米国株式市場見通し:値動きの激しい展開か
3月の安値からの株価回復ペースが一段落する兆候が見られる。投資家の恐怖心理の度合いを示すとされるVIX指数(変動率)は危機前の水準までいったん低下したが、再び急伸。雇用や景気への不透明感が強く、投資家が依然神経質であることが確認された。資金流動性が高まっていることから、当面は激しい値動きとなることを覚悟する必要があるだろう。
今後は、経済活動再開への期待から、再開後の回復ペースに投資家の焦点が移行し、右肩上がりの上昇は一服する可能性がある。カジノ運営のウィンリゾーツは営業再開したものの顧客の入りが思わしくなく、マカオの売り上げ回復が弱いと指摘した。中国や米国のほとんどの店舗で営業を再開したスターバックスも損失の拡大を警告しており、ウイルスが消費者マインドに引き続き重くのしかかっている証拠となっている。
同時に当局の大規模刺激策が引き続き下値を支えることから、再び安値を試す可能性は低いだろう。ムニューシン財務長官は政府が第4弾救済策に前向きで、特にウイルス被害を直接的に受けた産業に的を絞った救済をすべきとの考えを示した。また、感染第2波が起きたとしても経済を再び閉鎖することはないとしている。FRBも6月FOMCで実質ゼロ金利や無制限の資産購入政策維持を決定、回復支援のために全手段を講じると断固とした姿勢を再表明した。少なくとも今後2年間、ゼロ金利を維持する姿勢を示しており、FRBの大規模緩和が継続する限り、今後も株式相場の上昇を後押ししていくと考えられる。パウエル議長は追加刺激策がなければ経済に長期的な損傷を残すことになると警告。議長は16日に上院銀行委、17日に米下院金融サービス委員会で半期に一度の証言を予定している。議会に送付される金融政策報告の中では、今後の軌道の並外れた不透明性や短期的に金融セクターにかなりの脆弱性があることが指摘されている。さらに、家計や企業の脆弱性が長引く可能性を警告しており、証言での質疑応答に注目が集まる。
経済指標では、6月ニューヨーク連銀製造業景況指数(15日)、5月小売売上高(16日)、5月鉱工業生産・設備稼働率(16日)、6月NAHB住宅市場指数(16日)、5月住宅着工件数・建設許可件数(17日)、新規失業保険申請件数(18日)などが発表予定。5月鉱工業生産や6月ニューヨーク連銀製造業景況指数で製造業活動が回復しているかどうかを確認したい。また、5月小売売上高が消費回復ペースを見極める良い機会となるだろう。4カ月ぶりの回復が期待されている。
企業決算では、ソフトウェア大手オラクル(16日)、住宅建設のレナー(16日)、金融サービスのH&Rブロック(16日)、スーパーマーケット大手クローガー(18日)、クルーズ船運営のカーニバル(19日)、中古車販売のカーマックス(19日)などの発表が予定されている。クローガーは外出規制が売上に貢献したと見られるものの、カーニバルは運航停止による収益の大幅減が警戒される。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》