明日の株式相場戦略=パニック疲れの買い、目先底入れか

市況
2020年3月17日 17時40分

きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前日同様に上下に振れまくる展開。大蛇がのたうつようなハイボラティリティ相場が続いており、朝方に前日比624円安の1万6378円まで売り込まれた後は戻り足に転じ、午前10時半過ぎには555円高の1万7557円まで駆け上がった。上下合わせて1200円近い値幅を出したが、こうした動きには目が慣れてきた投資家も少なくないのではないか。日経平均は終日方向性が定まらず、前日終値つまり1万7000円大台ラインを何度も跨(また)いでは往来を繰り返し、次第にここに収れんする形で、結局9円高の1万7011円で着地する形となった。

依然として先物を絡めたインデックス売買が主導する空中戦であり、個別も主力株中心にこの影響を大きく受けている。だが、全般は“パニック疲れ”的な様相も呈してきた。前日に米VIX指数は終値で82.69まで上昇、ほぼリーマン・ショックと肩を並べた。また、前日時点で日経平均ベースの騰落レシオは34.2%まで低下し、これは限界まで振り切った水準といってもよさそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大が続きその対応もままならないが、世界同時株安の暴風雨も目先はいったん勢いを止め短期的に株価は底を入れた感触はある。東京市場に限って言えば、きょうは東証1部の売買代金が4兆3700億円に達し、値上がり銘柄数は全体の86%強を占めた。信用買い残も急減しているなか、朝方の下げでミニセリングクライマックスを通過した雰囲気も漂う。

もちろん、ここで資金をかき集めて全力で買い向かうというような確信の伴うターニングポイントではない。株価の先見性を持ってしてもコロナウイルス収束の気配を察知できる段階にはまだ早い。1~3月期の世界経済へのダメージは強烈で、あの米国でさえマイナス成長が濃厚だが、その傷跡も確認できない段階での参戦はリスクも大きい。ここは待機資金の4分の1くらいにとどめておくところか。大底をピンポイントで捉えるというのは僥倖以外の何ものでもなく、それを期待しての買い参戦は蛮勇以外の何ものでもない。全体相場の落ち着きを待ちながら、半信半疑で恐る恐る資金を入れていくというスタンスでよいと思われる。

きょうの注目ポイントはTOPIXであり、32.12ポイントの上昇と日経平均とのカイ離が際立つ。現象的にはTOPIXと日経平均のNT倍率修正の動きといえるが、これはGPIFなど政策マネーの流入が反映されたものとみられている。GPIFはピンポイントで大型株に照準を絞った買い方で、その典型がトヨタ自動車<7203>の動き。為替の円安などを根拠とするのであれば、他の自動車株もそれに近い動きを示すはずだが、トヨタの値幅は群を抜いていた。このほか、任天堂<7974>やオリエンタルランド<4661>などにも同様にGPIFのピンポイント買いが入ったもようだ。

新型コロナについては、消費の大幅減退と同時にサプライチェーンの機能不全という需要と供給両面から、経済にかつて経験したことのないダメージを与えている。1~3月期の米国経済がマイナス成長ということであれば、世界も既にリセッションに突入している可能性が高い。株式市場がこれをファンダメンタルズ面からどのタイミングで織り込むのかは不透明。PERなど収益をベースとした指標は現状では全く当てにならないが、時間軸としてはコロナの感染拡大に収束の兆しが見えた時、もしくはコロナに対する人々の恐怖感が希薄化してくれば、株式市場の景色は変わる。

個別ではバイオ関連に流れがきている。マザーズ市場の戻りが急であり、これはバイオ関連に“パニック疲れ”の買いが波及していることを示唆しているようにも見える。信用買い残を直近急減させている銘柄も多く、需給改善がカギを握る。流動性が高くムードメーカーに位置付けられるそーせいグループ<4565>のほか、ファンダメンタルズのしっかりしているJCRファーマ<4552>も注目か。低位ではセルシード<7776>、ナノキャリア<4571>、リボミック<4591>、シンバイオ製薬<4582>などがある。

日程面では、あすは2月の貿易統計など。海外では2月の米住宅着工件数・建設許可件数の発表が予定されるほか、ブラジル中銀が政策金利を発表する。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2020年03月18日 17時41分

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