明日の株式相場戦略=アルゴのプログラム売買とどう対峙するか

市況
2020年2月20日 17時53分

「人は前を見ているつもりで、実はバックミラーを見ている」という文学者マクルーハンの言葉がある。後ろを振り返って、これまでの軌跡が今後も続くと錯覚するのは、未来を覗けない人間の宿命ともいえるが、株式市場では特にその傾向が顕著だ。今の東京市場は事あるごとにアルゴリズム売買に振り回され、目先の全体指数の値運びは極めて読みにくい。

日経平均については、ボラティリティは高くてもそれは波の上下動であって、潮流は発生していないボックス圏往来相場だ。今年に入ってから上下どちらかにトレンドが発生しそうな局面が何度かあったが、その都度買い方や売り方の期待を裏切り、踵(きびす)を返すように反転するケースを繰り返してきた。上がれば相応の理屈がつくし、下げてもその妥当性を裏付ける講釈に事欠かない。こうした環境下での個別株戦略は短期スタンスの回転売買と割り切るか、もしくはマクロに関係なく腹を据えて1年以上資金を寝かせるつもりで個別成長株の長期投資に舵を切るか。極論すれば、果実を得るための手段はこのいずれかに特化するしかない。

きょう(20日)の東京株式市場は日経平均株価の変調ぶりが際立った。大引けは78円高で着地、ここだけ見れば何ということもないが、1日を通してみれば波乱要素に富む地合いだった。朝方は前日の欧米株高に加え、外国為替市場でドル買いの動きが加速し、1ドル=111円台に急速に進んだ円安を横目にリスクオン一色の展開でスタート。日経平均は一時400円を超える上昇を示したが、そこからの伸び悩み方が半端ではなかった。横浜港で検疫を受けていたクルーズ船の乗客の中から2人の犠牲者が出たことが伝わり、これがアルゴリズムによる先物売りプログラムを発動させ、後場に入ると大幅なギャップダウンスタートであっという間に前日終値まであと20円強というところまで水準を切り下げた。午前10時前後につけた高値2万3806円からザクっと380円幅の急落である。ちなみに大引け時点の東証1部の値下がり銘柄数は1300近くに達し、値上がり銘柄数を550あまりも上回った。日経平均がプラスでも実質下げ相場というケースが増えている。

個別株もこの余波で上ヒゲを形成するもの多数となった。全員参加型材料株の素地を持つブイキューブ<3681>は何とか持ちこたえ、大引けストップ高となるパフォーマンスをみせたが、大概の中小型株は利益確定の売り圧力に値を崩す展開を余儀なくされている。

今週18日火曜日に日経平均は一時400円近い下げをみせ、大引けは下渋ったものの329円安の2万3193円で着地した。この時点では2万3000円大台割れも視野に入る弱気ムードが漂っていたが、そこからの目の覚めるような切り返しも、きょう取引時間中の高値からの急降下もひと言でいえば“アルゴの仕業”。バックミラーに映る景色で判断する人間の思考ではついて行けない地合いだ。全体相場は遅かれ早かれ、上下どちらかに“潮流”発生すると思われるが、それまでは個別株も利益が乗ったら欲張らずキャッシュ化を優先する方がよさそうだ。

個別では強い株につくのが基本ながら、継続注目してきたエクストリーム<6033>は9連騰でさすがに押しが欲しいところ。また、医療ICT関連のMRT<6034>がどこまで上値を出すかだが、きょうもいったん軟化した後に再浮上しており、株式需給面の良さを暗示している。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連では時価総額6500億円と大型だがSCSK<9719>が昨年来高値を更新と強さを発揮している。時価は2000年11月以来19年3カ月ぶりの高値圏を走っており注目しておきたい。

このほか、目先を変えて新型コロナ関連では診断薬・検査キットで思惑を内包する日水製薬<4550>あたりに注目したい。会社側では「新型コロナに対応する取り組みも当然検討課題となっている」(経営企画室)としている。

日程面では、あすは1月の全国消費者物価指数(CPI)、1月の全国百貨店売上高、1月の食品スーパー売上高、19年12月の毎月勤労統計確報値など。海外では1月の米中古住宅販売件数、2月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、2月のユーロ圏PMI速報値などが注目される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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