山内俊哉氏【再び1万7000円割れ、相場復活の日はいつか】(2) <相場観特集>
―協調緩和の流れのなか、揺れまくるドル・円相場も注視―
週明け16日の東京市場は、日経平均株価が前日終値を挟んでの不安定な展開を強いられていたが、後場に入り大きく荒れた。前週末の米国株急反騰に加え、FRBの緊急利下げ発表、日銀のETF買い入れ枠増額とポジティブ材料が続いたが、それでも全般相場は戻り足をみせず、一時1万7000円台を割り込んだ。日米の金融政策などを背景に為替動向にも影響が出そうだ。今回は、株式市場の見通しと為替相場の見通しについて、それぞれ業界第一線で活躍する識者に意見を聞いた。
●「金融政策には限界、緩やかなドル高基調続く」
山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
今回の金融市場の波乱は、これまでのような金融危機に端を発するものではなく、新型コロナウイルスによる感染拡大を背景にしたパンデミック(世界的流行)によるものだ。それだけに、金融政策による対応には限界がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は1.0%の大幅利下げに踏み切ったほか、日銀はETFの購入目標額を12兆円に倍増したが、いずれも、市場のサプライズを呼び起こすものとはいえず、むしろ日米の中央銀行は玉を撃ち尽くしたとも受け止められかねない面がある。
マーケット関係者の心理を変えることができるとすれば、新型コロナの治療法が見つかったり、ワクチンの開発に成功したりすることだろう。ただ、新薬の開発はそう簡単なものではない。このパンデミックを背景にした金融市場の波乱は、過去に例のないものだ。この状況がいつまで続くかは、不明な点が大きいが、米国は国家非常事態宣言を行うとともに今後、8週間のイベントの中止などを勧告しており、この措置により新型コロナに対する新たな感染者の増加ペースが減ったりすれば、市場では好感されるだろう。
こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円のレンジは1ドル=103~109円を見込む。全体的には緩やかなドル高が続くとみている。為替市場では、「有事のドル買い」を背景にしたドルと、経常黒字国で現時点では新型コロナによる感染者数も拡大していない日本円が買われやすい展開となっている。ユーロ・ドルは1ユーロ=1.08~1.13ドルのレンジで、ユーロ安基調を見込んでいる。新型コロナの感染者も多くユーロは売られやすい通貨となっている。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。
株探ニュース