明日の株式相場戦略=SBG、トヨタの値運びが映しだす相場の実態

市況
2019年11月7日 17時45分

全体相場はリスクオンの潮流に変化がみられず、このまま調整らしい調整もなく年末相場に突入するような気配すら感じさせる。きょう(7日)の東京株式市場は利益確定売りのタイミングと思われたが、押し目では買い板が厚く容易に下がらない。その挙句、大引けを目前にしてプログラム的な売買が流入し全体指数を押し上げ、小幅ながら日経平均は3日続伸となり、年初来高値を更新して着地した。

きょうのマーケットは寄り前に利食いを誘導するようなムードがあり、その背景には米中首脳会談が11月にはできない可能性、つまり事前に報道されていた部分合意について、その署名が12月にずれ込む可能性が伝わった。しかし、これにどれほどの意味があるのか。そう言わんばかりの値動きを株価は示した。

確かに、12月15日に対中追加関税の第4弾の期限が来ることで、「そこに署名が間に合わなければ、今度こそ発動されてしまう。だから大変だ」という理屈も分からないではないが、だから保有株は売りというほどのインパクトはない。そもそも部分合意についても現段階では観測の域を出ていない。オオカミ少年並みに流動的で確度の低いメディアの情報でも、今の市場はヘッドラインに反射的に対応するAI売買が相場をかき回す構図となっている。“人間サイド”としては、これを考慮したうえで振り回されないような心構えが必要となる。

東京市場で言えば、8月初旬の急落や9月上旬の急速な切り返し、そして10月中旬以降の急騰相場において、この間にグローバル経済及び政治面からのアプローチで大きな変化はみられなかった。思惑に振り回され続けた。米中交渉については「進展期待」を放置したまま、先送りの連打で、そのたびに周りが騒がしくなり、それに投資マインドが揺さぶられることの繰り返し。結局、8月初旬の急落時の残像が強すぎて、その後の戻り相場が見えなくなるというトラップに多くの市場関係者が陥った。

醸成された先入観や感情が邪魔をするのが人間の弱さであり、その弱い部分を真逆の現実で株式市場は見事なまでに体現する。投資家にとって敢えてバックミラーを見ない、過去の軌跡にとらわれず、すべて白紙の段階に思考を戻すこと。簡単にできることではないが、これは難局打開のひとつの技術といってもよい。

きょうの相場を振り返ればポイントとなったのは、売買代金ランキングの1位と2位を占めた2つの“主力株”だ。ソフトバンクグループ<9984>は7~9月期に7000億円の最終赤字となり、孫会長いわく「ぼろぼろ」の決算内容となったが、株価はぼろぼろとはならなかった。寄り前は4000円大台を巡っての攻防になっておかしくないと個人的には見ていたが、実際は4200円台で寄り付き、その後はあわよくばプラス圏に浮上するかという水準まで切り返す強さをみせた。

そして、きょうの午後取引時間中に発表したトヨタ自動車<7203>の決算は4~9月期の営業利益が11.3%増と2ケタ増益を確保、同時に自社株買いも発表し、これを素直に好感する形で連日の新高値に買われた。とにかく、今の相場は強いとしかいいようがない。この2銘柄をみても流動性相場の真骨頂というべき株価の値動きを示している。

個人投資家の信用余力の回復で中小型株も出番待ちの銘柄が列をなしている印象だ。今週5日にマドを開けて買われた平河ヒューテック<5821>の上昇一服場面はマークしてみたい。5Gとの融合で市場拡大余地が意識される4K・8K関連。決算発表は既に通過している。また、1日に940円台で戻り高値形成後押し目を形成しているアイティフォー<4743>もちょうど25日移動平均線との上方カイ離を埋めたところで、好調な業績を考慮してもここは買いに分がありそうだ。

日程面では、あすは9月の景気動向指数(速報値)が後場取引時間中に内閣府から発表される。このほか9月の毎月勤労統計、7~9月の家計調査、10月上中旬の貿易統計など。海外では10月の中国貿易収支、11月の米消費者態度指数(ミシガン大学調べ)などが注目される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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