明日の株式相場戦略=「真水10兆円」観測で建設コンサルなどに上昇気流

市況
2019年11月21日 17時54分

きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が荒い値動きとなった。一時400円を超える下げをみせるなど波乱含みの展開となったが、引けてみれば100円あまりの下げにとどまり、値上がり銘柄数1009に対し、値下がり銘柄数が1031と文字通り拮抗した。なお、小型株指数はプラス圏で引けている。

きょうは、ブルームバーグ×AIアルゴに振り回された1日と言ってもよいかもしれない。朝方取引開始10分ほど前に、米ブルームバーグ通信が「香港人権・民主主義法案」にトランプ米大統領が署名する方針にあると伝え、これを受けヘッドライン反応する高速アルゴリズム売買が始動、日経平均は先物主導で寄り後まもなく急速に下値を突き進む展開となった。フシ目の2万3000円ラインを大きく割り込み、午前11時少し前に400円超の下げで2万2726円まで売り込まれた。米中協議の先行き不安がリスク回避の売りを誘発したといえばその通りだが、“人間による”狼狽売りとは質が違う。

そして、今度は11時20分過ぎから日経平均は一気に巻き戻しに転じた。「これは同じくブルームバーグが、中国の劉鶴副首相が第1段階の合意に対し『慎重ながらも楽観的』と述べたと伝えたことがキッカケとなった」(国内ネット証券アナリスト)という。しかも、この劉鶴副首相のコメントは20日夜、つまり昨夜のこと。後出しジャンケンのような報道でも、アルゴリズムはヘッドラインに忠実に反応し、今度は一斉に先物主導の買い戻し局面へと切り替わった。東京市場はブルームバーグ報道に掻き回された格好となった。ただ、したたかな個人投資家は全体に振られる個別株の押し目を仕込んだ向きも多かったようで、NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の下値突っ込み買いなどで華麗に立ち回った猛者もいたようだ。

個別では、内需株でもバーチャル系インフラ(システム開発関連)と並んでリアル系インフラの建設関連が強さを際立たせている。5Gは基地局投資が絡むので、ちょうどその中間というところか。何はともあれ、政府の経済対策でウエートの高い建設・土木周辺銘柄に投資マネーが流れ込んでいることは事実。19年度補正予算はその規模にマーケットの関心が高まっているが、自民・公明両党は「真水」で10兆円程度を求める方向で一致したことが伝わっている。今回は20年度予算との合体で「15カ月予算」という形になるもようだが、いずれにしても2012年以降の大復活上昇相場によって認知されたアベノミクスが、ここで再び霊験あらたかとなるのかどうか、マーケットの思惑が底流している。

建設関連といっても大手ゼネコンではなく、中小型の足の軽い銘柄に個人投資家資金が向かうのはいつものこと。アジア航測<9233>、応用技術<4356>、いであ<9768>といったところが派手な上昇パフォーマンスを演じている。株価的には低位に位置する銘柄でこれらの銘柄に追随するものを探したいというニーズが漂う。そのなか、総合建設コンサルのキタック<4707>が、きょう5月27日につけた年初来高値413円を陽線でクリアしており、目先注目場面といえる。18年11月~19年7月の営業利益は前年同期比25%増の2億7700万円で通期計画を既に超過している。

また、バーチャル系インフラを担う銘柄ではサイバネットシステム<4312>が自然体で美しい上昇トレンドを描いている。時流を映してセキュリティー関連の需要を取り込み、業績は絶好調に推移している。一方、シーイーシー<9692>の11月中旬以降の上値追いが鮮烈。目先押し目狙いで面白そうだ。独立系システムインテグレーター組み込みソフトに優位性を持つが、富士通やトヨタグループなど一流どころとの取引が厚い。テクニカル的には2200円近辺を横に走る26週移動平均線とのマイナスカイ離をちょうど解消したところで、上抜けるタイミングにある。

日程面では、あすは10月の消費者物価指数、10月の全国百貨店売上高。海外では11月の米製造業PMI(購買担当者景気指数)、11月の米消費者態度指数速報値(ミシガン大学調査)、11月のユーロ圏PMI速報値など。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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