明日の株式相場戦略=SBGの異彩高とウィズコロナ勝利の法則
きょう(9日)の東京株式市場は日経平均が3日ぶりに切り返しに転じた。日銀による“サプライズETF買い”観測なども取りざたされるなか、一時は240円あまりの上昇をみせる強さを発揮したが、後場後半は上げ幅を縮小した。あすはオプションSQ算出日であるとともに、ETF決算に絡む分配金捻出を目的とした売り圧力が現先合わせて4000億円強生じるとの見方があり、きょうは心理的にも積極的な買いを入れにくい日であった。終盤はヘッジファンドの先物売りなどを浴びながら日経平均が90円高で着地したのは上出来の部類かもしれない。
もっとも、ソフトバンクグループ<9984>とファミリーマート<8028>の2銘柄で日経平均を115円程度押し上げており、この2銘柄を除けば実質マイナス圏の着地だったことになる。TOPIXを見れば前日比横ばいで引けており、これがきょうの相場の全体像に近いともいえる。
ソフトバンクGはまさに異彩の強さで、大上段に振りかぶっての自社株買い戦略が奏功したとはいえ、コロナ禍の只中で20年ぶりの高値圏に浮上するのはなかなか想定しにくい展開であり、結果的に空売り筋の仕掛けを肥やしにしてしまった底力には脱帽するよりない。直近データでは信用残、証金残ともに売り買い拮抗、これに株券を調達しての空売りが乗っているとすれば、踏み上げ相場の終着点はまだ先かもしれない。
また、ファミマは伊藤忠商事<8001>による完全子会社化でポジティブサプライズとなったが、買い付け価格2300円にはきょうのストップ高ではまだ届かない。これもきょうの株式市場には強力な援軍となった。
引け後はファーストリテイリング<9983>の決算が話題となっていた。今8月期の最終利益を減損損失などにより150億円ほど減額修正したが、市場では「投資家目線で見た場合、好材料とは言えないけれど悪材料としての認識も持たれないのではないか。想定を超えるような修正ではなく、下値リスクは限定的といってよい」(準大手証券ストラテジスト)という見方が示されていた。ファーストリテについては「ユニクロ」の夏物商品が好調で6月の月次販売動向が前年同月比26%増と4カ月ぶりにプラス転換したこともプラスの思惑として働く。
個別では新型コロナウイルス耐性の強い銘柄を攻めるというのが勝利の法則となる。きょうは取引時間中に東京都でのコロナ感染者数が220人以上確認されたと伝わり全体相場の気勢を削いだが、これが悪材料として働かない銘柄も数多く存在する。デジタルトランスフォーメーション(DX)やテレワーク、ゲーム・動画、オンライン消費、バイオ、防疫関連といったところだが、これらのテーマから派生する裾野は意外と広い。
例えば企業のテレワークの導入が加速的に進むなか、セキュリティリスクに対する意識も高まっているが、その関連として次世代ファイアーウォールなどを手掛けるテクマトリックス<3762>は注目できる。クラウドサービスを支えるうえで必要な負荷分散装置の需要も旺盛であり、株価は調整局面を経て出直る兆しをみせている。また、目先下値を探っている日鉄ソリューションズ<2327>も拾い場が近づいている感触。クラウドやAIに重心を置き、DX関連の人材育成のほか、仮想デスクトップなどテレワーク関連の需要取り込みで業容拡大の余地がある。中期的な投資対象として着目したい。
このほか、あさひ<3333>は通勤時の混雑を避ける自転車の需要拡大で商機が見込める。また、タッチレス社会のセキュリティーとして普及に勢いがつきそうな顔認証関連では、業績面での割り切りは必要ながら株価低位のネクストウェア<4814>もマークしてみたい。テーマ性が再燃している巣ごもり消費では、ゲーム関連でコロプラ<3668>やKLab<3656>あたりに出遅れ修正妙味がある。
日程面では、あすは株価指数オプション7月物のSQ算出日にあたる。また、朝方取引開始前に日銀から6月の企業物価指数が開示される。海外では6月の米生産者物価指数が発表されるほか、シンガポール総選挙の投開票が行われる。
(中村潤一)