退懸念が株式市場を突風の荒波に押しやり、為替の円高とも相まって東京市場もじっと耐えるしかない状況だ。きょうこそ、米長期金利がひとまず下げ止まったことを好感してNYダウ、ナスダックともに大幅高に買われたことを受け東京市場もリスクを取る動きとなったが、猫の目のようにくるくる変わる相場環境のなか予断を許す状況にはない。ここは、内需株で攻めたいところだが、いかんせん10月には消費増税が待っており、なかなかこちらも動きづらい。こうしたなか、内需のなかでも為替の影響が極めて少なく、世界経済の暴風もほぼ無関係であると同時に、社会的ニーズを背景に拡大する「電子カルテ」に注目したい。勢いづく関連銘柄の動向を探った。

●サプライズ決算で吠えるファインデックス

米10年債利回りが2年債の利回りを下回る逆イールド現象が発生、これがリセッション懸念を呼び、14日の米株市場ではNYダウが800ドル安と暴落。これを受け15日の東京市場にも一時500円安に迫る勢いの荒波が押し寄せ、軒並み値を崩すなか市場の関心を集めたのがファインデックス <3649> の頑強な株価だった。

同社は、大学病院などを中心に医療用画像管理システム「Claio(クライオ)」を主力に展開するが、日本医師会のレセプト「ORCA(オルカ)」専用のひとつである電子カルテシステム「REMORA(リモーラ)」も手掛けており、ここ脚光を浴びる電子カルテ関連株の一角としても注目度が高い。リモーラは無床診療所から小規模病院まで利用できることで、普及が遅れている小規模医療施設での導入推進に一役買っている。会社側では、「(電子カルテについては)オルカの更なる普及とともに、連れて需要が拡大するとみている」(管理部)と話す。同社は、14日取引終了後に19年1-6月期連結決算を発表。営業利益が前年同期比4.6倍の2億7300万円と急拡大し、これがサプライズとなり悪地合いも無関係に、翌日は70円高の1095円まで買われた。前週末の16日も1150円まで上値を伸ばし年初来高値を更新、きょうは利益確定売りに軟調だったが、大台替えで新たな展開も期待できそうだ。

●東日本大震災で注目集める

急速に普及する電子カルテだが、医師が患者ごとに作成する診療録を紙から電子媒体に置き換えて記録・保存したもので導入メリットは大きい。例えば、毎月のレセプト提出作業の時間短縮など効率化が図れるうえ、画像診断支援システムや検査システムなどと連携し患者に関するデータを一元管理することが可能となる。

また、2011年に発生した東日本大震災では、津波などにより紙のカルテが消失したことで、リスク管理の観点からデータの外部保存の必要性が高まり、これを契機に電子カルテの市場が拡大し株式市場でも大きく注目を集めることになった。

●エムスリーは1000件突破

電子カルテ市場は、富士通 <6702> 、パナソニック <6752> など大手が牽引する形で拡大を続けてきたが、近年では多くの企業が参入しており、競争が激しくなってきている。そのなか、医療情報専門サイト「m3.com」などを展開するエムスリー <2413> は、ここ電子カルテ分野でも飛躍をみせている。同社は、クラウド型電子カルテ「M3デジカル」の累計導入件数(19年6月末時点)が1000件を突破、管理するカルテ数は1400万人分に到達しており、更なる成長加速が期待されている。テーマ性だけではなく、もちろん業績も好調だ。同社は、7月25日取引終了後に、20年3月期第1四半期(4-6月)の連結決算を発表。営業利益は前年同期比13.5%増の89億100万円となり、上半期計画150億円に対する進捗率は59.3%となった。売上収益は同14.4%増となる307億6600万円で着地。製薬マーケティング支援の受注が回復するなどメディカルプラットフォーム事業が伸びたほか、医師・薬剤師向けの求人求職支援サービスを展開するキャリアソリューション事業も堅調だ。株価は、7月24日につけた直近安値1942円から急速に切り返し、8月9日には2297円まで買われ年初来高値を更新。ここ軟調展開も、きょうは66円高の2255円と反発、高値奪回をにらむ。

ビー・エム・エル <4694> は臨床検査事業大手だが、そのネットワークを生かし医療情報システム事業でも成長が著しい。診療所向け電子カルテシステムではトップクラスのシェアを有する「Medical Station(メディカルステーション)」と、軽快な操作性に加えスピードを追求した新電子カルテシステム「QUALIS(クオリス)」の2本柱で攻勢を掛ける。9日取引時間中に発表した20年3月期第1四半期(4-6月)の連結営業利益は前年同期比1.8%減の31億7900万円となったものの、連結経常利益では、前年同期比0.5%増の33億3200万円となり、通期計画の111億円に対する進捗率は30.0%となった。株価は、2月中旬に3500円まで買われ年初来高値を更新した後は、上下動を繰り返しながら調整が続いている。現在は3000円を挟みもみ合うが、7月18日には2869円まで売られ直近安値をつけた後はジワリ上値指向。

●小粒でもピリリと辛い

市場調査会社の富士経済では、「診療所では初期費用面に加えて、在宅医療や医療連携に特化したシステムが多いため、機能面でも採用されるケースが多い。中小病院でも地域連携システムへの参加や業務の効率化などから電子カルテの導入が検討されており、初期費用が抑えられるクラウド型への関心が高い」と指摘。クラウド型電子カルテの市場規模については、17年見込みで23億円、25年には倍増となる46億円を予測している。

ある業界関係者は「正直なところ、電子カルテの市場規模はさほど大きくなく単体での魅力は薄い。ただ、遠隔医療などが広がりをみせるなか、自社の病院向けシステムなどと電子カルテを連携させることでの意味合いは大きい」と話す。こうしたことから、電子カルテ市場は小粒でもピリリと辛く、医療システムの要となる存在といえそうだ。

●忘れちゃならないCEHD

電子カルテといえば、国内トップクラスの電子カルテシステム「MI・RA・Is/AZ (ミライズ/エーズィー)」を手掛けるCEホールディングス <4320> を忘れてはならない。社会ニーズを捉え業績も好調、7月31日の取引終了後、19年9月期の連結業績予想について、売上高を100億円から110億円(前期比21.6%増)へ、営業利益を5億8000万円から7億5000万円(同42.5%増)へ上方修正している。これを受け、8月1日に1297円まで買われ年初来高値を更新、年初に600円近辺だった株価は、ほぼ2倍と変貌している。直近上昇一服も、1100円台で底堅い動きをみせており高値奪回から一段高期待も。

●反攻の機うかがうソフトマックス

ファルコホールディングス <4671> も臨床検査大手で調剤薬局事業を展開するが、グループ企業のファルコバイオシステムズが電子カルテ「HAYATE/NEO(ハヤテネオ)」を手掛けており、販売強化を進めている。ただ、今年2月に発生したファルコバイオシステムズでの火災の影響により臨床検査の受託検体数が大きく減少、これが業績にも影を落とすことになったが、5月27日には全面的に操業を再開し検体検査処理能力は、ほぼ火災前の状態までに回復したと発表している。株価は6月19日に1836円まで買われ年初来高値を更新した後、調整局面入りし現在は1600円近辺でもみ合っている。

また、Web型電子カルテ・医療会計など自社開発の「PlusUsシリーズ」を中核にソリューションを展開するソフトマックス <3671> [東証M]にも妙味がありそうだ。株価は7月10日に1500円の年初来高値をつけた後、8月1日に戻り高値1487円でダブルトップをつける形で調整局面入りとなったが、1000円トビ台の時価水準は願ってもない安値買いのチャンスだ。業績変化率は抜群で、ファンダメンタルズ面からのアプローチでも戻り余地は大きい。

進化を続ける医療分野でのIT(情報技術)化だが、電子カルテはさまざまなシステムと連携することで機能の拡充を続けている。普及拡大から新局面へ、その役割は大きくなる一方だ。

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