明日の株式相場戦略=安値拾いの切り札、期末一括配当に着目
東京株式市場では今週末にメジャーSQ算出を控え、きょうはSQ前の魔の水曜日ではあったが、既に日々波乱モードとなっており、そうした思惑が作用する隙間もないようなジェットコースター相場が続いている。
きょう(11日)は日経平均が急反落、450円あまりの下げとなり終値で1万9500円を下回った。ほぼ安値引けに近い形での昨年来安値更新で、まだ底値形成には遠いという印象を与えている。前日の米国株市場ではNYダウが1167ドル高と前日の下げの半分を取り戻した格好だが、東京市場における投資家の視線は既にそこではなく、時間外の米株価指数先物の動向に釘付けとなっている。前日の米国株市場ではトランプ米政権が打ち出す給与減税など景気対策に対する期待感が株価上昇の原動力となったが、手掛かり材料としては見切り発車に等しく非常に不確かで、事実、きょうはこの景気対策の実現性に対する疑問符が米株指数先物の下げに投影された。
何よりも米国での新型コロナ感染者数が急増傾向にあるなかで、強靱とみられていた米国経済への信頼感が剥落している。であるとすれば米株市場はリバウンドはあってもそこは戻り売りの対象となってしまう。東京市場では円高圧力とのセットで米株安を嫌気する、という形で下方圧力の強い相場展開を覚悟せざるを得ない。
ここは静観を決め込むか、短期リバウンドを狙った日計り商いで対処するかだが、今が3月中旬というカレンダーを生かし、発想を転換させて下落相場に挑むという作戦も選択肢としてある。これはもちろん空売りという手段ではない。
株式投資の原点に立ち返り、株主として投資した企業からの配当を得るという考え方に戦略として有効性がある。今の経済環境を考慮すれば減配リスクは皆無ではないが、その懸念の少ない銘柄でなおかつ配当に厚い銘柄は、結果的に上値を指向しやすく局面に応じてキャピタルゲイン狙いに切り替えることも可能となる。
この時期インカムゲイン狙いの買いで注目されるのは、高配当利回りであることはもちろんとして、3月期末にまとめて配当している銘柄が魅力的となる。まず、その観点から比較的業績が安定しており一括配当が多い建設セクターは狙い目となる。飛島建設<1805>、不動テトラ<1813>、鉄建建設<1815>、西松建設<1820>、三井住友建設<1821>、大豊建設<1822>、熊谷組<1861>、東洋建設<1890>、五洋建設<1893>などはいずれも期末一括配当で利回りも高い。全体波乱相場に流され下値に突っ込む場面があれば買いで対処して妙味がありそうだ。3月権利取り最終日までに、配当利回りを上回る形で値上がり益を確保した場合は「利食い千人力」で対応する手もある。
また、期末一括配当で利回りの高い銘柄は当然ながら建設セクターに限られたものではない。個別にピックアップしていくと、例えば株価低位ながら今3月期は2ケタ増収増益が予想される飼料会社フィード・ワン<2060>、福祉用具レンタルの日本ケアサプライ<2393>、肌着メーカーの老舗グンゼ<3002>、衛星放送会社のWOWOW<4839>、自動車向けサーボ駆動式プレス機械で抜群の商品競争力を有するアイダエンジニアリング<6118>、パソコン関連製品を受注生産しネットで直販するMCJ<6670>、AIエッジコンピューターへの展開で思惑を内包するOKI<6703>、都心を中心に中古ビルの改装・販売など不動産再生ビジネスを展開するサンフロンティア不動産<8934>など。ざっと並べても条件に合致する銘柄は数多い。それぞれの配当利回りを確認したうえで、ここはバーゲンハンティングのチャンスと思える意中の銘柄があれば買い下がる方針で対処する。
日程面では、あすは1~3月の法人企業景気予測調査、2月の国内企業物価指数がいずれも朝方取引開始前に開示される。また、前場取引時間中には2月のオフィス空室率が発表。このほか、20年物国債の入札がある。海外ではECB理事会の結果とラガルド総裁の記者会見が注目を集めることになる。また2月の米卸売物価指数が発表されるほか、米30年物国債の入札も予定されている。
(中村潤一)