見いだされた新たな価値、活性化「クラウドファンディング」の明日 <株探トップ特集>
―広がる活用シーン、危機の時代の資金調達インフラへ―
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業要請で打撃を受けた飲食店やライブハウス、宿泊施設などを中心に、クラウドファンディング(CF)を利用する動きが広がりつつある。政府も持続化給付金をはじめとする事業者向けの支援策を相次いで打ち出しているが、スピードが遅く、手続きも煩雑との批判が多い。
このような行政の支援に代わり、急場を乗り切るための資金調達インフラとして注目度が高まっているのがCFだ。コロナ禍で苦境に立たされる飲食店やサービス業が公的な補助金が届くまでの手元資金に充当するばかりではなく、最近では投資回収に時間がかかるスタートアップなどでも活用が本格化している。こうした動きは、認知度の上昇とともにポストコロナで更に広がりをみせると予想され、関連銘柄には注目が必要だ。
●クラウドファンディングとは
CFは、インターネット経由で個人から小口の資金を集める仕組みで、募集側があらかじめ調達の目標額を設定してインターネットを通じ支援を募り、集まった資金のうち、手数料を差し引いた額を自由に使えるというもの。将来の企業価値を見込んだ投資にとどまらず、商品提供などの見返りを見込める種類もある。
仕組み自体は新しいものではなく、海外ではアートの分野などで広く知られていたが、インターネットの広がりとともに普及が加速した。国内では2011年3月の東日本大震災後に、1次産業やサービス業に広がった経緯がある。
これまで、CFの活用はベンチャー企業や中小・中規模事業者などが中心とみられていたが、ここ数年は電機や玩具、製薬企業などの大手企業による活用も増えている。支援を募るという目的のほか、まだ一般販売が決まっていない商品の市場性を見極めるためや、一般販売前にアピールして話題の拡散を図る需要調査としての側面も大きくCF市場を活性化させている。
●認知度の高い「購入型」「寄付型」CF
認知度が高まりつつあるCFだが、大きく分けると「購入型」「寄付型」「融資型」「投資型」の4つの種類がある。
最も広く認知されていると思われる「購入型CF」は、あるプロジェクトに対して支援者が出資する仕組みで、支援者は出資する代わりに商品やグッズ、サービスを得ることができる。募集目標金額が達成した場合のみプロジェクトが成立する「All or Nothing型」と、目標金額に達しなくてもプロジェクトが成立する「All In型」の2種類があり、「CAMPFIRE」「READYFOR」などのサービスが知られている。
また、「寄付型CF」は、購入型と同様にあるプロジェクトに対して、支援者が出資する仕組みだが、リターンとしての商品やサービスは基本的に発生しない。被災地支援など、社会貢献の一環として利用されることが多く、支援者は寄付として支援を行うことが目的で、「Readyfor Charity」や「A-port寄付型」が広く知られている。
●購入型大手のマクアケに注目
クラウドファンディングの関連銘柄はまだ少ないものの、「購入型」「寄付型」の注目銘柄では、購入型CF大手の一角である「Makuake」を運営するマクアケ <4479> [東証M]が挙げられる。足もと業績は、掲載数及び会員数が伸びていることを背景に、応援購入総額が増加し、それに伴い業績も拡大。上期(19年10月-20年3月)単独決算で営業利益は2億3900万円となり、通期計画に対する進捗率は50.1%と順調に推移している。また、韓国最大級のCF「Wadiz」に続き、19年12月には、アリババグループのAlifish社の「造点新貨」と業務提携し、利用者の相互紹介を行うとしており、成長性にも期待が持てる。
アジャイルメディア・ネットワーク <6573> [東証M]は、台湾最大級のクラウドファンディング「flyingV」を運営する昂圖と業務提携し、日本及び台湾における市場進出や海外テストマーケティングの支援を行っており注目だ。
●投資的意味合いの強い「融資型」「投資型」CF
「融資型CF」「投資型CF」は、前述の2つの種類に比べて投資的な意味合いが強くなる。「融資型」は、資産運用したい個人(投資家)から小口の資金を集め、それを大口化して借り手企業に融資する仕組みで、利回りの分配など金銭的リターンを得ることができる。「貸付型CF」「ソーシャルレンディング」の名称でも知られており、融資先はさまざまで、収益性不動産や再生可能エネルギーなどが増えている。ロードスターキャピタル <3482> [東証M]グループの不動産投資クラウドファンディング「OwnersBook(オーナーズブック)」やプロパティエージェント <3464> の「Rimple(リンプル)」、SBIホールディングス <8473> グループの「SBIソーシャルレンディング」などが有名だ。
一方の「投資型」は、主にベンチャー企業などが資金調達の方法として、未公開株を提供する代わりに資金を募る仕組みで、投資家は、出資先企業の詳細な情報を確認した上で投資を行い、株式や分配金、その他のリターンを受け取ることができる。「Angelbank(エンジェルバンク)」「FUNDINNO(ファンディーノ)」が知られている。
●CF事業強化を図るZUUに注目
「融資型」「投資型」で注目はZUU <4387> [東証M]だ。19年11月にCOOL SERVICESを子会社化しソーシャルレンディング事業に参入したほか、同年12月には株式投資型CFのユニコーン(東京都港区)と資本・業務提携(ユニコーン株式の49.13%を所有)し、顧客の相互紹介などを通じCF事業の強化を図っている。21年3月期は、プラットフォーム構築やSaaS開発の人材と金融サービスのシステム開発関連への投資を行うものの、「ZUU online」を中心とする自社メディアのユーザー層の拡大などによるトップラインの成長で営業損益は黒字転換を見込む。
SAMURAI&J PARTNERS <4764> [JQG]は、傘下のSAMURAI証券が「SAMURAI FUND」を運営している。同社の第1四半期(1-3月)営業損益は7400万円の赤字(前年同期2200万円の赤字)と赤字幅が拡大したが、現在は「SAMURAI FUND」のブランド力強化に向けた投資が先行する段階と位置付けており、今後の展開が注目されている。
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