消費増税カウントダウン、急浮上する「キャッシュレス決済関連株」 <株探トップ特集>

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2019年8月27日 19時30分

―事業者・消費者双方でキャッシュレス化推進、国策主導の強力テーマ復活―

消費税10%への増税実施まで、あと1ヵ月に迫ってきた。政府は景気減速といった過去の二の舞を避けるため、消費税導入以来、初めて、「軽減税率」を設けたほか、需要平準化対策として、キャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援することで事業者・消費者双方におけるキャッシュレス化を推進する。年初にはPayPay(ペイペイ)の「100億円あげちゃうキャンペーン」の反響からキャッシュレス決済関連株が動意をみせたが、消費増税実施が近づくなか、改めて同関連株に市場の関心が集まる可能性がある。

今年10月予定の消費税10%への増税実施まで、あと1ヵ月近くに迫ってきた。過去1997年4月の5%への引き上げ、2014年4月の8%への引き上げ後の景気低迷から、消費税増税による景気の急激な悪化を警戒する向きは多いだろう。

●消費税引き上げと抱き合わせのポイント還元

安倍政権は10%への引き上げをこれまで2回延期してきたが、消費増税を打ち出していた7月の参議院選挙で勝利したことで消費増税は信任された形となり、実施に踏み切ることになった。高齢化の進展で医療や介護などの社会保障コストが膨らみ続けていることに加え、教育無償化に向けた財源の確保がどうしても必要となる。とはいえ、景気減速という過去の苦い経験を避けるため、消費税導入後初めて「軽減税率」を設け、食品(外食・酒類除く)については8%の税率を維持する。更に、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め、消費税率引き上げ後の一定期間(19年10月~20年6月)に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する。

この支援により、中小・小規模事業者における消費喚起を後押しするとともに、事業者・消費者双方におけるキャッシュレス化を推進する狙いがある。消費者還元補助については、消費者がキャッシュレス決済手段を用いて中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店舗等で支払いを行った場合、個別店舗については5%を消費者に還元する。

●システムや対応機器などを中心とした銘柄に再注目

この消費増税でメリットを享受するとみられるのが、システムや対応機器などを中心とした「キャッシュレス決済」関連銘柄となる。キャッシュレス決済では、「クレジットカード」やSuicaなどの「プリペイド方式電子マネー」、即時払いで支払いと同時に銀行口座から代金が引き落とされる「デビットカード」、そして急速に普及している「QRコード/バーコード決済」などがある。

これまでもキャッシュレス決済関連銘柄に対するテーマ物色はみられていたが、そのピークは、昨年末から今年にかけての「LINE Pay」や「楽天ペイ」「Origami Pay」「PayPay」「merpay(メルペイ)」などの決済サービスが、競うようにポイント還元やキャッシュバックなどのキャンペーンを実施して顧客の囲い込みが活発化したころであろう。昨年12月に実施されたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」は、当初4ヵ月間の予定が10日間で終了するほど反響があった。当然、株式市場への反応も大きく、キャッシュレス決済関連とされる銘柄への物色意欲も強かった。

●キャッシュレス決済関連は業績面での裏付けあり

これらキャッシュレス決済関連銘柄も今は一服しているが、消費増税まで1ヵ月近くに迫るなか、改めて関連銘柄への物色に関心が高まる可能性がある。足もとの決算をみても、決済関連事業を手掛けている企業は収益も好調なため、話題性のみの物色ではなく、業績面で裏付けられた物色対象となることが見込まれる。

キャッシュレス決算関連の中核的な銘柄であるGMOペイメントゲートウェイ <3769> の19年9月期第3四半期決算は、売上収益が前年同期比25.3%増、営業利益は同30.2%増と計画を上回る進捗であり、オンライン決済事業が第3四半期単体で22.2%の成長をみせている。また、金融機関向け勘定系システムの開発に強みを持つ日本ユニシス <8056> の20年3月期第1四半期は、営業利益が前年同期比2.1倍に膨れているほか、セキュリティーシステム等を展開するインテリジェント ウェイブ <4847> の19年6月期決算は、金融システムソリューション事業の好調により、営業利益は前の期比68.4%増だった。このほか、システムインテグレーター大手のTIS <3626> も要マーク。同社の20年3月期第1四半期の営業利益は前年同期比38.4%増である。

●スマホ決済アプリでは楽天とLINEに期待

スマホ決済アプリを展開する企業で勝ち組に位置するのは、楽天 <4755> とLINE <3938> が有力。楽天は「楽天ペイ」において、QRコードや読み取り端末を使わなくても実店舗で決済できる機能を始めている。出資するぐるなび <2440> と飲食店情報サイトのコンテンツを充実させるほか、楽天Edyを、楽天ペイのアプリに統合するといったアプリ機能を充実させている。また、LINEはメッセージアプリ「LINE」の国内月間アクティブユーザー数は8000万人で、SNSでは国内トップであることが強みとなろう。

消費増税実施後はイベント通過による材料出尽くしとみる向きも出てきそうだが、日本は現金志向の強い国とされ、世界の中でも依然としてキャッシュレス比率は遅れているのが現状である。政府は現状20%とされるキャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率を25年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すことを掲げている。

●東芝テック、スマレジなど、レジ業界に恩恵

キャッシュレス決済の利用度をみると、大都市圏ほど、また若年層ほど利用される傾向が強く、現時点では、利用に伴う「ポイント」の獲得や割引にメリットを感じているようである。中小・小規模事業者においては現金決済のみが依然として多いとみられるが、「メリット」享受に伴う顧客囲い込みの観点からはキャッシュレス決済は必須となり、導入する事業者が増えていく公算が大きい。そのため、レジスターへの需要増加も期待され、東芝テック <6588> 、カシオ計算機 <6952> 、パナソニック <6752> などが挙げられる。更に、スマレジ <4431> [東証M]に注目してみたい。同社は低価格、高性能なクラウドPOSレジ「スマレジ」を展開、レジ業界においてモバイルPOSレジのシェアが伸びている。

eコマースなどの拡大や、民間による、20年東京オリンピック・パラリンピックなども展望したキャッシュレス決済推進、更には政府の取り組みなども反映し、今後もキャッシュレス決済は増加していくことが見込まれる。それゆえ、支払決済の効率性と安全性を両立させていく観点から、情報セキュリティーやプライバシー保護などの面でも関連需要が見込まれる。

●将来的なマイナンバー活用推進で電算システム

また、総務省はマイナンバーカードを活用して地域のキャッシュレス化を進める方針である。総務省が昨年3月に発表した「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ」では、商店街での買い物などに使える「自治体ポイント」をクレジットカード払いや銀行の口座振替でチャージし、事実上の電子マネーとして利用できるようにする計画が挙げられている。

なお、スマホ決済を税金や国民健康保険料など公金の徴収に活用する自治体が広がっているが、独立系総合情報処理サービスの電算システム <3630> は、コンビニでの公金の収納代行で高いシェアを持っており、需要拡大が期待されよう。

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