明日の株式相場戦略=“景気減速懸念”相場の個別株戦略
株式市場の振り子が反対方向に振れ始めた。上がる時よりも下げのスピードが数段速いのはいつものことだが、ここで慌ててはいけない。外部環境を見渡して9月から10月に月が替わったこと以外に何か政治や経済のファンダメンタルズを根底から揺り動かす変化が生じたか、といえば答えはノーだ。
世界景気の減速懸念は、これまでメディアを通じて繰り返し警鐘が鳴らされている。寝耳に水の要素は全くない。これと表裏を成すのが世界の中央銀行の緩和的な金融政策で、相場の体温が高まっている時は、同じ風景でも“緩和期待”を投資マネーはポジティブに評価する。
きょう(3日)の東京株式市場では、前日の米株が大幅続落したことを受け、日経平均が一時500円超の下げをみせる波乱相場となった。背景となったのは、米国のリセッション懸念が再び頭をもたげてきたこと。しかし、9月のADP全米雇用リポートで雇用の伸び悩みが明らかになったとはいえ、雇用者数の増加は市場コンセンサスを5000人下回っただけで、相場が強い時はほとんどスルーされるレベルといってもよい。その1日前に発表されたISM製造業景況感指数が10年3カ月ぶりの低水準だったこと、更にタイミング悪くWTOが米国によるEUへの報復関税を承認したことなどが重なり合う形で世界景気に対する不安がクローズアップされたが、冷静にみればここでの株価下落は相場の呼吸のようなもの。これまで吸い込んできた空気を吐き出したに過ぎない。
とはいっても、9月の上昇相場の反動が短期間で収束するかどうかは分からない。東京市場に限っていえば、きょうは東証1部の9割以上の銘柄が下落する全面安商状であったにも関わらず、引け後の騰落レシオは依然として126.9%と買われ過ぎのソーンにある。現状は調整局面の初期であることを暗示している。「リスクパリティ」ファンド等のVIX指数などに呼応したアルゴリズム売買が存在感を示すのもこういったタイミングであり、落ち着きどころを見極めるまでは慎重に、値ごろ感だけで逆張り戦術などはとらない方が賢明といえる。
差し当たっては、日本時間今晩に予定されるISM非製造業景況感指数、そして週末の米雇用統計、この2つがビッグイベントとして日米株式の方向性を左右することになる。
こうした環境下での個別株戦略としては、やはり内需の中小型株が相対的に有利なポジションにある。収益環境の風向きの良いポジションに位置する銘柄を探す。そのなか、今回はちょうど日足一目均衡表の雲を抜けつつある銘柄を3つ選んでみた。
まず、消費税引き上げの影響を受けにくいセクターとしてIT投資周辺、AIやクラウド関連などに改めて投資資金が向かう可能性がある。そのなかからここ売り物がこなれてきたさくらインターネット<3778>に着目。データセンターを運営しAI・IoT分野への取り組みも積極的。NTTデータ<9613>と協業で教育機関向けクラウド型ホームページ運営サービスを行うなどエドテック分野も開拓している。19年4~9月期営業利益は従来予想を上方修正し4億円(前年同期比41%増)の見込み。
また、今後も低金利環境が担保されるなか不動産流動化ビジネスを手掛ける企業も風向きは悪くない。中規模ビル投資が好調でクラウドファンディングでも実績を重ねるロードスターキャピタル<3482>が強い動きだ。タイミング的にも25日・75日移動平均線のゴールデンクロス示現が目前に迫っている。
更に建設用ボルトやナットなどネジの専門商社トップである小林産業<8077>に意外性がある。秋の補正予算編成への期待が高まるなか、安倍政権が看板として掲げる国土強靱化や都市再開発案件などで収益環境にはフォローウィンドが吹く。商社という業態は考慮されるもののPERやPBRに割安感がある。低位株の範疇にあるが信用の買い残が枯れた状態で需給関係の良さもポイントだ。
日程面では、あすは臨時国会召集。9月の輸入車販売。海外では、日本時間午後9時半に発表される9月の米雇用統計が焦点となる。また、これと同時に8月の米貿易収支も発表される。(中村潤一)