DX関連株に好機到来!「2025年の崖」克服へIT投資加速 <株探トップ特集>
―DXはイノベーションの原動力 経産省の旗振りで情報化投資の要を担う―
生産性の向上を狙った企業のIT投資が活発化するなか、ITサービス関連企業の業績が好調だ。特に、企業が本業分野でITを活用する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の流れがIT投資を牽引している。更に今後、数年以内にシステム刷新を集中的に推進しないと莫大な経済損失を生むという「2025年の崖」克服に向け、デジタル投資の流れは一段と加速しそうだ。DX推進の背景と関連銘柄を探った。
●イノベーション促進にDX化は必須、5GやIoTも需要拡大に拍車
IT関連業界で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が注目を集めている。これは、事業に大きなイノベーションを起こすために、IT技術を導入し、ビジネスモデル全体の改革を行っていくというものだ。世界的な潮流となっているDX促進の流れに乗り、企業のIT投資は拡大している。特に、20年から本格的にスタートする「5G」やIoT、それに統合基幹業務システム(ERP)の刷新にも絡みDX関連の需要は一段と進むとみられている。
足もとでDX化推進に絡んだ情報化投資は伸びており、4~6月期のITサービス各社の業績は好調。NTTデータ <9613> や野村総合研究所 <4307> 、日本ユニシス <8056> といった大手企業の20年3月期業績は軒並み最高益更新が見込まれている。特に、DX化によるIT業界の好業績を印象づけたのが先月26日に発表された富士通 <6702> の4~6月期決算だ。営業利益は95%減と大幅減だったが、特殊要因を除いたベースでは大幅増益となり株価は急伸、一時1年9ヵ月ぶりの高値をつけた。
●年12兆円の損失回避へ集中投資が必要、関連企業には最高益相次ぐ
企業の情報化投資を促している要因のひとつには、18年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」で「2025年の崖」という言葉を用いて、日本企業に警鐘を鳴らしたことがある。同リポートでは、既存のシステムが事業部門ごとに構築され全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズ化されていたりすることなどが要因となり「25年以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性」を指摘。「25年までにシステム刷新を集中的に推進する必要がある」と結論づけている。
一方、DX化が実現した場合、「30年には実質GDPで130兆円超の押し上げ効果がある」と試算している。経産省の旗振りによる「DX推進」は、20年代の課題克服に向けての国策と言えそうだ。
こうしたなか、7月に発表された日銀短観によると19年度のソフトウェア投資計画は前年度比12.9%増と好調な伸びが予想されている。株価面からも米中貿易摩擦や為替動向に左右されにくいデジタル投資関連株は、業績も最高益が相次ぐなど好調なだけに、ここから一段と物色が本格化しそうだ。以下、DX化を推進する関連銘柄を挙げてみた。
■システナ <2317> ~ソフト開発支援が主力でクラウド事業の新サービス「Canbus.」の受注が好調。DX推進に向け需要開拓。20年3月期は連続2ケタ増益で最高益。
■TIS <3626> ~独立系SI大手でクレジットカード向けに強み。キャッシュレス決済関連でQRコードの決済システム開発などが伸びる。ERP更新需要も堅調。20年3月期の営業利益は410億円(会社予想400億円)前後へ増額観測も。
■豆蔵ホールディングス <3756> ~優先度の高い要件ごとに設計、実装、テストなど細かい単位で迅速な開発を行う「アジャイル開発」導入支援ビジネスなどを展開。アジャイル開発は、DX推進に最適と言われている。4~6月期業績は大幅増益で今期業績に増額期待。
■コムチュア <3844> ~情報系システム開発のほか、グループウェア、ERP導入、クラウド環境構築などに強みを持つ。企業システムのクラウド化が追い風。20年3月期は最高益予想。9月末に1対2の株式分割を実施へ。
■伊藤忠テクノソリューションズ <4739> ~伊藤忠系の大手SI。第1四半期の連結営業利益は55%増と大幅増益。業務効率化に向けたIT投資拡大が追い風。中間期以降は5G関連の案件にも期待。20年3月期最終利益は最高益予想。
■ベイカレント・コンサルティング <6532> ~デジタル関連などに強みを持つ総合コンサルティング企業。米ペガシステムズの日本法人とDX分野でアライアンス契約を締結。20年2月期業績は増額修正含み。
■ネットワンシステムズ <7518> ~ネットワーク構築に強みを持つ大手IT企業。第1四半期(4-6月)の連結営業利益は前年同期比39.4%増。セキュリティー対策やシステム構築などが順調。今期最終利益は最高益予想。
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