明日の株式相場戦略=直近IPO乱舞、調整一巡銘柄に反騰の芽

市況
2020年8月12日 17時37分

きょう(12日)の東京株式市場では、総じて買いが優勢の地合いとなった。前日に日経平均がショートカバー主体で400円を超えるやや行き過ぎた戻りをみせたところに、前日の米国株が終盤失速しNYダウが引け味の悪い104ドル安で着地。普通に考えれば日経平均、TOPIXともに反落やむなしという場面だが、そうはならなかった。2万3000円ラインはかなり厚い壁として意識されているが、まだきょうの段階ではその壁の存在に身構えるところまで行っていない。

引き続きグロース売りのバリュー買いが今の全体相場のトレンドだ。半導体関連株はアドバンテスト<6857>やレーザーテック<6920>などは下げ止まっているが、これまで調整が浅かった東京エレクトロン<8035>などが売りに押されるなど、業種全体として本格的な出直りにはもうしばらく時間を要することになりそうだ。ただ、目先筋の利食い圧力が一巡したことで、半導体セクターが全体指数を押し下げる悪役にはなりにくくなっている。米国では半導体製造装置で世界トップメーカーであるアプライドマテリアルズの決算が13日引け後(日本時間の14日早朝)に判明することで、ここがひとつのヤマ場となる。

一方で、きょうは日本製鉄<5401>を筆頭とする鉄鋼株や東京電力ホールディングス<9501>などをはじめ電力株、あるいはファナック<6954>やSMC<6273>など設備投資関連といった景気敏感セクターがおしなべて高く、指数を支える形となった。バリュー株という範疇で括れば三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクもここにきて戻り足が顕著である。これらは買い戻しが中心で、それもハイテク株のように先鋭的な買われ方ではなく、広く浅い資金の流入で、均等に水かさが増すような株価上昇となりやすい。しかし、派手さはないけれど今の相場を支えているのは紛れもなくこうした緩やかな資金の流れだ。

ただ、腕に覚えのある個人投資家には物足りない。リスク承知でボラティリティの高い銘柄に照準を合わせたいというのが本音であり、そうした物色対象を求める資金が流れ込んでいるのが直近IPO銘柄だ。

例えば8月7日にマザーズに新規上場した最新IPO銘柄、ファクトリー向けシステム構築及びAIソフト開発を手掛けるティアンドエス<4055>は1500円高のストップ高で9350円に張り付いた。更に、大商いで人気を博したのが遺伝子治療薬の研究開発を行うモダリス<4883>で一時は482円高の2850円とストップ高目前まで買われる場面があった。もっともモダリスについては「店内商いの90%が1日信用取引(返済期限が当日というデイトレード専用の制度)で行われている」(国内ネット証券大手)というだけあって資金の回転も極めて速い。後場に入ると急速に上げ幅を縮小する展開となった。また、値動きの荒さという点では、ソフト開発及びIT人材サービスを展開するSun Asterisk<4053>が目を引く。同社株は成長期待に富み、7月末に上場後ほぼ一直線に上値を追い続けたが、きょうはその反動を余儀なくされた。朝方から上値の重い展開だったが、後場終盤になって一気に手仕舞い売りが出て300円あまり下げて引けた。一方、きょうはモバイル端末の遠隔管理を行うアイキューブドシステムズ<4495>、ITエンジニア派遣を手掛けるBranding Engineer<7352>、ウェブサイトなどのデザイン支援ビジネスを展開するグッドパッチ<7351>など、初値形成後はさえない動きとなっていた直近IPO銘柄が満を持して逆襲高の狼煙を上げた。

直近IPO銘柄はツボにはまればその値幅取り効果は一頭地を抜くが、当然ながら逆目を引くことも多い。ビジネスモデルに魅力があることが資金を呼び込む条件であることは間違いない。しかし、目先の値動きはそうした企業の成長性とは離れた株式需給に委ねられる。投資とトレードの違いを割り切ることが明確に求められる。

日程面では、あすは7月の国内企業物価指数が朝方取引開始前に日銀から開示される。主要企業の決算発表では三菱商事<8058>、富士フイルムホールディングス<4901>、電通グループ<4324>のほか、光通信<9435>などにもマーケットの視線を集めそうだ。海外では7月のインド消費者物価指数、7月の豪雇用統計。米国では7月の米輸出入物価、週間の米新規失業保険申請件数のほか、米30年国債の入札なども予定されている。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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