緊急特集「アベノミクス相場」去りし後、辞意表明と600円急落の意味するもの <株探トップ特集>

特集
2020年8月28日 20時07分

―ついに超長期政権に幕、マーケットの視線は次期首相と衆院選に―

28日の東京株式市場は、後場に入り大荒れの展開となった。午後2時過ぎに「安倍首相が辞任の意向固める」との報道が流れると、日経平均株価は一時600円を超える急落となった。約7年8ヵ月続いた長期政権に幕が引かれることになり、来週以降、株式市場は「ポスト安倍」を巡り、一気に緊張感を高めることになる。市場関係者は今後の展開をどう予想するのか。

●首相辞任報道でアルゴ売りが流入、長期政権の後の政局は不安定化の懸念

この日の午後2時以降の株価急落に関して、市場関係者からは「安倍首相の辞任報道を受け、アルゴリズム取引の売りが一気に流入し株価を押し下げた」との見方が出ていた。ただ、引けにかけては下げ渋り、結局、前日比326円安で取引を終えた。午後5時から開催された記者会見では、安倍首相は健康問題を理由に正式に辞任を表明した。

憲政史上最長の7年8ヵ月間の超長期に及んだ安倍政権だが、市場関係者からは「長期政権のあとの政権は短期になることが、これまでの通例。来週の相場は荒れるかもしれない」(ストラテジスト)との声も聞かれている。

●順当なら次期首相は菅、岸田氏、金融緩和と財政出動の経済政策は不変か

今後の政治日程を考慮すると、来年10月に衆議院議員は任期満了を迎え、それまでには解散・総選挙を行うことになる。このため、ポスト安倍政権は、当面は選挙管理内閣となることも予想される。安倍首相の後任として市場関係者からは「順当なら菅官房長官か岸田政調会長。場合によって麻生財務大臣、ダークホースは河野防衛大臣。そして人気の高い石破元幹事長」との下馬評が出ている。市場の関心は、超低金利の金融緩和と積極的な財政出動を背景とした「アベノミクス」がどうなるかに向かっている。しかし、「経済政策でアベノミクス路線が大きく変わる可能性は考えにくい」とみる声は多い。

●急落があれば絶好の買い場の声も、石破氏が浮上なら相場には波乱の芽

今後、週末から来週にかけての政局の状況に左右される面は大きいものの、いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「もし安倍首相の辞任を理由に株価が急落する場面があれば、そこは絶好の買い場となるだろう」と予想する。「そもそも足もとの東京市場はアベノミクスを材料として株価が上昇しているわけではなく、米国市場の要因が大きい。また、もし菅氏やあるいは岸田氏などが新たな首相に就任しても、新型コロナウイルス感染拡大という有事のもとで安倍首相の路線を大きく変えることは考えにくい」と同氏は指摘する。

そんななか、リスク要因として挙げられているのが、次期首相に石破元幹事長が就任することだ。同氏は、日銀の超金融緩和によるアベノミクス路線に批判的とみられている。今回の首相交代の影響が日銀の金融政策変更にまで及べば、相場の基調は変わる。上田ハーローの山内俊哉執行役員は「石破氏が浮上するかどうかは、自民党が代表を選ぶために総裁選を行うかによるだろう」とみている。同氏は政局が意識されるなか、いったんは円高も予想されるが、安倍路線の継続が認識されるとともに円安基調となると予想している。

●ムサシやイムラ封筒の株価は急騰、今秋に向け政局相場に突入へ

また、気になるのは衆議院議員の任期満了が近づくなか、野党の足並みが揃わないうちに一気に今秋に向けて国会解散から総選挙に移る可能性はないかだ。これに対しては「コロナ禍のなか急遽、総選挙を行うことが国民の支持を得ることにつながるかは疑問だ。また、選挙の準備を整えたい公明党も反対するのではないか」(山内氏)との見方がある。

ポスト安倍に誰がつくのか。いずれにせよ、リーマン・ショック後の急激な円高を是正し、大幅な株高を実現した安倍政権はついに幕を閉じる。これからは、政治は変動の局面に入る。28日の東京株式市場では後場に入り、ムサシ <7521> [JQ]やイムラ封筒 <3955> [東証2]といった選挙関連銘柄が急騰したことは、今後の相場の状況を示唆しているようにみえる。

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