明日の株式相場戦略=“黒船来襲”で不動産セクターに株高思惑

市況
2020年1月29日 17時59分

きょう(29日)の東京株式市場ではようやく下値模索の展開から逃れ、日経平均が3日ぶりに反発した。買い優勢で始まり寄り後にいったん値を消したものの、前場後半から次第高の動きをみせ、後場は横ばいながらこの日の高値圏で売り物をこなした。結局、大引けは163円高で着地している。今週に入って2日間で600円強の下落をみせていただけに、この程度の反発では安心できないのは事実。しかし、とりあえず相場の自律神経が失われていないことが確認できた。欧米株の上昇に連動した形だが、きょう取引が再開された香港市場は大きく下げており、それを横目にしてもブレることなくプラス圏で売り物をこなし切ったことは、少なからぬ収穫といってもよさそうだ。日経平均が高値圏を維持した背景には、「米ホワイトハウスが中国と米国を結ぶ航空便の運航停止措置を見送ることを決めた」と報道されたことが挙げられている。中国の新型肺炎の世界経済への影響が盛んにメディアで報じられている割に、米国ではあまり強く意識されていないようにも見受けられる。

米国は、それよりも今シーズンB型インフルエンザが流行している状況で、むしろそちらの方が危機感を煽っているようだ。これまでの累計で米国では少なく見積もっても1500万人がインフルエンザに感染し14万人が入院、8200人が命を落としているという話が伝わっている。そうしたなか、新型コロナウイルスによる肺炎患者数の増加自体はそれほど問題ではない、というコンセンサスが生まれることが相場における最良の“特効薬”かもしれない。新型肺炎は対症療法で回復している人も多数いるわけで、市場では「新型インフルエンザぐらいのイメージでパンデミックの恐怖とは程遠い。メディアによってモンスター化している部分もある」(国内証券ストラテジスト)という指摘もある。

とはいえ材料株物色の手掛かりとしても、かつてないほどの強力なインパクトを持っていることは確かで、こちらの方はトレーダーにとって値幅を生み出す魔法の杖に近い。きょうも川本産業<3604>、中京医薬品<4558>が“ストップ高ロード”を走り続けたほか、昭和化学工業<4990>、マナック<4364>、興研<7963>なども値幅制限いっぱいに買われた。更に物色の矛先は横に広がり、丸山製作所<6316>やNuts<7612>といった銘柄にも波及した。前日紹介したメディア工房<3815>も材料性は豊富ながら、新型肺炎関連の切り口で人気を加速させストップ高で買い物を残した。基本的に持続性のある銘柄とそうでない銘柄との見極めは必要だが、その日の板で勝負するデイトレーダーにはあまり関係ないことかもしれない。

さて、今回は比較的市場の関心が低いFOMCだが、その結果が日本時間あす午前4時頃に発表される。金融政策の現状維持が予想されるが、注目したいのは実質的な量的緩和策となっている国庫短期証券(T-Bill)の買い入れについてFRBは今後どういう方針で臨むのかという点。短期金利が落ち着いている状態では継続する蓋然性に乏しいという見方もあるようだが、予定通り第2四半期(4~6月)まで月600億ドルの買い入れを続けるという方向で市場は織り込んでおり、一部では第3四半期まで継続する可能性も意識されている。会合後の記者会見でパウエルFRB議長の言質を取ることはできないまでも、ハト派路線を印象づけられるかどうかで、今後の相場が左右される可能性もある。

個別株では、週初にも触れたが不動産関連セクターに着目してみたい。きょうはビル賃貸など不動産事業を展開するユニゾホールディングス<3258>に対し、米投資ファンドのブラックストーンが買収価格を引き上げTOBを再提案、同社株は大幅高に買われた。このブラックストーンは日本の賃貸マンション群を一括取引としては過去最大規模の資金を投下して買い上げることも報じられており、割安な日本の不動産をターゲットに、こうした"黒船来襲"が今後活発化する公算が大きい。

ちなみにREIT指数は1月中旬以降再び上値指向を強め、きょうは2200まで水準を切り上げており、中長期波動の分水嶺である75日移動平均線を超えてきた。こうした環境下、中小型の不動産関連にも上昇機運が台頭するのは自然の流れといえる。ディア・ライフ<3245>、新日本建物<8893>、リベレステ<8887>、AMBITION<3300>のほか、不動産業界向けシステムを手掛けるいい生活<3796>などをマークしておきたい。

日程面では、あすは12月の建機出荷額が発表されるほか、2年物国債の入札が行われる。海外では10~12月の米実質GDP(速報値)の発表に関心が高い。このほか、12月のユーロ圏失業率。英国中央銀行の金融政策発表など。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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