プラチナは18年ぶり安値から回復、経済活動再開を見極めへ <コモディティ特集>

特集
2020年4月15日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は3月、新型コロナウイルスの感染拡大による株価急落を受けて2002年11月以来の安値569.80ドルをつけた。その後は米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和(QE)再開や無制限のQEを発表したことを受けて急反発し、755.05ドルまで戻したが、新型コロナウイルスの終息や経済活動再開が待たれるなか、4月に入ってからはもみ合いとなった。

各国の移動制限措置で自動車メーカーの工場などが閉鎖され、需要が減少する一方、南アフリカの鉱山会社の操業停止で供給がひっ迫し、強弱材料が交錯している。各国は移動制限や外出禁止令を4月末や5月前半まで延長しており、それまでに新型コロナウイルスが終息し、経済活動を正常化できるかどうかが当面の焦点である。

また、感染源となった中国湖北省武漢市の封鎖が8日に解除され、中国での経済活動が再開したことは下支え要因だが、人が動き出したことで感染拡大の第2波が警戒されており、中国で完全に封じ込められるかどうかも焦点である。

一方、各国中銀のQEや経済対策で大量の資金が投入されており、経済活動が再開すると需要が急速に回復し、プラチナ価格を押し上げるとみられる。14日のイースター明けの欧州市場では一段高となり、3月13日以来の高値789.75ドルをつけた。プラチナETF(上場投信)に投資資金が戻るかどうかも確認したい。

●プラチナは需要減少も南アのロックダウン延長で供給ひっ迫が続く

南アのラマポーザ大統領は9日、演説を行い、ロックダウン(都市封鎖)を2週間延長し4月30日までとすることを発表した。鉱山会社は限定的な操業が認められたが、インパラ・プラチナム(インプラッツ)やシバニェ・スティルウォーターがプラチナ系貴金属(PGM)の供給に関する不可抗力条項を宣言し、供給ひっ迫につながっている。アングロ・アメリカン・プラチナム(アンプラッツ)も保守管理に入ったが、同社は既に精製工場の爆発事故により不可抗力条項を宣言している。

供給ひっ迫のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)は1ヵ月物が3月26日に12.54%(前日3.12%)に上昇。その後、各国の移動制限などで自動車メーカーの工場が閉鎖され、需要減少からリースレートが上げ一服となり、4月13日は5.70%で推移した。このように経済活動が再開するまで強弱材料が交錯した状態が続くとみられる。

●中国の封鎖解除で需要増の可能性

中国では世界に先駆けて封鎖が解除されており、プラチナ需要の増加が見込まれる。まとまった買いが入ると上値を伸ばす可能性が出てくる。

中国汽車工業協会(CAAM)によると、3月の自動車販売台数は前年同月比43.3%減の143万台となった。過去最大の減少率となった2月(79%減)ほどではなかったが、21ヵ月連続の減少となった。その一方、自動車生産拠点204ヵ所の調査で、閉鎖工場の生産再開率は99.5%になったと発表した。また、労働者の86%が職場に復帰している。

また、米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長が13日、米国で新型コロナウイルス感染が週内にピークを迎える可能性があると発言している。米国での封鎖解除や経済活動再開の時期を見極めたい。

●南アと英国のプラチナETF残高が減少

新型コロナウイルスの感染拡大で先行き懸念が強まるなか、プラチナETFから投資資金の流出が続いた。プラチナETF残高は14日の南アで25.53トン(1ヵ月前31.07トン)に減少、米国で22.95トン(同22.53トン)に増加、8日の英国で16.32トン(同17.85トン)に減少した。ただ、各国中銀のQEなどを受けて金ETFにまとまった投資資金が流入しており、新型コロナウイルスの終息期待が高まればプラチナETFにも投資資金が戻る可能性が出てくる。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月7日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万9021枚となり、1ヵ月前の3万3247枚(3月10日)から縮小。手じまい売りが買い戻しを上回った。また、戻り場面で新規売りが増加し上値を抑える要因になっている。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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