「ものすごい優良銘柄」、高勝率・お手頃・持続力の三拍子で波乱をかわす
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第39回
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
前回記事「2つの指標で見つけた! コロナショックを耐えそうな極限環境銘柄」を読む
新型コロナウイルスで混乱する金融市場は、米国などで経済再開が議論され始めたこともあり、先週の株式市場は反転上昇を見せましたが、週明けからは実体経済の悪化が意識され、これに北朝鮮情勢の混迷懸念が加わり、再び下押しの力が増しています。
最近まで反騰の動きを見せていたのは、世界規模で金融緩和が進み、市場にリスクマネーがこれでもか、と流入し続けていることがあります。これを端的に表すのは、株式市場と金価格の関係でしょう。
本来、株式はリスク資産として、金は安全資産として、互いに表裏一体のように作用し、局所的には逆相関の関係性を有することは周知の通りです。しかし、それが年始の急落から反転に至るまでの過程で、ほぼ同期した動きを見せています。
■S&P500種株価指数と金価格の推移
出所:データストリーム
これは、もちろん金利低下などのマクロ要因もありますが、単純に行き場を失った流動性があらゆるリスク資産へと流れ込み続けている側面が大きいように思います。何にしても、実体景気の悪化はこれから進行するため、これは需給面で押し上げられたミスプライスだと考えるべきでしょう。
採るべき戦略は2つ、短期勝負か優良株ホールドか
このように、経済が混迷するもとで、過剰流動性で株価が乱高下するような環境下で、採るべき投資戦略は大きく2つになります。
1つは、市場の激しい騰落を見抜いてそれに呼応するように短期的な売買を繰り返す
もう1つは、騰落を耐え忍びつつ胆力をもって優良銘柄を保有し続ける
――かです。
前者の短期戦略は、テクニカルや需給などの過熱感の先読みやイベントのタイミングが重要となります。これに対して、後者の「優良株ホールド戦略」は、どっしりと構えて優良銘柄を見つければよい、ということになります。
新型コロナウイルスの感染拡大は、収束に向かい始めたという期待も見え隠れし始めていますが、沈静化の時期やタイミングは誰にも分かりません。そのため、大船に乗ったつもりで事態を静観する方が、労力的にも精神衛生上も有意義でしょう。そこで、今回は徹底的に優良な銘柄を定量的に、かつシンプルに抽出し、パフォーマンスの検証も実施したいと思います。
優良銘柄の定義は、四半期・一株利益が継続成長している
まず、優良銘柄の定義についてです。「優良」という言葉は曖昧であり、分析の切り口によって優良の意味や要素も異なりますが、ここでは一般的なイメージとして「継続的に成長を続ける銘柄」を抽出します。ただ、それだけでは単に何年連続増益、といった誰でも知りうる旨味の薄いアイデアになる上、どの程度の期間、頻度で増益を達成すれば優良なのかの基準が不明です。
そのため、今回は極端かつ定量的に過去15年間の対前年比四半期EPS(一株当たり利益)成長率がプラスであった割合(勝率)が高い銘柄を上場全銘柄でランキングし、その上位(または下位)銘柄について検証します。
過去15年というサンプル期間の根拠は、日本で四半期開示が浸透したのが2004年以降であり、その成長率を見るために最も遡れるのが2005年、今から15年前であるためです。サンプル数は、最大で60四半期分にもなるので傾向を捉えるには十分でしょう。また、一定のデータ数を確保する観点から、上場後30四半期を経過していない銘柄は対象から除外しています。
勝率1位は98%のカカクコム、そしてベネフィット・ワンは……
まず、投資パフォーマンスの検証に入る前に、どういった銘柄が上位に存在するのかを簡単に見てみます。十分なサンプル数があり、かつ極めて安定性の高い成長を続けているのが、食べログで有名なカカクコム<2371>で、勝率は驚異の98%です。
成長率の平均も30%を超えており、減益に転じた四半期は過去15年間で1四半期しかないというまさに「怪物」のような優良銘柄です。もちろん、上場全銘柄3700社中で堂々の1位となります。
■カカクコム<2371>の実績EPSとEPS成長率の推移
出所:データストリーム
続いては、こちらも財務・業績ともに優等生の代表銘柄として知られる福利厚生代行のベネフィット・ワン<2412>です。カカクコムと比較して勝率はやや落ち93%となり、総合では第4位になります。成長率にやや波はあるものの、シクリカル性の強い日本株とは思えないほどの安定した利益成長を誇っています。
■ベネフィット・ワン<2412>の実績EPSとEPS成長率の推移
出所:データストリーム
例に挙げた2社は成長実績では申し分ないのですが、重要なのはこのように連続増益を続ける銘柄に投資することが、パフォーマンス(運用成績)の向上に素直に結びつくのかという点です。
答えを先に言えば、「YES。ただし、ひと手間加えるとさらにパフォーマンスはアップする!」ということです。
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株探ニュース