明日の株式相場戦略=「量子」テーマ降臨、全般は金融相場の色彩
きょう(24日)の東京株式市場は買いの勢い止まず日経平均 が4日続伸、しかも日々上げ幅を広げる形で踏み上げ相場第2ステージの兆候をみせた。企業の決算発表本番を前に、本来であれば買いを積極化させる背景には乏しいタイミングにあるが、そうした思惑とは真逆のベクトルを相場は示している。
前日も取り上げたが、NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の売り残が再び増勢にあり、直近の信用倍率は0.76倍、日証金では貸借倍率0.25倍で逆日歩が発生したままの状態だ。企業業績や景気実態を考慮すれば売り乗せしたくなるのが人情だが、再び“手仕舞い買い戻し”を強要するような地合いとなっている。きょうは市場関係者の間で、日経レバの“裏銘柄”でもあるNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>のネット証券大手による売り越し手口が話題となっていた。日経Dインバを売り越すということは、その裏側で先物を買い戻しているという理屈になり、10月後半相場で下値を見込んだ売り方の撤退を暗示している。
日本に先立って佳境に入っている米国企業の決算発表が思ったほど悪くないということが株式市場でのリスク選好の流れにつながっており、この公式がそのまま日本企業の決算発表に対する評価にもあてがわれるのではないか、というムードが強くなっている。きょうの日本電産<6594>の動きが典型だ。20年3月期の最終利益が350億円下振れするとの予想を開示したが、電気自動車(EV)駆動用モーターの受注見込みが大幅に積み上がっていることが明らかとなり、こちらを評価する形で株価は上昇して引けた。同社に限らず、今上期(4~9月期)決算については米中摩擦の影響もあり「悪くて当然」というコンセンサスが投資家のマインドに浸透している。
その延長線上には当然ながら「下期は回復に向かう」という思惑が底流している。しかし、これは多分に後付け的な要素も強く、今の強調地合いがもたらした解釈ともいえそうだ。株高の実態はおそらくそこではなく、世界的な金融緩和モードを背景とした過剰流動性による部分が大きいと思われる。「じゃぶじゃぶの資金が株価を押し上げる」というフレーズが以前にはよく使われたが、今はそれに似た相場環境が再来している。きょうのドラギECB総裁最後の記者会見での総括が株式市場にとってフレンドリーなものとなるかどうかは別として、今月29~30日のFOMCでは0.25%の利下げが濃厚視されており、30~31日の日銀金融政策決定会合でもツイストオペによる銀行への影響を抑えたマイナス金利の深掘りなどが俎上に載っている。緩和政策への道筋はこの先も依然として続いている。
そうしたなか、今の東京市場における個別株に対する貪欲なまでの物色意欲は特筆に値する。エーザイ<4523>は米バイオジェンと共同開発するアルツハイマー型認知症治療薬の新薬承認への期待を背景に連日のストップ高、時価総額2兆円の大型株にも関わらず2日間にわたり取引時間中に値がつかない異色人気となった。これも流動性相場の片鱗をのぞかせている。
一方、米グーグルによる「量子超越性」の実証成功を契機に量子コンピューター関連 に怒涛の買いが流入している。今回のリード役はエヌエフ回路設計ブロック<6864>だが、これにYKT<2693>などが追随、"リアル量子コンピューター関連"であるフィックスターズ<3687>も遅ればせながら動意含みだ。ビットコイン価格の急落を背景に、量子コンピューターによる解析から守る暗号化技術の展開、いわゆる耐量子コンピューター関連としてユビキタス AIコーポレーション<3858>もマドを開けて買われた。更に主力銘柄では超高速コンピューター技術「デジタルアニーラ」で先駆する富士通<6702>にまで物色の矛先が向かった。このテーマ買いの流れはシグマ光機<7713>やスパークス・グループ<8739>にも及ぶ可能性がある。
これ以外のテーマでは半導体関連 やEV 、5Gなどが引き続き注目される。半導体関連では、小型材料株の急先鋒として栄電子<7567>が連日ストップ高モードに突入していることで、同じ半導体商社のPALTEK<7587>も要マーク。また、パワー半導体関連では三社電機製作所<6882>が急動意し風雲急の気配を漂わせる。EV関連と5G双方のテーマに絡む大泉製作所<6618>なども併せて注目しておきたい。
日程面では、あすは寄り前に財務省から対外・対内証券売買契約が開示されるほか、後場取引時間中に9月の外食売上高が発表される。また、マザーズ市場にBASE<4477>が新規上場する。海外では10月の独Ifo景況感指数、10月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)が発表される。(中村潤一)