明日の株式相場戦略=米中協議思惑と別次元を走る材料株相場
はっきりしない地合いが続いている。週明け7日の東京市場は前週末の米国株市場の大幅高を受けてリスクオンの流れに乗るかと思いきや、そうはならなかった。注目された9月の米雇用統計は株式市場にとっては“いいとこ取り”のできる程良い結果で、雇用者数の伸びは市場コンセンサスに届かなかったが、失業率が50年ぶり低水準という状況にあり、米国経済への過度な不安心理が後退した。一方で、平均時給が伸び悩んだことで、パウエルFRB議長が年内追加利下げのカードを切りやすくなったとの見方が、米株市場には「適温相場」を想起させる心地よい解釈となった。
しかし、今週は10~11日が鬼門となる。いうまでもなく米中閣僚級の貿易協議が予定されており、この結果を確認しない段階で見切り発車はしにくいというムードが漂う。きょう朝方に米大手メディアを通じて「トランプ大統領が求める幅広い通商合意に対し、中国側が一段と難色を示している」と伝わったことが、買い方の気勢を削ぎ日経平均が値を消す背景となった。
当初今月1日からの予定だった対中制裁関税拡大について、トランプ米政権は15日に先送りしたわけだが、これはたった2週間とはいえ大きな譲歩があった。1日の中国建国70周年と国慶節に配慮したもので、ここで両国間の緊張がいったん緩んだようにも見受けられた。しかし、今回の貿易協議で交渉決裂となれば、15日から関税は引き上げられる。“2週間の猶予”は文字通り2週間後ズレしただけで終わる。こうなれば、再び株式市場は波乱局面に足を踏み入れる懸念も出てくる。そうしたなか、きょうのマーケットの手控え感の強さを何よりも数字として反映したのが東証1部の売買代金。前場は7000億円ソコソコ。終日ベースでも1兆5000億円台で約1カ月ぶりの低水準となっている。日経平均に連動しやすい主力銘柄は物色対象として回避されやすく、少なくとも今週はその傾向が強まりそうだ。
ただし、物色意欲が霧消したわけではない。中型株指数と小型株指数は前日比プラスを堅持し、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数はいずれも1015で合致した。材料株物色の炎はむしろ勢いを増している。森より木を見ての投資スタンスが有効な場面が続く。
個別では、ここジオスター<5282>に続きリバーエレテック<6666>など低位株の範疇にある銘柄で大相場に突入するものが相次ぐ。この流れに乗る銘柄としてにわかに投資資金を誘引しているのがMipox<5381>だ。半導体ウエハーなど微細研磨材の大手で次世代パワー半導体関連として頭角を現している。きょうは13%高の370円高値引けと強烈なパフォーマンスをみせつけたが、相場的には若い。株価が確変モードに入ったことを前提に押し目があれば参戦可能、有力な投資対象としてマークしておきたい。
このほか、社宅契約事務の代行で業界トップの実力を持つ日本社宅サービス<8945>は下値切り上げトレンドを継続中。上向きの75日移動平均線との上方カイ離修正を経て目先弾みつくタイミングにある。また、バイオ関連では流行の兆しにあるインフルエンザ関連の一角としてカイノス<4556>が食指の動くチャートだ。
更に動画のストリーミング配信を手掛けるJストリーム<4308>は待ち伏せ買いの対象として妙味あり。デジタル映像制作や編集を手掛け、既に連日の急騰劇を演じているレイ<4317>に強く刺激される展開も想定される。
日程面では、あすは8月の家計調査、8月の国際収支、9月の景気ウォッチャー調査など。また、マザーズ市場にHENNGE<4475>、AI CROSS<4476>が新規上場する。海外では9月の米生産者物価指数、9月の財新中国非製造業PMIなど。ノーベル物理学賞の発表も予定されている。(中村潤一)