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2020年7月11日 8時30分
市況

植草一秀の「金融変動水先案内」 ―コロナ警戒論とコロナ軽視論の戦い

第38回 コロナ警戒論とコロナ軽視論の戦い

●東アジアのコロナ被害

コロナショックで世界の株価が暴落しました。下落率は30%から50%程度。10年に一度の大規模調整が生じたと言えます。しかし、3月下旬から各国株価が猛烈な反発を示しました。暴落のあとには反動で株価が急反発することが多いのですが、今回の場合は反発が極めて大幅になりました。 日経平均株価は1月17日の2万4115円から3月19日の1万6358円まで32.2%下落しました。その後、NYダウの急反発に連動するかたちで日経平均株価も反発して、6月9日には2万3185円をつけました。下落幅の88%を回復したことになります。

このまま、下落前の価格を更新するのではないかとの強気の見方もありましたが、6月初旬を境に下落基調に転じています。筆者が執筆している会員制レポートでは6月初旬からの反落を予測していました。予測通りの株価反落が生じています。

コロナショックが世界に与えた影響は計り知れません。人々の行動様式が激変しています。それでも東アジアではコロナウイルスの被害が相対的には軽微に抑制されています。東アジアで検査がもっとも実施されているのはシンガポールです。人口100万人当たり15万人に検査が行われています。シンガポールの感染者数は多いのですが、感染者のなかで死亡した人は26人にすぎず、致死率は0.057%にとどまっています。

●再拡大する日本の感染者数

欧州で検査が多く実施されているのは英国です。100万人当たり17万人の検査が行われています。この英国のコロナ致死率は15.5%です。シンガポールの270倍です。日本のコロナ対応は失敗の連続でしたが、東アジア特有の極めて低い致死率のおかげで大惨事を免れています。しかしながら、ここに来て、感染再拡大が明確になり始めています。

アップル社が人の移動データを公表しているのですが、人の移動指数を3週間ずらして東京都の新規感染者数と比較すると、驚くほど連動していることが分かります。感染してから感染が確認されるまでの時間差は2週間ではなく3週間であると考えられます。

安倍内閣が3月19日の専門家会議を受けて学校再開宣言を出すなどの対応を示したため、3月20日頃に人の移動が急拡大しました。その影響で4月10日頃に感染者が急増しました。ところが、3月24日に東京五輪延期が正式に決定され、人々の行動が急激に抑制されました。人の移動が最小になったのが5月5日です。その結果、新規感染者数が5月下旬に最小になったのです。

しかし、安倍内閣や小池都知事が行動抑制緩和を主導した結果、人の移動が急激に再拡大し、その結果、現在の感染者数急増がもたらされています。

●コロナ封殺国の株価反発

東アジアではコロナ致死率が極めて低いため、直ちに重大な問題が発生する可能性は限定的ですが、高齢者では重篤化するケースが少なくないため、今後の状況変化に最大の警戒が求められることになります。とりわけ注意しなければならないのは、東アジアでもコロナ致死率が急上昇する可能性がゼロとは言い切れないことです。コロナウイルスの変異のスピードが速く、日本で強毒性ウイルスの感染が拡大するリスクを否定し切れません。

世界の株価動向を見ると、人口当たりコロナ死者数が多く、致死率が高い国では株価反発力が弱くなっています。逆に、人口当たり死者を最小に抑制することに成功した国や地域では株価反発力が強くなっています。

台湾の株価は100%以上の回復を示しました。韓国株価も93%の回復を実現しています。中国では株価回復率が168%に達しました。日本の株価回復率は88%で高いのですが、これは東アジア特有の要因でコロナ死者が抑制されているためだと考えられます。

安倍内閣は10月総選挙の可能性を念頭に置いていると見られ、この日程に合わせて経済活動の拡大を強引に推し進めていると見られるのですが、本末転倒と言えるこの考え方が大きな災厄をもたらすことが強く心配されます。

●経済拡大優先策は吉と出るのか

コロナ問題表出が米国の大統領選と重なることが果たして偶然と言い切れるのでしょうか。疑問は残ります。コロナショックで最大の打撃を受けているのはトランプ大統領であるとの側面を否定し切れません。昨年10月18日にニューヨークで開かれた「イベント201」でコロナ・パンデミックが事前にリハーサルされていたことも注目されています。

トランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領は「コロナはただの風邪」のスタンスを採用しています。東アジアのコロナ致死率がすべてのコロナウイルスにあてはまるのであれば、この主張にも一理ありますが、欧米のコロナ致死率を踏まえる限り、「ただの風邪」論は現実のリスクを軽視し過ぎるものであると思われます。

それでもトランプ大統領は11月3日の投票日に向けて、経済活動拡大、成長率と株価引き上げに突き進む可能性が高いように見られます。これと類似しているのが安倍内閣のスタンスです。コロナ感染拡大を放置して経済活動拡大を優先する戦術が効を奏するのか。それとも、強引な経済活動拡大策がより大きな代償をもたらすことになるのか。

予断を持たずに慎重に見極めることが必要になっています。コロナがどのような起源を持つのかはともかく、コロナウイルス感染症が重大な問題を有していることは否定しがたい事実です。経済論理優先の強硬論には大きなリスクが付随している点を重視しておく必要がありそうです。

(2020年7月10日記/次回は7月25日配信予定)

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