明日の株式相場戦略=AI関連躍動、エヌビディア・エフェクトで大相場気配
“株は需給”を地で行く強い相場である。今は過去のアベノミクス相場と比較してEPSで割高云々と論じるような段階を超えてしまっている。どこかで反動は出てくるはずだが、それを期待した売り方の粘りを片っ端から引き剥がしていくような、いわば理外の理によって突き進む地合いが続いている。
きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均が続伸し前日のザラ場につけた高値2万659円を上回る場面があった。例によって終盤は伸び悩んだが、慌てて売り急ぐような雰囲気も見られない。新型コロナウイルス感染症に苦しむ米国と、その発生元である中国との関係悪化が、両国間の貿易交渉第1段階の合意の破棄にまで発展するのではないかという懸念もあったが、クドロー米国家経済会議委員長がその可能性について明確に否定したことが伝わり、買い安心感につながった。もっとも、これは実体経済に与えうるこれ以上のネガティブな思惑を取り除いただけで、新型コロナで疲弊した世界経済をプラス方向に導くようなインパクトはない。経済活動が再開されても個人消費の回復には時間がかかる。特に、トラウマが強い欧米では元の状態に戻るのは容易ではなさそうだ。
ファンダメンタルズで株を捉えようとすると“空売り”という投資行動が魅力的に見える。しかし、その考え方を踏み上げ相場の肥やしにしてしまうのが今の地合いだ。その典型例は個別でいえばオリエンタルランド<4661>に市場関係者の目が向いている。営業再開のメドすら立たない今の状況にあって、人間心理として上値を買おうという気持ちはまず起こらない。業績を論じる以前の問題だ。ところが株価は下がるどころか3月中旬を境に下値を切り上げ、今週に入って一気に上放れた。きょうは一時475円高の1万5670円まで買われる局面があり、場合によっては“ビフォーコロナ”の1月15日につけた年初来高値1万6075円奪回も視野に入る位置にある。常識的には理解できないような動きだが、その答えはやはり株式需給にある。現物で保有している人がほとんどで信用倍率は0.4倍。日証金では逆日歩がついている。更に、貸株調達による機関投資家の空売りも入っていることが想定され、需給はマッチ一本で燃え上がるような枯れ切った状態だった。おそらく、人工知能(AI)が火付け役となって買いを仕掛け、売り方自らが上昇相場を作り上げている。
感情に左右されないAIが株式市場を闊歩している。そして皮肉ともいうべきか、ここにきて一躍上値追いを鮮明としてきた銘柄群が他ならぬAI関連である。新型コロナ克服とも密接にかかわる医療ICTはもちろん、オンライン教育、テレワーク、そして自動運転やドローン、更にデジタル通貨などのフィンテック、それら次世代産業と融合してイノベーションの原動力となっていくのがAIだ。直近では米国株市場でAI関連の雄であるエヌビディアが上場来高値圏をまい進しており、この流れが東京市場にも波及してきた。エヌビディアはAI演算能力を20倍まで高めるGPUの新製品を発表しており、データセンター向けで今後高い需要が見込まれることから、株式市場でも熱い視線を集めている。
きょうはシンボルストックであるALBERT<3906>やブレインパッド<3655>が大きく買われたほか、当欄でも継続注目してきたFRONTEO<2158>や日本サード・パーティ<2488>なども高い。しかし、そんなピンポイントで語るような生半可なものではなく、このほかPKSHA Technology<3993>、シグマクシス<6088>、メンバーズ<2130>、インテリジェント ウェイブ<4847>、ホットリンク<3680>、KADOKAWA<9468>、チェンジ<3962>、ザインエレクトロニクス<6769>、フォーカスシステムズ<4662>などおよそ代表的なAI関連が一斉に噴き上げている。
なかでも注目しておきたいのは、業績面でも高評価できる銘柄だ。1月につけた年初来高値703円払拭を目前としているサイオス<3744>はテクニカル的にも需給的にも上値期待が大きい。また、ドーン<2303>も好業績で好需給、4月9日に上ヒゲでつけた戻り高値2310円クリアから2500円ラインをクリアすれば上値は一気に軽くなりそうだ。
日程面では、あすは4月の貿易統計が朝方取引開始前に財務省から開示される。後場取引時間中には4月の全国スーパー売上高が発表される。海外では米国で重要経済指標の発表が相次ぐ。5月の米フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、5月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)、4月の米中古住宅販売件数、4月の米景気先行指標総合指数など。また、トルコ中銀の金融政策決定会合が行われる。(中村潤一)