「リスクオン相場に曲がり角、近づくグレートローテーション逆転?!」 <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2019年11月12日 20時00分

直近の株式市場は米国を筆頭に日本市場も底堅く、悪材料が出ても強く売られることはなく、好材料には大きく反応しているように見える。

米中協議に対する楽観的な見方はあるものの、米国や中国、日本においては経済指標の悪化が目立つうえ、日本企業の決算発表を見ても、「減益」「配当未定」「業績下方修正」といったネガティブなヘッドラインが目につき、積極的に買う局面なのかと問われれば疑問符がつく。

では、なぜ株式市場は強いのか…。

筆者はその背景に世界の低金利政策があるのだと思う。今年7月から米国は3度、計75ベースポイント(bp)もの利下げを行ってきた。通常であれば、米国債券市場に向かっていた資金は、米国が利下げをしたことでより金利の高い債券市場に移動する。ところが、マイナス金利の日本、ドイツをはじめ各国が低金利政策を導入している状況では、債券の投資妙味が薄れている。

そのため、米国の債券市場に投資していた資金を他の金融商品に回さなければならない→リスクを取らざるを得ない状況に陥り、消去法的に 米国株式市場に資金が流入しているのではないか。

もちろん、米国ではGDPの7割を占める個人消費がなお堅調であり、他国に比べ経済減速の影響が軽微であることも、米国株式市場が資金の受け皿となっている理由の一つだと言えるだろう。

米国株式市場が強いからドルも買われる。それによりある程度、 円安が維持されているため、日本株式市場にも資金が流入し、その上昇を支える。

つまり、各国の低金利政策により債券市場から株式市場へのグレートローテーションが起きていたのではないか。

では、この上昇局面はいつまで続くのか。年末高は期待できるのか。

筆者はそろそろ良いところに来ている、と考えている。11月8日終値時点の米国10年債利回りは1.945まで上昇してきている。一方、米国株式の配当利回りは約2%と言われる。

米国市場は史上最高値圏で推移しているが、米国10年債利回りは10月半ばから徐々に上昇してきており、9月の高値を抜けてきた。このまま2%を超える水準にまで推移してくることがあれば、株式市場に流入してきた資金は徐々に米国債券市場に戻るのではないだろうか。リスクオン相場の分水嶺は近づきつつあるとみている。

日本株式市場については、これまで発表された決算内容を見ていても楽観視できないものが多い。ドル高・円安や米国株式市場の上昇にいわば連れ高して上昇してきたものであるならば、これから顕在化する10月の消費増税の影響も踏まえ、調整局面では下げ幅が大きくなることも想定される。

米国債券利回りの動き次第では、もうしばらくグレートローテーションの動きが続く可能性もあるが、経済状況(ファンダメンタルズ)を無視した株価上昇は長くは続かず、大きな価格調整が起きる可能性も以前よりも高まったとみてよいのではないだろうか。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

株式注意情報.jp http://kabu-caution.jp/

Twitter https://twitter.com/kabushikichui

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.