トランプ再選を中国が確信?【フィスコ・コラム】

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2019年11月17日 7時30分

米中貿易協議から、両国関係の微妙な変化がみられます。来年の選挙を視野にアメリカ主導を演出するトランプ大統領に対し、中国側から以前のような尖った反応は消えたように思えます。トランプ再選を確信したのでしょうか。

米中両国は知的財産権の保護をめぐる問題ではなお議論を続けるものの、目下「第1段階」の合意に関し首脳どうしが署名する方向で調整中です。当初は、チリで開催が予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のタイミングに合わせ、米中首脳会談が行われるとみられていましたが、同会議は中止。それにより署名も遅れるとの見方から一時は摩擦再燃への懸念も広がりました。

しかし、トランプ米大統領は「(米中協議は)合意に近づいている」と繰り返し、自身も前向きな姿勢をアピールしています。その後、両国がこれまで相互に発動してきた関税を段階的に撤廃していくと中国側が発表。トランプ政権はすぐに否定し、アメリカにとって適切な内容でなければ合意を受け入れない、と強気です。「中国は合意を強く望んでいる」とあくまでアメリカの主導権を強調しています。

確かに、足元で発表された中国の経済指標をみると、今年7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比+6.0%と、前期から伸びが鈍化しています。2期連続の減速となり、四半期ベースの成長率としては1992年以降で最も低い水準を更新しました。PMIでも製造業の景況感の悪化は顕著です。アメリカとの貿易摩擦が長期化したことによる影響のためだとすれば、中国が合意を強く望んでいるとの指摘にはうなずけます。

一方、貿易戦争がなお激化する方向なら、金融市場はどうなっていたでしょうか。株価は下げ、長期金利は低下が続いていたかもしれません。そして、ドルは安全通貨として買われドル高になり、トランプ大統領の望まない展開になっていたと思われます。来年の大統領選をゴールとして逆算すれば、合意を強く望んでいるのは中国というよりもトランプ氏自身ではないでしょうか。

中国側は来年のアメリカ大統領選に向け、トランプ政権と民主党政権の両にらみで、挑発的なトランプ政権に対し一歩も引かないスタンスでした。ただ、最近そうした姿勢が和らいだように見えるのは、トランプ再選を確信したためとの見方もできます。アメリカが景気拡大を維持しているのに加え、野党・民主党はスター不在で有力候補者を擁立できず、そうみるのは極めて自然です。

米軍によるイスラム国指導者の殺害も、無関係ではないでしょう。トランプ政権は中東情勢の混乱の芽を摘むとともに、アメリカ国内の冷戦構造を前提としたタカ派勢力を抑えつつあることも、中国側の対応の変化を招いたとみられます。現在、アメリカ国内で繰り広げられているトランプ弾劾手続きといった無意味な政治ショーなど、コメディ以外の何物でもありません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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