和島英樹の「明日の好悪材料Next」~第9回
好調な半導体、底堅い人材関連の一方で…
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
【今回チェックした「明日の好悪材料」記事一覧】
7月17~21日は材料の明暗が分かれた。好調な半導体、底堅い人材関連の一方、コロナ影響で遊技機関連や航空関連がさえなかった。量子コンピュータの材料は中長期的に持続する公算もありそう。
7月17日分 ゲンダイエージェンシー<2411>
■好悪材料~4~6月期(1Q)経常は赤字転落で着地
パチンコ店の広告取り扱い専業首位。「パチンコ業界の電通」の異名を持つ。チラシなど紙媒体からネット活用にも展開する。
2021年3月期の第1四半期の売上高は10億4600万円(前年同期比63.9%減)、営業損益は3億4600万円の赤字(前年同期は1億3700万円の黒字)となった。新型コロナウイルス感染拡大で、顧客のパチンコ業界が4月7日(当初7都府県、4月16日から全国に拡大)に発令された政府の緊急事態宣言に基づく各都道府県からの休業要請を受け、大多数のパチンコホールが休業する事態となった。
3月から全国のパチンコホールで、集客を目的とした広告宣伝が自粛され、広告需要が大きく落ち込んだ。一部のパチンコホールが自粛要請にも関わらず営業を続けたことも業界のイメージダウンにつながったとの見方もある。子会社を通じて行っているキャンピングカーレンタルも外出自粛で利用者が低迷。パチンコ広告については、会社側によれば6月に入ると広告宣伝が段階的に再開されているという。
■『株探』プレミアムで確認できるゲンダイエージェンシーの四半期業績の成長性推移
通期予想に変更はなく売上高68億5000万円(前期比38.4%減)、営業損益は6億5000万円の赤字(前期は4億6000万円の黒字)を計画している。パチンコホールは「3密」になりやすく、顧客の急速な回復は期待しにくいと思われる。
パチンコ機製造大手のSANKYO<6417>、パチンコ、パチスロ機大手の平和<6412>、パチンコ店向け機器大手のマースグループホールディングス<6419>、パチンコ機向け描画表示のアクセル<6730>などにも注意を払う必要がありそうだ。
7月17日分パソナグループ<2168>
■好悪材料~今期経常は2%減益へ
人材派遣の先駆的存在で、業界3位。幅広い業種への人材派遣のほか、業務を外部に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、人事コンサル、転職支援などにも展開する。
20年5月期は売上高3249億8400万円(前期比0.6%減)、営業利益105億7700万円(同11.8%増)となった。新型コロナ感染拡大の影響で人材の動きが鈍る影響があったものの、企業の働き方改革推進や生産性向上意識の高まりもあり、業務の一部を外部に委託するBPOサービス活用のニーズが高まった。損益はエキスパートサービス(人材派遣)の粗利益率改善も寄与している。
21年5月期は売上高3100億円(前期比4.6%減)、営業利益100億円(同5.5%減)、1株利益63.9円を計画している。配当は年19円を据え置く方針。新型コロナウイルスの収束時期や第2波の発生懸念で不透明感の強い状況にあることで慎重に見積もっているもようだ。
■『株探』プレミアムで確認できるパソナグループの業績修正履歴
注:「修正方向」について、矢印は売上高、営業益、経常益、最終益、修正配当の順に修正した方向を示します。 「↑」:上方修正、「↓」:下方修正、「→」:変更なし、「-」:比較できず。修正配当は、株式分割・併合などを考慮した今期配当に対する相対的な実質配当。売上高、利益項目、配当の欄における「-」は、非開示もしくは未定。また配当欄において、「*」は株式分割・併合などを実施した期を示し、「#」は今期に株式分割・併合などの実施予定があることを示す。
コロナでの働き方改革もあり、既存事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、派遣スタッフが在宅で勤務できる「テレワーク派遣」のサービスや教育・研修のオンライン化、在宅型のコールセンター事業の推進などを実行していく方針。
新型コロナの拡大で人材派遣事業への影響が懸念されていたが、今のところ限定的な状況ともいえそうだ。業界トップのリクルートホールディングス<6098>を始め、大手ではパーソルホールディングス<2181>、アウトソーシング<2427>、テクノプロ・ホールディングス<6028>、UTグループ<2146>などの動向も見ておきたい。
7月20日分HPCシステムズ<6597>
■好悪材料~量子コンピュータのアプリケーションを開発するQunaSysと業務提携。量子コンピュータを応用した量子化学計算領域の技術開発で協業する
科学技術計算用の高性能コンピュータ・ソフトを企業や研究機関に納入する。
量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解けない問題を、膨大な計算量で解ける可能性がある技術として注目されている。化学計算、材料開発、機械学習などの分野での活用が期待されており、量子コンピュータのハードウェア、アプリケーションの研究開発が急速に進んでいる。
HPCシステムズは、素材・材料研究開発のマテリアルサイエンス分野を重点領域と位置づけ、大手製造業と大学官公庁の最先端研究開発向けに、量子化学計算を始めとする計算化学アプリケーション、システムに関する技術力と知見を活かし、様々なソリューションを展開している。QunaSysとは互いに保有する技術・産業用知見および顧客基盤の共有、量子コンピュータを応用した量子化学計算領域の技術開発、豊田通商の支援による事業開発などを行うとしている。
注:写真はイメージ
他の量子コンピュータ関連株にも関心が向かう可能性がある。例えば、富士通<6702>は汎用コンピュータ技術と量子コンピュータの融合した「デジタルアニーラ」で先行。カナダの1QBit(ワンキュービット)と量子コンピュータ技術を応用した最適化や機械学習などのAI(人工知能)分野で協業する。
またNEC<6701>は20年以上前から研究開発を進め、量子コンピュータの方式の1つ「量子アニーリングマシン」の実用化を目指している。そのほかエヌエフ回路設計ブロック<6864>は量子コンピュータ向けに信号増幅技術を提供し、フィックスターズ<3687>は量子コンピュータの導入支援などを手掛ける。またYKT<2693>は量子コンピュータの研究開発に使う電子部品を取り扱う。
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