為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、米FOMC議事要旨が有力な売買材料に
【先週の概況】
■ウイルス感染拡大を警戒して円売り縮小
先週のドル・円は伸び悩み。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月11日、米下院金融サービス委員会での議会証言で「成長見通しのリスクは存続、新型肺炎の影響を綿密に監視する」と述べたものの、「見通しの修正なければ、政策は適切である可能性が高い」、「経済が景気後退入りする確率は大幅に後退」との見方を伝えたことから、リスク回避的なドル売り・円買いは一服。また、中国国家衛生健康委員会が「11日の中国本土での新たなコロナウイルス感染者数は、1月30日以来の低水準になった」と発表したことから、ドル・円は109円台半ばから一時110円台前半まで戻した。中国本土株式の反発もリスク選好的なドル買い・円売りを促した。
しかしながら、ウイルス感染者の増加ペースがすみやかに鈍化する可能性は低いとの見方が浮上したことや、日本国内におけるウイルス感染が拡大していることから、リスク回避的な取引がやや活発となり、ドル・円は109円台後半まで反落した。2月13日、14日の日経平均株価が続落したこともドル売り・円買いを促した。
14日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円88銭まで買われた後に109円70銭まで下げた。新型肺炎の感染拡大や1月の米小売売上高でコアの売上高が市場予想を下回ったことが嫌気され、ドル売りが優勢となった。ドル・円は109円78銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円56銭-110円13銭
【今週の見通し】
■ドルは伸び悩みか、米FOMC議事要旨が有力な売買材料に
今週のドル・円は伸び悩みか。米国の経済情勢はまずまず良好であり、主要株価指数は過去最高値を更新する強気相場が続いている。ユーロ圏経済の一段の減速を受けてドル(米国)に資金流入しやすい地合いとなっている。ただ、新型ウイルスの感染被害はなお拡大しており、今後の中国経済の成長鈍化が見込まれるなか、世界経済への影響も懸念される。市場ではワクチン開発などによる早期収束への期待は持続しているものの、今週発表される米国の主要経済指標が市場予想を下回った場合、リスク選好的なドル買いは縮小する見通し。
2月11-12日に行われたパウエル連邦準備制度理事会(FRB)による議会証言で、米国経済への影響に対し具体的な判断を見送ったが、一定の影響を見込んでいることは明白。トランプ米大統領は一段の政策金利引き下げに言及していることからも、利下げ圧力がかかりやすい。19日に公表予定の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月28-29日開催分)で景気見通しについて慎重な意見が多く含まれていた場合、将来的な利下げ観測が台頭する可能性がある。その場合、ドルの上値は重くなりそうだ。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(19日公表予定)
FRBは1月28-29日の連邦公開市場委員会(FOMC)で現行の政策金利の据え置きを全会一致で決定。ただ、国内総生産(GDP)の通年での下振れを背景に2020年中の金融政策に不透明感が広がりそうだ。内容次第ではドル売りの手がかりとなりそうだ。
【米・2月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)】(20日発表予定)
20日発表の米2月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)は10.0と、1月の17.0から悪化が見込まれる。直近のISM製造業景況指数は50を6カ月ぶりに上回ったが、製造業の回復の遅れが嫌気されれば、株売りを通じてドル売りにつながりやすい。
予想レンジ:108円50銭-110円50銭
《FA》
提供:フィスコ