明日の株式相場戦略=半導体関連株の強さに何を見るか
10日の東京株式市場は米中の閣僚級協議を目前に控え、引き続きメディアの観測報道に引きずり回される格好となった。前日の米国株市場では、中国が大豆をはじめとする米国産農産物の購入拡大を提案するなど歩み寄りの姿勢をみせていることが伝わり、これを好感してNYダウやナスダック総合指数が買われた。この流れを受け、きょうの東京市場でもリスク選好の地合いとなることが予想されたが、朝方取引開始前に香港のメディアが次官級の協議で主要な進展がなかったことを伝え、にわかに雲行きが怪しくなった。この報道に連動する形で外国為替市場では急速にドル売り・円買いの動きを誘発、日経平均の寄り付きはまさに“気迷いの極致”で売り買いが拮抗する形となり、前日終値とほぼ同値で幕が上がる展開となった。
しかし、その後は再び協議の進展を期待させる報道が流れ、これに反応したアルゴリズムの先物買いが全体相場に浮揚力を与えた。結局日経平均 は95円高でフシ目の2万1500円ラインを上回って着地。ただし、値上がり銘柄数595に対し、値下がり銘柄数が1458と圧倒的に多い。旭化成<3407>の吉野彰名誉フェローらがノーベル化学賞を受賞したことに伴うサプライズ上昇効果がなかったら、もっと値下がり銘柄数は増えていたはずだ。ちなみに、ジャスダック市場とマザーズ市場は安値引けだった。
米中貿易協議の結果が東京市場に反映されるのは、3連休明け後の15日となる(事前に結果が判明するケースもゼロではない)。あすはオプションSQ算出日でもあるが、引き続き材料株主導の地合いとなりそうだ。
個別銘柄ではITbookホールディングス<1447>が300円台前半で売り物をこなしており、浮上のタイミングが意識される場面。防災・減災ニーズを背景に電線地中化を含め国土強靱化関連に物色の矛先が向くなか、見直し余地がある。同社はITコンサルティングのITbookと地盤調査を手掛けるサムシングHDとの経営統合で誕生、官公庁案件に強い点がポイント。また、外国人労働者の生活支援ビジネスにも展開しており、日本と親和性が高いベトナム人材などを対象に展開力を強めている。
このほか、半導体関連株は強弱感が対立するなかも上値指向を明示する銘柄が増えている。市況底入れ観測がどこまで信用できるものかは分からないが、少なくとも世界景気減速への懸念が喧伝されるなかにあっても、半導体関連株への資金流入が続いている。きょうは半導体製造装置トップの東京エレクトロン<8035>が年初来高値を更新した。アドバンテスト<6857>も新値圏での強調展開が続く。もちろん、空売りの買い戻しによる部分が大きいことは事実だが、半導体関連全般に対するコンセンサスが強気に傾いていることも確かだ。世界的な5G投資需要に加え、微細加工で脚光を浴びるEUV(極端紫外線)という新たな成長エリアが立ち上がっていることも大きい。
半導体は足もとの業績低迷を売り仕掛けのネタにはできないということ。となれば、買いやすい銘柄は数多く出てくる。例えば400円近辺で瀬踏みを続ける栄電子<7567>。上ヒゲをつけやすい銘柄だが、小型で俊足であるだけに注目する向きは多いと思われる。また、台湾のTSMCが上場来高値圏にあるが、その連想で半導体検査受託を手掛けるテラプローブ<6627>なども面白い存在となる。
日程面では、あすは株価指数オプション10月物のSQ算出。9月のマネーストック。9月の投信概況など。海外では9月の米輸出入物価指数、10月の米消費者マインド指数(速報値・ミシガン大学調べ)などが発表される(中村潤一)