明日の株式相場戦略=森より木を見る相場、中小型株にうねり

市況
2020年4月14日 17時44分

きょう(14日)の東京株式市場では日経平均が前日の下げを帳消しにしてお釣りのくる急反騰をみせた。朝方は前日の下げの反動で高く始まった後30分ほどもみ合っていたが、前場中盤から次第高の展開となり、後場に入ると上値指向を一段と強めた。結局、595円高の1万9638円で着地、これは約1カ月ぶりの高値圏である。

ハイボラティリティな相場は相変わらずだが、その上下動は予測不能といえるほど連続性のないもので、正直きょうの日経平均の動きは微塵もイメージできなかった。強気材料としてはトランプ米大統領が新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊する経済に対し、事態収拾に向けた計画を早い段階で打ち出す構えをみせたことが伝わっているが、このオブラートで包んだような曖昧さはまさに後付け解釈的な要素にあふれている。薄商いのなか、AIトレードが同一方向に株価を突き動かす。人間の思考では手が届かない遥かなる高みで空中戦が繰り広げられている体(てい)だ。日経平均やTOPIXなど全体指数の動向については期せずして傍観者と化してしまう、というのが率直なところである。

ひとつ拠りどころを探すとすれば、きょうはソフトバンクグループ<9984>の動きがポイントとなっている。同社株は朝方に売り気配で始まったが寄り後に底力を発揮、売り物を根こそぎ吸収して一直線にプラス圏に切り返したことで、強力なムードメーカーの役割を担った。ソフトバンクGは巨額資金のビジョン・ファンドの運用で挫折を余儀なくされ、投資先の評価引き下げなどを理由に、前日の引け後に20年3月期の最終損益が7500億円前後の赤字となることを発表した。前の期は1兆4100億円強の黒字だったから、このギャップは結構なインパクトがあり、きょう取引開始前の時点では株価には厳しくネガティブに作用するとの見方が強かった。ところがその予想を肯定したのは開始後十数分間に過ぎなかった。俗に言う“防戦買い”も入っていたとは思われるが、そもそも売り圧力が弱い。4000円割れ寸前で踏みとどまるやその後は4400円台まで押し返し、「新型コロナによる業績悪化は織り込み済みで材料出尽くし」といわんばかりの値運びをみせた。

「森より木を見る」というが、今はまさしくそういう地合いだ。個別株勝負で全体指数の上げ下げはあまり関係がない。経済実勢悪のなかで人為的にもたらされた過剰流動性が一部の個別株の集中的な人気をライトアップしている。これに付け加えるならば、個別株は食指の動く株価ポジションに位置する銘柄が多いということと、株式需給面での品薄感が意識されているということになるだろう。ちなみに株式の品薄感については、当該株の時価総額とは次元の異なる話だ。ファーストリテイリング<9983>を見ればよく分かる。

さて、全体を眺めると中小型株への資金流入にうねりが出てきている。前日取り上げたバイオ関連もそうだが、 新型コロナウイルスに対して免疫を持っている銘柄というのが数多く存在することが分かってきた。短期就労へのニーズが高まっていることから注目したアルバイトタイムス<2341>はストップ高を演じ全市場ベースで値上がり率トップとなったが、これは低位株ならではの本領を発揮した形だ。ツナググループ・ホールディングス<6551>も値ごろ感に着目した投資家が多かったようだ。新しいところではアイエックス・ナレッジ<9753>はどうか。クロスキャット<2307>が先駆人気化したことを受け、株価が500円前後に位置するIXナレッジもこの水準で放置され続ける感じがしない。

このほか、王道テーマの周辺では、テレワーク環境でWi-Fi需要が増勢にあることから、ワイヤレスゲート<9419>やファイバーゲート<9450>などに注目。また、巣ごもり関連では電子書籍のイーブックイニシアティブジャパン<3658>、富士山マガジンサービス<3138>、パピレス<3641>などに目を配っておきたい。

日程面では、あすは3月の訪日外客数が引け後に発表される。海外では米国で重要経済指標が相次ぐ。4月のNY連銀製造業景況感指数、4月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数のほか、3月の米小売売上高、3月の米鉱工業生産・設備稼働率、2月の米企業在庫などが注目されることになる。また、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(テレビ会議)が行われる。なお、韓国市場は休場となる。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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