明日の株式相場戦略=理外の理、バブル相場の「第0章」
週明け11日の東京株式市場では、日経平均 が前週末比211円高と上昇基調を継続、一時は上げ幅が350円以上となる場面もあった。相場は生き物というが、まさに理外の理で動く。5月相場は日経平均ベースでは上値が重く、2万円ラインを通過点に上値を指向するような展開は見込みにくいと考えていたが、現時点では良い意味でそれが裏切られている。
この時期、新型コロナウイルスの影響が色濃く反映されるであろう決算発表本格化を前に、買う側としては手を拱(こまぬ)くよりない場面にも見える。だが、市場筋によると「今の相場でロングポジションをとる投資家は買い増しもしないが、減らしもしない、開き直った状態。実際に戦々恐々としているのはショートを積んでいる方(空売りを仕掛けている方)ではないか」(国内証券ストラテジスト)という指摘もある。
例えば、業績相場も最終盤になると、好決算が相次ぐ局面にあって株価がどうにも上がらないという現象が目立つようになる。これは、事前のハードルの高さ、つまりマーケットの期待が強すぎて、よほどサプライズがない限り上値を買いに行こうとは思わない投資家心理が顕在化してくるためだ。企業の好実態を礼賛しながら、本音としてはどこで保有株を売るかということが前提となっていて、「内容が良いから買いたい」ではなく、「内容が良いから高く売れるはず」という思考に傾いてしまう。
さながら今の相場はそれとは真逆の環境下に置かれている。日米や欧州の株価動向を見る限り世界景気や企業のファンダメンタルズとは大きく上にカイ離した水準であるということは誰もが認識している。だから、「遅かれ早かれ2番底をつけに行くタイミングが訪れることは間違いない、かつてないほど企業の一株利益が落ち込むのだから、株価がこの水準を維持していること自体おかしい」と考える。ショートポジションを積み上げるなら今しかないと。ところが、株価は下がらない。事前のハードル、マーケットコンセンサスが低すぎるためだ。買い手不在ということは、一部の短期売買を除き、保有株を売ろうというニーズも不在ということ。その結果、売り手が疑心暗鬼のなかで自らの買い戻しによって相場を押し上げてしまうというのが、ここ1カ月にわたる日経平均の値運びではなかったか。
しかも、今回は新型コロナの感染を止めるための人為的な経済凍結によって景気が落ち込むわけで、それを全力でリカバリーする人為的な政策、即ち大型の財政出動及び強力な金融緩和政策という過去最大規模のポリシーミックスが世界的に約束されている。先が見通せない不安が蔓延する一方で、新型コロナのワクチンや治療薬開発のメドが立って完全なる収束が意識されるようになれば、今度はバブルが来るという思惑も底流している。こう考えると、売り方もゆっくり構えてはいられないという理屈になる。
個別に目を向けても新型コロナがすべての業態にダメージを与えるということではない。巣ごもり消費やテレワーク関連の一角などをはじめシステム開発やデジタル投資に絡む企業は商機を捉えるところも少なからず確認されるようになっている。大手ではNEC<6701>が前週末に20年3月期の最終利益を従来予想の650億円から1000億円に大幅上方修正した。「ウィンドウズ7」のサポート終了特需(パソコンの買い替え需要)があったとはいえ、5G商用化に絡む通信機器やテレワーク導入加速を背景とした需要創出にも着目しておくところ。NECは、きょうは一時360円高の4460円まで上値を伸ばす場面があったが、これは他の銘柄を探す際にも重要な手掛かりとなる。関連銘柄としてはNEC系のシステムインテグレーターでNECネッツエスアイ<1973>や電子カルテを手掛けるCEホールディングス<4320>。キーウェアソリューションズ<3799>なども注目してみたい。
また、半導体関連ではシリコンウエハー大手のSUMCO<3436>が1~3月期の利益が計画を上振れポジティブサプライズとなった。この流れで着目しておきたい同関連ではシリコンウエハー容器メーカーのミライアル<4238>。また、半導体基板検査装置の協立電機<6874>などもマークしておく価値がありそうだ。
日程面では、あすは4月上中旬の貿易統計、3月の景気動向指数(速報値)などが注目される。また、海外では4月の米財政収支、米CPI(消費者物価指数)のほか、4月の中国CPI及びPPI(卸売物価指数)などが開示される。(中村潤一)