史上最大のIPO「サウジアラムコ」降臨、燃え上がる思惑と周辺銘柄 <株探トップ特集>

特集
2019年11月26日 19時30分

―12月11日にもサウジ国内で株式取引スタート、原油市況高を演出する可能性も―

この12月には、世界の市場関係者が注視する石油業界の2つのビッグイベントがある。ひとつは5~6日に開催されるOPEC(石油輸出国機構)と非加盟産油国との会合だ。もうひとつが「史上最大のIPO(株式公開)」とも呼ばれるサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの上場だ。石油関連株に大きな影響を与える2つのイベントのインパクトを探った。

●OPEC総会では減産期間の延長決定か、WTI価格は50ドル後半維持も

まず12月の第1のイベントとなるOPEC総会は、来月5日に開催され翌6日にOPECと非加盟産油国の間でのOPECプラスの会合が予定されている。特に、関心が高いのはOPECプラスの会合で、ロシアが協調減産にどのような姿勢を示すかが焦点だ。

OPECとロシアなど非加盟国は日量120万バレルの減産幅を2020年3月まで維持することが決まっている。サウジアラビアは原油価格の高値維持を目指し、この減産幅の拡大や期間延長を探っているが、ロシアは慎重姿勢が強いという。このためOPECプラス会合が減産に後ろ向きな結果となった場合、原油価格が下落する可能性もある。

ただ、いまのところ「協調減産は来年6月まで3ヵ月程度延長されるのではないか」(市場関係者)との観測が出ている。小幅な減産強化とも捉えられるが、現行の生産協定に大きな変化がなければ、WTIベースで1バレル50ドル後半にある原油価格への影響は限定的とも予想されている。

●アップル抜き世界最大の上場企業誕生へ、時価総額180兆円前後か

もうひとつのビッグイベントが世界中の関心を集めているサウジアラムコのIPOだ。各種報道によればアラムコは、12月5日に売り出し価格を決定し、同11日にサウジアラビア証券取引所(タダウル)に国内上場するという。

株式の1.5%程度が売り出される見込みで、サウジアラムコが提示した目標株価から算出すると最大で250億ドル(約2.8兆円)程度が調達される見通し。時価総額も1.6兆~1.7兆ドル(約175兆~186兆円)に達し、米アップルを抜き世界最大の上場企業になるとみられている。このためサウジアラムコの株式上場は「史上最大のIPO」と呼ばれている。

アラムコの国内上場が実施された後は、海外でのIPOが行われる見通しだが、株式売却は1年間制限される。このため、海外IPOは21年以降となる見通しだ。ただ、世界的な関心を集めるサウジアラムコのIPOの見通しには不透明感もくすぶっている。

●サウジの政治リスクなど警戒、大手海外石油株の需給悪化懸念は後退

昨年、著名記者のジャマル・カショギ氏が殺害された事件は、サウジアラビアの政治体制の不透明さを世界に知らしめたほか、今年9月にアラムコの施設がドローンによる攻撃を受けたことは同国の地政学リスクを浮き彫りにした。また、二酸化炭素を排出する原油を生産する石油会社は「ESG投資」が盛んな昨今では、投資対象となりにくいとの見方もある。もっとも、アラムコのIPOがサウジ国内でさほど過熱感なく実施されれば、それはプラス要因と見る声も出ている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「(米エクソン・モービルやシェブロンのような)大手石油企業の株式需給の悪化懸念は後退している」と指摘する。アラムコのIPOに対する人気が膨らみ、より大規模に実施されれば同社株を買うための資金捻出で大手石油株には売りが脹らむ懸念があるからだ。また、「次の海外IPOに向けサウジは原油高を維持させようとするだろう」(芥田氏)という。これは、国際石油開発帝石 <1605> や石油資源開発 <1662> のような日本の石油株にもプラス要因に働く。

●日本取引所や野村、大和など日本企業の活躍期待も

更に、アラムコが海外IPOする際の有力な上場市場の候補に東京が浮上している。米国市場への上場は、01年の同時テロに多くのサウジアラビア人が関与したことから賠償責任による法的リスクがあることが指摘されている。また、ロンドンにはブレグジット(英国のEU離脱)のリスクがあるほか、香港は抗議デモによる混乱が長引くことが懸念されている。ライバルが難題を抱えるなか、アラムコの海外上場先に東京証券取引所が急浮上してきたというわけだ。先行き、もしアラムコの東証上場が決まれば日本取引所グループ <8697> が買われることが予想されるほか、野村ホールディングス <8604> や大和証券グループ本社 <8601>など はIPOの主幹事に名を連ねることも期待できる。

加えて、サウジアラビアの政府系ファンドはソフトバンクグループ <9984> の「ビジョン・ファンド」の有力出資者になっている。このためサウジアラムコのIPOはSBGの株価にも影響するとみられている。

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