明日の株式相場戦略=SQ直前の嵐、ここからの視点と戦略

市況
2020年6月11日 17時41分

きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均が後場に入り大きく崩れた。米株価指数先物の下げを横目に売りがかさみ、大引けは650円あまりの下げで2万2400円台まで一気に水準を切り下げた。注目されていたFOMCでは、FRBはゼロ金利政策を2022年末まで継続する方針を示した。これは相場環境の流動性確保が想定以上に長期にわたるという点でポジティブ材料だが、一方でイールドカーブ・コントロールの導入を見送ったことで、米金融株には下落圧力が加わった。東京市場の立ち位置で見れば為替のドル安・円高への思惑を警戒するくらいで、過剰流動性相場が今後も担保されるという期待感の方が強く、FOMCの結果は少なくとも日本株を売る材料ではない。しかし、相場は生き物といわれるだけあって一筋縄ではいかない。

今週に入ってから日経平均は3営業日連続、終値で2万3000円台をキープしていた。「高水準に積み上がった裁定売り残を考えれば、相場はそう簡単には下げない」という思惑は確かにあった。ただ、2万3000円台を固めたとしても、ファンダメンタルズからのアプローチなしにその先に目指す高峰は険しいという認識も市場関係者の本音としてあったはずだ。ちなみに前日(10日)は変化日でSQ週の魔の水曜日でもあり、売り方の仕掛けが警戒されたところだが、そこをほぼ無風で通過した、と思った矢先の波乱である。

しかしその前兆はあった。例えば、今週は週初から為替が一貫して円高方向に振れており、最高値圏に突入したナスダック総合指数とは裏腹にリスクオンの流れと逆行していた。また、NYダウとナスダック指数のちぐはぐな動きも連日続いた。そのなか、きょうは前引け時点で日経平均が5日移動平均線を下回っており、終値で株価を戻せなければ5月18日以来の5日線割れとなる状況だった。市場では「裁定売り残が高水準に積み上がっているのは周知の通りだが、SQを前にして今の株価水準ではロールオーバーするにもコストがかかりすぎる。何としても水準を下げたいという思惑があった」(国内ネット証券アナリスト)という。売り方にすれば、追い詰められたコーナーポストで突き上げた渾身のアッパーカットがヒットしたような格好となった。

少し前にも触れたが、全体相場の上昇が加速するなか一部メディアで「持たざるリスク」という言葉が踊り始めたことはやや危険な兆候といえた。「株は需給」であるが、それはあくまでモメンタム相場であり、短期回転を軸とした機動的な売買スタンスが前提となる。対して持たざるリスクというのは、中長期で現物株をポートフォリオに組み入れることを急ぐというコンセプトだ。PERなどの伝統的な株価指標が全く機能しないなかで、コロナ収束後の経済回復シナリオも不確かなまま“我先に”というムードが出てくることは、経験則的にも注意すべき局面ということを示唆している。

ただ、きょうの下げは行き過ぎの是正であって、これでトレンドが転換するという類いの下げではないように見える。ひとことで言えば、先物主導の上昇に対する先物主導の調整。それを象徴するのがファーストリテイリング<9983>の値運びだ。時系列で5月18日から前日6月10日までの株価推移をみれば合点がいく。もはや月次の売り上げ動向など関係ない、日経平均寄与度の最も高い銘柄として先物主導相場の“化身”となっている。そして、同社株のきょうの2720円安も同様で、逆向きのベクトルがSQ算出直前に働いた。

きょうの全体急落が大勢に影響なしとは言わないが、下げても2万2000円台を割る程度で25日移動平均線の上で止まるということを前提に、個別株の押し目に着目したい。ファーストリテとは対照的に、波乱相場の中にあって任天堂<7974>の強調展開がきょうは際立った。JPモルガンのゲームセクターへの強気リポートで、勝ち組筆頭の任天堂に対する株価評価引き上げは、嵐の中にあっても海外マネーの実需買いを誘導したとみられる。この周辺で恩恵を受ける銘柄としてメガチップス<6875>をマークしておきたい。このほか、急動意株が相次ぐバイオ関連株では慶大発バイオベンチャーのヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ<6090>や、イナリサーチ<2176>の押し目に着目。取り扱い説明書製作を手掛け、製薬メーカーからの引き合い旺盛なクレステック<7812>なども面白そうだ。

日程面では、あすはメジャーSQ算出日。また、4月の鉱工業生産指数(確報値)が開示される。海外では6月の米消費者態度指数(速報値・ミシガン大学調査)、5月の米輸出入物価指数。また、欧州では4月のユーロ圏鉱工業生産指数が発表される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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