国内株式市場見通し:下値抵抗力を試す日経平均
■日経平均23000円回復後に波乱
前週の日経平均は、23000円台回復後に波乱の展開となり4週ぶりに下落した。雇用者数が予想に反して大幅に増えた5月雇用統計を受けて、V字回復への期待が高まるなか5日のNYダウは5日続伸。この流れを好感して、週明け8日の日経平均は前週末比314.37円高の23178.37円と高値引けとなるなか6日続伸した。一時1ドル=109円台後半まで振れた円安なども支援材料となった。8日のNYダウは6日続伸し、ナスダック総合指数も過去最高値を更新したものの、9日の日経平均は7営業日ぶりに反落。米長期金利の低下とともに為替相場が円高方向に振れたほか、前日に節目の23000円台を回復したことで利益確定売りが先行した。9日のNYダウが7営業日ぶりに反落すると、10日の日経平均も一段安でスタート。ただ、NYダウ先物の時間外取引での上昇が支援材料となり、前場中ごろからプラス圏へ浮上し小反発で大引けた。10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場の予想通り、当面の実質ゼロ金利政策継続の方針が示された。ナスダック指数は史上初の1万ドル大台を上回って引けた。11日の東京市場は、4-6月期大企業全産業における景況判断指数の悪化が嫌気されたほか、円高などを受けて、朝方から売りが先行。日経平均は後場に下げ幅を広げ4日ぶりに23000円台を割り込んで大引けた。11日のNYダウは1861.82ドル安と、3月9日の2013.76ドル安に次ぐ過去4番目の下落幅をみた。FRB(米連邦準備制度理事会)が悲観的な景気見通しを維持して経済のV字型回復期待が後退したほか、ウイルス感染第2波を警戒した売りが先行した。12日の日経平均も米国株安を嫌気して続落。朝方寄り付き後に前日比685.98円安まで下げ22000円台を割り込む場面もあった。ただ、前日からの下げピッチが速いこともあり、大引けにかけては下げ幅を縮小させ、日経平均は167.43円安の22305.48円まで持ち直した。12日のNYダウは477.37ドル高と反発。6月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想を上回ったことなどが好感された一方、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が感染第2波に対する警告を発したことが警戒され、一時マイナスとなるなど荒い値動きとなった。
■新型コロナ感染第2波の動向が焦点
今週の日経平均は落ち着きどころを探る展開となりそうだ。日米株式市場ともに前週は週後半にかけて波乱の展開となった。米国では新型コロナウイルスの2次感染が広がっていることが懸念されて、V字回復期待が後退しリスクオフの展開に転じた。パウエルFRB議長は10日、新型コロナウイルスの感染拡大により労働市場が回復するまで景気刺激策を継続する意向を示したが、経済回復が遅れるとの懸念が増す形となった。東京市場では、相場の下支え要因として働いていた為替の円安が円高傾向に変化したほか、12日のメジャーSQに向けての買い戻しが一巡して、需給面でも転換期を迎えた。また、日経平均はテクニカル的にみても、累積売買代金が多く利益確定売りが出やすい価格帯である23000円台を回復したことで、一段の上値追いにブレーキがかかりやすい。米国などでの感染第2波拡大の懸念が抑えられるかが、ここからの相場センチメントを大きく左右してこよう。このほか、11月の米国大統領選挙への影響も警戒される。一方、15日から2日間の日程で日銀金融政策決定会合が予定されているが、相場に対してネガティブな材料が出てくることは予想されていない。15日に中国、16日に米国の5月小売売上高の発表があるものの、米雇用統計、FOMC、メジャーSQといった金融・相場イベントを通過し、スケジュール面で見た波乱要因はここからは少ない。新型コロナウイルスの感染拡大について都民に警戒を呼び掛ける「東京アラート」が11日に解除され、日経平均は下値抵抗力を試す展開に転じてくることになりそうだ。
■株主総会シーズン入りで個別物色
物色的には、円高傾向がハイテク株の頭を抑える可能性がある。18日の大引け後には5月半導体製造装置販売高の発表もあり、半導体関連株の動向がひとつの関心事となる。一方、ここから月末に向けて3月期企業の株主総会が活発化してくる。一般的に総会シーズンの相場は堅調というアノマリーがあり、個別株物色が高まりやすい傾向がある。物色も方向性を模索する展開が予想される。マザーズやジャスダックでは感染第2波の懸念からバイオベンチャー関連株が売買代金上位に増えてきた。翌週24日からのIPO再開を見据えて、直近IPO銘柄にも物色人気が巡ってくる可能性がある。
■日銀金融政策決定会合、米・中小売売上高、国会会期末
今週の主な国内経済関連スケジュールは、15日に日銀金融政策決定会合(16日まで)、4月第三次産業活動指数、16日に黒田日銀総裁会見、17日に5月貿易統計、5月訪日外客数、18日に5月首都圏新規マンション発売、19日に4月27日、5月22日開催の日銀金融政策決定会合議事要旨、5月消費者物価がそれぞれ予定されている。一方、米国など海外主要スケジュールでは、15日に中国5月小売売上高・工業生産・都市部固定資産投資、米6月NY連銀製造業景気指数、16日に米5月小売売上高、米5月鉱工業生産・設備稼働率、米4月企業在庫、17日に米5月住宅着工件数、米5月建設許可件数、18日に米6月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米5月CB景気先行総合指数、19日に米1-3月期経常収支の発表が予定されている。
《FA》