明日の株式相場戦略=AI取引が演出するロデオ相場

市況
2020年6月16日 17時27分

きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均が驚異的ともいえる戻り足をみせた。大引けは1051円高で久々の1000円超え。値上がり銘柄数2104と実に東証1部銘柄の97%が上昇し、前日とは真逆の展開でリスク選好ムード一色に包まれた。

前日の774円安はともかく、前週後半からの3営業日合計で1600円近い下落をみせていたわけで、ここでいったん切り返しても不思議のないところではある。それでもこのロデオマシンさながらの荒い値動きは人間の理解を超えており、乗りこなすのは相当な胆力が必要となる。一つ言えるのはどんなに激しくてもこれは波の上下動であるということ。現時点で新たな潮の流れ(トレンド)は発生していない。つまり本当に株価の方向性を左右するような材料は出ていないということだ。仮に下降トレンドに移行するとすれば今の過剰流動性相場に何らかの変化が出た時で、それまでは雑多なニュースフローに反応したAIアルゴリズム取引がロデオ相場を演出する。それに対し人間である投資家は、若干の距離を保ちながら目を慣らしておくよりない。

前日の日経平均の急落は米国での感染第2波を警戒するムードのなか、取引時間中の米株価指数先物の下げをみてそれに追随したものだった。その後、日本時間昨夜から今朝にかけて米国株市場ではFRBによる個別企業の社債買い取り発表でNYダウ、ナスダック総合指数ともに続伸した。前日の昼間に見ていた先物とは逆の方向に進んだのだから、東京市場も買い戻されてよい理屈ではある。加えて、きょうの後場は米トランプ政権が1兆ドル規模のインフラ計画を検討しているという報道が、アルゴ取引のリスクオンのスイッチを入れる格好となった。しかし、冷静に考えればFRBによる個別企業の社債購入もトランプ政権の巨額インフラ支出も降って湧いた目新しいポジティブ材料ではない。少なくとも人間であれば二番煎じの材料でやみくもに買い進むことは躊躇するはずだが、アルゴは問答無用で買いなのである。

後場寄りに日経平均は940円高と前場終値から230円近くギャップアップしてのスタートとなり、その後に上げ幅は1000円以上に広がった。これで明日以降はノンストップ戻り相場に突入かというと、おそらくそういうものでもないだろう。予測は難しくその時の地合いに対応していくしかない。マーケットを闊歩するAIとムキに戦うことなく、アバウトな人間の感性で緩めに戦う。基本的に2万1000円台前半から2万3000円台前半の2000円のレンジを往来するボックス相場のイメージで見ておくのが分かりやすい。

個別株については、きょうは全面高で見えにくいが、目を凝らすと物色の流れに微妙な変化がみられる。ウィズコロナ環境が続くとの認識が浸透するなかで、投資家マインドは新型コロナの感染を回避する方策とそこで商機をつかむ銘柄に向いているようにも思える。ニイタカ<4465>が一時5000円台まで上値を伸ばし上場来高値を更新したほか、前日取り上げたウェーブロックホールディングス<7940>はストップ高に買われた。ウェーブHDは不燃性のビニールシートで今後の需要を捉えるほか、オフィスの間仕切りを手掛けていることもポイントだ。オフィス環境のコロナ対応ではオフィス移転支援や内装工事を行っているフォーバル・リアルストレート<9423>を新たにマークしたい。同社の場合、間仕切りは当然として、ウイルスの感染原因の約8割を占めるといわれる接触感染に対応し、独自新技術でウイルスを無力化し接触感染を防止する。また、中京医薬品<4558>も再注目。配置医薬品の大手で除菌製品などを手掛け2月に1600円近くまで値を飛ばした経緯があるが、首からぶら下げて二酸化塩素の酸化パワーでウイルスを除去するエアーマスクが旺盛な需要を捉えている。会社側も「売れ行きは好調」としており、「エアーマスク スペースクリーン」などの派生商品も合わせ今後改めて脚光を浴びる可能性がありそうだ。

このほか、システム開発・ITソリューション関連ではキューブシステム<2335>やノムラシステムコーポレーション<3940>などがコロナ前の水準を回復しており、大勢2段上げ前夜の気配が漂う。また、半導体関連ではここまで継続的に追ってきた野村マイクロ・サイエンス<6254>がやはり強く、依然として目が離せない。

日程面では、あすは5月の貿易統計、5月の訪日外客数など。海外では5月の米住宅着工件数、5月の米建設許可件数など。米20年国債の入札も予定される。このほか、パウエルFRB議長が下院金融委員会で議会証言を行う。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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