廃棄問題が日本を覆う!新法施行で「食品ロス削減」関連株急浮上へ <株探トップ特集>

特集
2019年9月25日 19時30分

―国際的にも問題視、食品ロス半減に向けたアノ手コノ手で浮かびあがる銘柄群とは―

政府は24日、5月31日に公布された「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称:食品ロス削減推進法)の施行日を10月1日とする政令を閣議決定した。この法律には、食品が大量に廃棄されている問題に対して真摯に取り組むべき課題であると明記。国や地方公共団体に食品ロス削減策を策定・実施する責務を課すほか、事業者には施策への協力、消費者には食品の買い方や調理法の改善などを求めている。農林水産省と消費者庁、環境省は10月を食品ロス削減月間とし、さまざまな試みを進めるとしており、関連銘柄が関心を集める場面もありそうだ。

●食品廃棄は国際的にも問題視

食品ロスとは、まだ食べることができたにも関わらず廃棄される食べ物のこと。環境省が4月に公表した推計では、2016年度時点の食品廃棄物は約2759万トン、うち食品ロスは約643万トンに上っている。この量は東京都民が1年間に食べる食品に匹敵し、国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量(約380万トン)の1.7倍に相当。食品ロスの原因としては主に、事業系では製造・流通・調理の過程で発生する規格外品や返品、売れ残りなど。家庭系では食べ残しがロス発生量の約4割を占めている。

食品ロス削減推進法が施行される背景には、食料自給率(カロリーベース)が40%に満たない日本で食品が大量に廃棄されていることに加え、国際的にも問題視されていることがある。消費者庁の資料によると、世界の栄養不足人口は約8億2080万人に達している一方、世界全体で年間約13億トンの食料が廃棄されている。このような状況を踏まえ、15年9月に開かれた国連の持続可能な開発サミットでは「30年までに小売り・消費レベルで世界全体の1人当たりの食品廃棄を半減させる」ことが掲げられており、日本としても官民を挙げて食品ロス問題に取り組む必要がある。

●賞味期限表示の変更でロス削減へ

こうしたなか、環境省の中央環境審議会は5月に開いた部会で、飲食店や食品メーカー、コンビニエンスストアなど事業者から出る食品ロスを30年度までに00年度比で半減させ、273万トンとする基本方針をとりまとめた。事業者による16年度の食品ロスは352万トンであり、実質的に2割超の削減が求められることになる。

既に大手企業では取り組みを始めており、例えば日本水産 <1332> 、カルビー <2229> 、キユーピー <2809> 、ハウス食品グループ本社 <2810> などは賞味期限表示を「年月日」から「年月」に順次変更。これまでの商慣習では、小売店などが設定するメーカーからの納品期限及び店頭での販売期限は、製造日から賞味期限までの期間を3分割して設定される場合が多く(いわゆる3分の1ルール)、最初の3分の1が過ぎる前に小売店に納品できなかった場合や、3分の2の期間までに販売できなかった商品は廃棄されていたが、表示を切り替えることで流通・販売の各段階における製品ロスが削減できるようになる。

また、小売りではセブン&アイ・ホールディングス <3382> が7月から納品期限緩和の対象商品を拡大したほか、ローソン <2651> は8月に店舗への納品期限を過ぎた食品を福祉施設などに届ける「フードバンク」に寄贈すると発表。ファミリーマート <8028> は食品ロス削減の一環として季節商材の完全予約制を進めており、第1弾として行った土用の丑の日のウナギ商品に続き、クリスマスケーキでも予約販売を強化する方針だ。

●シノプスは大阪のパートナー事業者に

一方、伊藤忠食品 <2692> は7月、フードシェアリングプラットフォーム「TABETE」を運営するコークッキング(東京都港区)に出資。フードシェアは飲食店などで余った食材や料理を消費者向けに割安で販売するサービスで、同社は出資を通じて食品ロス削減を支援するとともに、新しいビジネス機会の創出を図る。

オークファン <3674> [東証M]子会社のSynaBizは8月、オズビジョン(東京都港区)とポイ活ショッピングサイト「Hapitas Outlet」を開設。SynaBizは従来廃棄されていた処分在庫をメーカーから買い取り、販売するショッピングサイト「Otameshi」を運営するなど食品ロス削減に向けて取り組んでおり、「Hapitas Outlet」の開設に伴い、オズビジョンが運営するポイントモール「ハピタス」が持つ280万人の会員向けに販売できるようになった。

このほか、小売業向けに需要予測型自動発注システム「sinops」を展開しているシノプス <4428> [東証M]にも注目したい。同社は主要顧客である食品スーパーマーケット以外への拡販活動に注力しており、導入実績は6月30日時点で契約企業数が75社、稼働拠点数は4999拠点と順調に拡大。また、8月には大阪府が進める「おおさか食品ロス削減パートナーシップ制度」のパートナー事業者にも選ばれている。

●インフォMT、アルファクスFSなどにも注目

食品の無駄を省くためには、事業者が食材や商品の在庫を管理し、発注作業を効率化することが必要不可欠であることから、外食向けなどにクラウドを活用した受発注システムを手掛けるインフォマート <2492> 、自動発注とレシピ管理で食材ロスを圧縮できる飲食店経営管理システムを提供するアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]、食品業界向けソリューションを展開するeBASE <3835> 、BtoB向けWeb受発注システムを販売するアイル <3854> 、食材発注ツールを運営するシンクロ・フード <3963> 、飲食店の店舗業務管理システムを扱うジャストプランニング <4287> [JQ]などに商機がありそうだ。

これ以外では、コンビニや食品スーパーなどの在庫管理で、 電子タグの需要が更に拡大することが予想される。経済産業省は「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を掲げ、今年2月にはローソンやミニストップ <9946> など小売り5社と共同でICタグを活用して食品ロスを減らす実験を実施。システム・機器で協力したヴィンクス <3784> 、サトーホールディングス <6287> 、東芝テック <6588> 、富士通フロンテック <6945> [東証2]のほか、調査・データ分析で協力したインテージホールディングス <4326> は関連銘柄として注目される可能性がある。

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