明日の株式相場戦略=コロナ恐慌とコロナバブルの陰陽
きょう(25日)の東京株式市場は、リスクオンが加速し日経平均は一時2万3400円台に歩を進めた。新型コロナウイルスがもたらした世界株暴落の連鎖、その直前の2月21日終値2万2386円を上回る場面があった。ワクチンや治療法開発への期待が原点とすれば、その最初の一歩を踏み出す前に、いつか訪れる経済の完全回復を株価的には100%織り込んでしまった状態だが、コロナ前とは大きな違いがある。世界的な財政出動や空前の金融緩和的措置が流動性相場を作り上げているということだ。今はコロナ恐慌とコロナバブルが共存したような状態。これが今後どのようにその波紋を変えるのか、株価のみに一喜一憂するのではなく、実体経済とのコントラストに我々は目を凝らしていく必要がある。
マーケットに目を向けると、直近IPO銘柄の一角が相変わらずの吸引力で個人投資家を中心とした資金を引き寄せている。収益成長期待と株式好需給が両輪となって株高路線をまい進する構図だ。見方によってはグロース株投資の究極形態であり、モメンタム相場の極致ともいえる。朝方に高寄りした後、値を消すパターンの銘柄も少なくないが、目先の利食いが一服するとそれを見計らったように再びホットマネーが流れ込んでくる。PERやPBRなどの伝統的な株価指標とは全く無縁の世界。バブル的な色彩が強いが、参戦している資金は百戦錬磨で、そんなことを言うだけ野暮といったところか。
直近IPOの中でも生まれたて、8月20日にマザーズに新規上場したニューラルポケット<4056>は独自開発のAIアルゴによる画像・動画解析とエッジコンピューティング技術に精通、まさにデジタルトランスフォーメーション(DX)を先導する次世代テクノロジーの塊のような印象を投資家に与え、驚異的な人気を博した。公開価格の5.7倍となる5100円で初値を形成、その余勢を駆ってセカンダリーでも2日連続のストップ高でザラ場では商いが成立していない。過去には、AI関連として鳴り物入りで登場したHEROZ<4382>が公開価格の何と11倍で初値をつけたこともあったが、今の地合いはその時を彷彿させるような形で、直近IPO銘柄群全体に火が燃え広がっている状況だ。
また、きょうはクラウド型ECプラットフォーム構築を手掛けるインターファクトリー<4057>がマザーズに新規上場。言うに及ばす大量の買い注文を集め、公開価格960円に対し気配値のまま2208円まで駆け上がりカイ気配のまま取引を終えている。このほか、今月7日に登場したティアンドエス<4055>の人気も鮮烈だ。半導体工場向けシステムのほかAIソフトウェア開発にも展開し、やはり時流に乗る成長ワードに触発されたように投資資金の攻勢を誘っている。株価は上場2日目に公開価格の2.5倍(7010円)で生まれた後、連日のストップ高を交え、押し目なしの急騰劇を演じた。きょうは後半伸び悩んだが、一時2500円近い上昇をみせ2万8000円台まで水準を切り上げている。
直近IPO銘柄については、クラウドやAI・IoTなどアフターコロナで成長期待の高いDX周辺銘柄に優位性があることは確かだが、どれが買いでどれが売りというような次元で話を進めても現状はあまり意味をなさない。強い銘柄についていき、逆目を引いた時の撤退ポイントを決めて厳守する。これは投資ではなくトレードだ。
もちろん、こういう時に近視眼的にならず、IPO絡みの銘柄から離れた視点も必要。例えば、プリント基板の真空プレス機のメーカーとして高い商品競争力を有する北川精機<6327>。5G関連の投資需要を取り込むことに成功しており、好業績と相まって再び上値を指向し始めた。また、独SAPのERPソフトを軸にシステム導入コンサル及び保守を展開し、RPA領域でも顧客ニーズ獲得を進めるノムラシステムコーポレーション<3940>も、調整一巡から再浮上の機が熟している感触。そして、テレワーク関連の一角では、ここfonfun<2323>が活況高となっているが、この流れは同社株同様に小型ながら流動性と仕手性を併せ持つミナトホールディングス<6862>の株価も刺激しそうだ。ミナトHDは、今月に入りテレワーク関連の製品・サービスを手掛けるプリンストン(東京都千代田区)をM&Aで傘下に収めることを発表している。新値圏浮上が目前で要マークとなろう。
日程面では、あすは7月の企業向けサービス価格指数、6月の景気動向指数(確報値)など。海外では7月の米耐久財受注に注目が集まる。また、米5年物国債の入札も予定。
(中村潤一)