明日の株式相場戦略=全体波乱でもしたたかに上がる株

市況
2020年6月15日 17時40分

週明け15日の東京株式市場は、日経平均が後場に入り大きく崩れ、下値を探る展開を余儀なくされた。日経平均株価は結局774円安と予想外の急落となりほぼ安値引け。現時点で大勢波動が中期下降トレンドに転じたとはみていない。ただ、これまでの戻り相場が企業業績などファンダメンタルズ面からのアプローチを全く排除したなかでの上昇だっただけに、当然ながら反動はその分深くなっても不思議はない。買いポジションを積み上げず、機動的な売買で対処するというリスク管理はこういう局面で生きる。

これまでFRBが旗振りを担う過剰流動性相場に対する信頼はあった。財政ファイナンスに踏み込むパウエル議長の別人のようなスタンスの変化はマーケット関係者の耳目を驚かせたが、その背景にはここメディアで俎上に載ることも多くなったMMT(現代金融理論)があるとされる。自国通貨を発行する政府は債務不履行に陥ることはない。必要なだけお札を刷ればよいのだから。これが、売り方に対する水戸黄門の印籠のようなインパクトでコロナ禍に逆行して上値を突き進む株式市場を肯定していた。ただ、市場関係者によれば「MMTはともすれば自国通貨を無尽蔵に発行できるというような錯覚を呼びがちだが、インフレ率2%に達したら即取りやめるという前提に根付いたものである。いうまでもなく悪性インフレ発祥の種となっては元も子もなくなるわけで、自ずと限界がある」(国内証券マーケットアナリスト)と指摘する。

過去最高水準の裁定売り残が暗示していたように前週末のメジャーSQまでは株式需給面から下値は岩盤であるという印象が強かった。それがゴール目前で前倒し的に波乱が訪れたことで強気相場のコンセプトにひびが入った。SQ通過後の今週はひとつの正念場といえたが、きょうの下げは想定されたシナリオとしては最悪でかなり厳しいものとなってしまった。あすに結果発表を控える日銀金融政策決定会合は現状維持が濃厚、黒田総裁の記者会見で予想されるハト派的なコメントも半ば織り込み済みで相場に与えるポジティブな影響は限定的であろう。更にFOMCについても、次の開催は7月末で当面は金融面での政策的なフォローは期待しにくい。ただ、「FRBに期待される政策としてはイールドカーブ・コントロールの導入、量的緩和の拡大、フォワードガイダンスの強化(インフレ率など数値目標の設定)などがあるが、このうち量的緩和の拡大についてはFOMCを待たずして状況に応じて発動することができる」(国内生保系エコノミスト)。今後、米国では新型コロナウイルスの感染第2波の状況をにらみつつ、政策催促相場の色を強める展開となりそうだ。

東京株式市場も投資家のマインドが押し目買いから戻り売りに変わっており、しばらくは下値を探る展開を強いられるのも仕方ないところ。とはいえ、こういう局面でもしたたかに値を上げる銘柄は存在する。きょうの相場は個人投資家の見切り売りがかさんだと解説されているが、先物主導で下げた部分が大きく、東証1部の全体売買代金は2兆3000億円台にとどまっていることをみても、狼狽売りが噴出したような形跡はみられない。

きょうは新型コロナウイルス感染拡大初期に人気化した除菌剤や医薬品卸関連銘柄にスポットが当たった。ニイタカ<4465>や大木ヘルスケアホールディングス<3417>などに投資資金が流れ込んでおり、これは今後の相場を見るうえでもヒントとなる。注目したいのはウェーブロックホールディングス<7940>。新型コロナ対策でスーパーのレジなどで透明なビニールシートが導入されているが、同社はこのビニールシート(タフニール)を手掛けている。更に同商品は不燃性もしくは難燃性の物への代替ニーズが高まる方向にあり、同社はこれにいち早く対応して来るべき2次的需要に備えている。PER6倍台、PBR0.5倍台、配当利回り4.3%はバリュー株の側面からも格安といってよさそうだ。

このほかでは、きょうは長い上ヒゲをつけてしまったが、投資資金の流入に勢いがあるネクストウェア<4814>や、大陰線を引いたとはいえ5日移動平均線近辺で上昇トレンドを維持するデータセクション<3905>などに強さを感じる。

日程面では、あすは日銀の金融政策決定会合の結果発表が注目される。海外では、6月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景況感指数、6月の全米住宅建設業協会(NAHB)の住宅市場指数、5月の米小売売上高、5月の米鉱工業生産指数・設備稼働率、4月の米企業在庫などが焦点となる。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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