コラム【新潮流2.0】:ライドシェア(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

経済
2019年12月4日 9時19分

◆久しぶりにニューヨークに行ってきた。いつもニューヨーク出張から帰国すると体重と体脂肪が減る。ずっとデスクワークの東京のオフィスにいる時と違って、出張中はよく歩くからである。ニューヨークだと地下鉄を乗り継いで、何ブロックも歩く。ところが今回はまったく歩かなかった。地下鉄にさえ乗らなかった。理由のひとつは、あまりの寒さで外を歩きたくなかったこと。もうひとつの理由はウーバーとリフトの便利さである。

◆とにかく、すぐに来る。支払いの手間が要らない。なにより出張者に好都合なのは、レシートをもらわないでいいこと。米国のタクシーでレシートを要求すると、自分で書き入れろと白紙のレシートを渡されることが頻繁にあるが、ビジネスでは困る。その点、ライドシェアならメールで送られてくる。料金だけでなく、いつ、どこからどこへ、どういう経路で行ったのかも記録される。これは出張の精算に便利である。

◆ライドシェアの普及でタクシーも拾いやすくなった。スマホのアプリを開く前にイエローキャブの空車があれば、それに乗ってしまう。と、いうわけでまったく歩くことのなかったニューヨーク出張であった。

◆そんな便利なライドシェアだから既存のタクシー業界にしてみれば脅威である。ロンドン交通局は先日、ウーバーに対し、ロンドンでの営業認可を新たに与えない方針を明らかにした。安全に問題があるため、というのがその理由だが、業界からの強烈なロビー活動があったものと思われる。ロンドンでブラックキャブに乗ると、ミニキャブ(ライドシェアのこと)に乗ってレイプなどの被害にあった事例を挙げたネガティブ・キャンペーンの広告がでかでかと掲げられている。

◆翻って日本はどうか。日本ではライドシェアは白タクと認定される。日本の法律では「プロ」のドライバー以外は有償でひとを乗せられないから、事実上ライドシェアは認められていない。白タクを認める必要はない。日本のタクシードライバーがライドシェアのドライバーのように動けばいい。その仕組みを整えればいいのだ。ライドシェアのテクノロジーを活用しないのは惜しいというより、日本の交通インフラにとっての大損失である。 日本のタクシー業界がもっと競争的であれば、競ってライドシェアのテクノロジーを導入する機運が高まるはずなのだが。いまだにSuicaで決済もできない車が多く走っている現実を見ると、この国は世界標準からますます置いていかれていると思わざるを得ない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

(出所:12/2配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)

《HH》

提供:フィスコ

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