田部井美彦氏【2万3000円台を奪回、コロナショック越えはあるか】 <相場観特集>
―米雇用統計を機に上値追いに拍車、リスクオン相場の様相強まる―
8日の日経平均株価は6日続伸し、2月21日以来となる2万3000円台を回復した。米国の5月雇用統計は予想に反して非農業部門雇用者数が増加するなど、国内外で景気回復への期待が浮上している。市場はリスクオン相場の様相を呈するなか、コロナショック越えに向けた期待も膨らむ。今後の相場の見方を内藤証券・投資調査部長の田部井美彦氏に聞いた。
●「好需給と景気回復期待で上昇続く」「4-6月期決算が転機か」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
足もとの株価の上昇は「好需給」と「景気回復期待」を背景にしていると思う。3月の株価急落時から、公的年金を通じた信託銀行や日銀のETF、それに個人の買いが流入していたが、直近では海外投資家も買い戻しを強めている。この好需給が相場の押し上げ要因に働いている。また、米国など欧米主要国ではロックダウン(都市封鎖)の解除に動くなか、景気拡大期待が膨らんだ。更に、主要国の金融当局は思い切った金融緩和策を実施している。こうしたことが、株式市場が実体以上の上昇を演じる要因となったのだろう。
今週末には先物のメジャーSQがあり、ここを通過すれば需給面の好要因はいったん薄れるかもしれない。ただし、現在の市場はマクロ経済面での悪材料には反応せず、好材料は素直に好感するような状態にある。このような状況下では、6月いっぱいは強めの相場が続く可能性はあると思う。来月中旬頃からの4-6月決算では、厳しい業績見通しが打ち出されることも予想されるが、この点が意識されるまでは強調展開が続きそうだ。
こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均のレンジは2万2500~2万4200円を想定している。今年1月につけたコロナショック前の高値更新もあり得るだろう。
個別セクターでは、景気回復と買い戻しで鉱業、鉄鋼、非鉄など素材株に妙味がありそうだ。また、米長期金利の上昇で銀行株や為替の円安基調で自動車、海運株などの上昇が期待される。
ただし、中長期的にはコロナ禍が社会的変革につながるような銘柄が面白いだろう。テレワークやリモート学習関連で弁護士ドットコム <6027> [東証M]やオプティム <3694> 、EduLab <4427> [東証M]、情報通信で富士通 <6702> やKDDI <9433> 、バイオ医薬品でアンジェス <4563> [東証M]やタカラバイオ <4974> などに妙味がありそうだ。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース