テンバガーの原石、ニューノーマルで躍進する「超成長株」候補リスト <株探トップ特集>
―コロナ後の社会で進むデジタルシフト、潜在成長力を全面開花させる有望株とは―
東京株式市場はこれまで積み上がっていたショートポジションの解消が全体相場を押し上げる展開にある。足もとは各種テクニカル指標が過熱感を示しているが、世界株高の潮流が押し目形成すら許さない上昇トレンドを演出している。日経平均は今週4日の取引時間中に2万2900円台まで上昇したが、2万3000円大台へあと一歩届かなかった。それでもそれに失望して下値を試すような動きに転じるわけでもない。売り方も戦々恐々だが、買い方も半信半疑であり、市場関係者の見立てでも時価近辺は強弱感が対立しているようだ。来週は週前半に米国のFOMCを控え、週末にはメジャーSQが待つ。高値波乱への警戒感は拭えないものの、引き続き空売り筋の買い戻しが下値を支える展開が想定される。
●勝ち残りをかけた設備投資意欲は旺盛
こうしたなか、“アフターコロナ”で活躍が期待される銘柄を選別する動きが株式市場で活発化している。新型コロナウイルス 感染症の影響で産業界の構図は変わったが、コロナ収束後もかつての風景が完全に戻るということはなく、これまでとは違った世界が開ける可能性が高いとみられている。いわゆる経済のニューノーマル(新常態)である。
いったん収束した後も新型コロナウイルスとの共存が意識される社会では、移動制限や“3密”の回避など経済活動にマイナス圧力がかかるのは仕方のないところであり、企業もこれに対応した経営戦略が求められる時代となっていく。しかし、この制限経済下であってもこれまで以上に商機をつかむ企業、あるいは成長のシナリオを手にする企業も実は少なくない。今週1日に財務省が発表した1~3月の法人企業統計の内容に市場関係者の視線が集まった。金融保険業を除いた全産業ベースの経常利益は前年同期比32%減の15兆1360億円と、リーマン・ショック時を思い起こさせる大幅な落ち込みとなった。しかし、一方でソフトウェアを含む設備投資は4.3%増と増加に転じていた。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性がしきりに言われているが、成長を確保するための勝ち残りをかけた設備投資は、強烈な逆風下においても増勢にあるということが判明した。これは、株式市場の今後の個別株戦略の強力なヒントともなる。
●産業構造のデジタル化で生まれる新潮流
AI ・IoT の活用はもとより、テレワーク、オンライン教育、遠隔医療、キャッシュレス、ロボット、暗号資産などの分野は必然的にスポットライトが当たり、そしてこれらの普及を確かなものとするセキュリティーへのニーズも高まっていくことが予想される。
経済的に大きな試練が訪れた時、その暗闇のすぐ後には新たな時代の黎明が待っていることも多い。2008年のリーマン・ショックを経て、その時に地を這った人材派遣会社の株価は、その後に底値から10倍以上に大化けする銘柄が相次いだ。では、今回のコロナショックはどうか。アフターコロナあるいはウィズコロナの環境によって、産業構造のデジタルシフトが促されることは自明といってもよい。果たして、その流れに乗る大化け銘柄は必ず出てくる。今は投資対象を絞り込むチャンスである。
ニューノーマルに飲まれるのではなく、味方につけることで一段と成長性を際立たせ、中長期的に株価変貌の可能性をはらむ5銘柄を選出した。
●テンバガーの夢乗せる成長モデル5銘柄
◎朝日ネット <3834>
独立系のインターネット接続サービス大手で「ASAHIネット」を運営。接続サービスのクオリティーに評価が高く、テレワークやIoT普及を背景に法人向けで需要獲得が進んでいる。新型コロナの影響でオンライン教育やオンライン株主総会などが話題となっているが、この流れは冠婚葬祭にまで広がる動きがある。中期的にもネットを活用したビジネス環境へのシフトは加速するとみられ、同社の存在が一段と脚光を浴びそうだ。また、クラウド型教育支援サービス「manaba」を展開しており、学習管理システムに加えレポートや評価を蓄積するポートフォリオ機能で高い評価を得ている。業績は2ケタの利益成長が続いており、コロナ禍にあって21年3月期営業利益は前期比12%増の18億円予想と、最高益を更新する見込み。株価は最高値圏にあり戻り売り圧力がない。
◎ヴィンクス <3784>
イオングループ向けを主力に流通業界を対象としたシステム開発を手掛け、コンサルティングからシステム企画・設計・開発・運用とワンストップで対応、大手スーパーやドラッグストア、100円ショップ向けなどの幅広い需要を捉えている。キャッシュレス時代のニーズを捉えたPOS・マルチ決済ソフト、更にマーチャンダイジングシステムではクラウド自動発注システムなどを手掛け顧客開拓を進めている。米セールスフォース・ドットコムとはクラウド技術を活用した連携で協業関係にある。20年12月期営業利益は前期比3%増の17億2000万円と増益見通しだが、1-3月期は前年同期比18%増の7億5500万円と高水準の伸びを確保しており進捗率から上振れ期待がある。
◎ソリトンシステムズ <3040>
セキュリティー対策ソフトと、システム構築を主軸にITセキュリティー部門が売り上げの9割を占めており、国内屈指といえる高い技術力が評価されている。テレワーク分野でも独自ノウハウを生かし、従業員が私物の情報端末などを業務に使うBYOD(ブリング・ユア・オウン・デバイス)にも対応したソリューション「SecureAccess」を展開、既に350社を超える導入実績を誇る。文部科学省が主導するGIGAスクール構想では、強固な無線LAN認証などが行える「NetAttest」シリーズをリリースしており、5月11日からネットワークの安定と安全性を高めた特別モデルの出荷を開始している。20年12月期は新製品開発負担などもあり前期比2%営業増益予想と小幅ながら増益確保。潜在成長力の高さは際立つ。
◎フィックスターズ <3687>
顧客企業のシステムを高速化するソフトを開発し、金融業界や自動車業界を中心に100%近いリピートオーダー率を誇っている。また、各種アニーリングマシンを活用した量子コンピューター導入支援ビジネスを手掛けており、世界初の量子コンピューター商用化に成功したカナダのDウェーブ社と連携するなど同分野の展開力で群を抜く。自動運転向けソフト開発でも高水準の受注を獲得しており、ハードウェア基盤では画像処理プロセッサ搭載演算ボードの量産納入を継続、収益に貢献している。企業のデジタルトランスフォーメーション推進の担い手として中期的な成長期待が強い。開発投資負担などで20年9月期営業利益は前期比20%減の10億5900万円を計画するが、増額の公算も。
◎PCIホールディングス <3918>
自動車向け組み込みソフトの受託開発で高い実績を有し、IoTプラットフォーム関連事業などで業績を伸ばしている。注力するIoT/IoEソリューション事業では、高速で移動する自動車間の通信を可能とするプラットフォームの開発を行っており、自動運転の普及局面で活躍が期待される。また、車載用LSIやFPGAの受託開発など半導体トータルソリューション事業も今後の収益成長を牽引。サイバー攻撃に対応する情報セキュリティービジネスにも注力し時流を捉えている。前19年9月期まで7期連続で増収営業増益を続けているが、今期も5%増収、7%営業増益を見込む高成長企業の典型。業績拡大トレンド鮮明で、早晩2月7日につけた年初来高値1285円(分割修正後株価)奪回が視野に。
株探ニュース