年初から大荒れの原油市場、トランプ大統領演説は奇々怪々 <コモディティ特集>

特集
2020年1月15日 13時30分

2020年の原油市場は年始から荒れた。イラン革命防衛隊のコッズ部隊の司令官であるスレイマニ氏や、イラクのイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」の指導者アブ・マフディ・アルムハンディス氏がイラクのバグダッド国際空港で米国の空爆により殺害された。米国防総省は声明で、スレイマニ司令官が「米国の外交官や軍人に対する攻撃計画の立案に積極的に関わっていた」と指摘し、殺害の正当性を訴えた。

●あわや大規模戦闘から一転、トランプ大統領の豹変

死亡したスレイマニ司令官の喪が明けた後、イランは直ちにイラクの米軍基地に報復攻撃。イランと米国の大規模な戦闘が始まるかと思われたが、米国は反撃を自制した。

イランの報復攻撃を受けた後のトランプ米大統領の発言はイランに対して妙に融和的であり、友好的であり、配慮に満ちていた。「攻撃で米国民に死傷者はなかった」、「軍の拠点の損害は最小限」、「イランは攻撃の構えを緩めようとしているようだ」、「軍事力を行使したくない」と述べた。過激派組織イスラミック・ステート(IS)壊滅に向けたイランとの共闘も示唆した。

米国は18年にイラン核合意から離脱し、イランに対する経済制裁を行っているにも関わらず、トランプ米大統領は演説中に新たな核合意について言及した。「イランの繁栄と力強い成長を可能にし、同国が計り知れない潜在力を活用」できるようなものでなければならないとの認識を示した。

米国が中東に莫大な戦費を追加的に投じる見返りはなく、矛を収めることが妥当であるのは自明だが、中東情勢の緊迫感をほぼ消失させたトランプ米大統領の演説は怪奇だったとしか言いようがない。スレイマニ司令官を殺害し、命のやり取りを始めようとしていた人物が一転してイランの繁栄を口にするのは気味が悪い。

●ぼんやりとした思惑が原油相場を圧迫

イランが報復を行う前に根回しを行い、人的な被害発生を回避しつつ攻撃を行ったことが米国の自制につながったようだが、イランが攻撃した場合の反撃をあれだけ強く繰り返したトランプ米大統領が豹変したことは全く腑に落ちない。一部では今回の大統領演説が米国とイランの外交交渉が始まる糸口になるとの見方も浮上している。

今回の米国とイランの一件にまだ続きがあるのだろうか。両国が近いうちに関係を改善させる可能性はかなり低いと思われるが、このぼんやりとした思惑は足元の原油相場を圧迫していると思われる。米国は経済制裁の一環としてイラン産原油の禁輸措置を講じており、トランプ米大統領の態度次第では、原油の供給見通しが変化する。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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