明日の株式相場戦略=恐るべき“新型コロナ相場”の前方を見極める

市況
2020年1月27日 17時49分

週明け27日の東京株式市場は再びリスクオフの波に晒され、日経平均 が今年最大の下げ幅となった。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染が世界的に広がる動きをみせ、これが世界経済への悪影響を及ぼすというシナリオが売りの根拠だ。しかし、現状は感染拡大が続いていることは事実でも、毒性は2003年のSARSよりも遥かに低いことが確認されており、これが世界経済を揺るがすという定義づけは時機尚早といえる。煽情的に報じるメディアが人心を多分にミスリードしている要素は大きいと思われる。

繰り返しになるが、相場急落の実態は投資家の恐怖感から来る狼狽売りではない。アルゴリズム取引などのシステマチックな先物売りに現物が追随している、もしくはそれに乗って売りが仕掛けられているのであって、そうした事情をファンダメンタルズ的なアプローチで論理的に説明しようとするから、まことしやかに「世界経済への影響懸念」という後付け解釈がなされる。前週にWHOが国際的な公衆衛生上の緊急事態宣言を見送ったことが、逆にリスクオフ相場としては若いという皮肉な状況を作ってしまった嫌いもある。今しばらくは厳しい地合いが続くかもしれないが、時間の経過とともに収束に向かうタイミングが見えてくれば、リバウンドに転じてからの戻りも早そうだ。

本格化し始めた企業の決算発表などそっちのけの状態で、主力株は手当たり次第に売り、その一方で、新型肺炎対策で浮上してきた銘柄を手当たり次第に買うという展開。思惑先行で個別株の需給オンリーの地合いと化しているが、これもまた相場である。きょうは、アドバンテスト<6857>や東京エレクトロン<8035>など相場の牽引役を担ってきた半導体関連株が売り崩されたことも地合いを悪くしたが、何といっても目立ったのはファーストリテイリング<9983>だ。同社株の急落により、日経平均をたった1銘柄で126円も押し下げた。売買代金はソニー<6758>やソフトバンクグループ<9984>を大きく上回り東証1部首位。同社株は中国関連としての位置づけもあり、事実、武漢市にある「ユニクロ」店舗の全店(17店舗)の営業を見合わせている状態にあるが、それにしても全体業績に与える収益機会の損失は株価を3500円以上押し下げるほどのインパクトはない。アルゴリズム取引の影響が如実に映し出されている。

一方、“新型コロナ関連”のチケットを持った銘柄は、高波が発生した東京市場の遥か上空を飛翔する格好で軒並みストップ高に買われる人気となった。軍事的リスクが浮上すると石川製作所<6208>をはじめとする防衛関連株が一斉に買われるが、それよりも対象銘柄が明らかに多く値幅も大きい、いわば防衛関連の拡大版のような相場が繰り広げられている。川本産業<3604>はストップ高で張り付きザラ場中に値がつかなかったが、これで6日連続のストップ高。中京医薬品<4558>も大引けストップ高配分で4日連続のストップ高と異彩を放った。このほか、きょうはマナック<4364>も1本値でストップ高に買われ、日本エアーテック<6291>、ニイタカ<4465>、アゼアス<3161>、重松製作所<7980>、興研<7963>、オーミケンシ<3111>、新内外綿<3125>、大木ヘルスケアホールディングス<3417>など数え上げるだけでも大変なほど、値幅制限いっぱいまで買われる銘柄のオンパレードとなった。なかなかこういう光景は見られない。

まさに恐るべきダイナミズムだが、こうした銘柄群はモメンタムで買われていることは確かで、振り子のように近い将来に戻ってくる局面が訪れる。短期トレードで鉄火場を堪能するのも投資の一手法には違いないが、肺炎関連以外で買い場となっている銘柄を探す姿勢を持つことも大切だ。

不動産関連株が強い動きを示しており、業界双璧の三井不動産<8801>、三菱地所<8802>が揃って買われたのは、きょうの相場のもう一つの特記すべき特徴でもある。その流れのなか、低位の小型株として不動産関連投資に舵を切るストライダーズ<9816>が食指の動くチャートを形成している。このほか建築関連では、BASFジャパンと共同ブランディングを進め、マンション大規模修繕関連ビジネスを手掛ける菊水化学工業<7953>も業績実態良好で上値慕いの動きにある。

日程面では、あすは12月の企業向けサービス価格指数が取引開始前に日銀から開示されるほか、40年物国債の入札も予定。海外では、29日までの日程でFOMCが開催される。また、12月の米耐久財受注、11月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、1月の米消費者信頼感指数などが発表される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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