押し寄せるバッタの大群を迎え撃て!出番到来の「蝗害」対策関連株 <株探トップ特集>

特集
2020年9月2日 19時30分

―世界各地で食糧に多大な損害発生、殺虫剤関連などに需要拡大期待が膨らむ―

アフリカ東部を中心に大量繁殖したバッタは、中東のほかインド、パキスタンといった南西アジア地区に襲来しトウモロコシや小麦などを食い荒らすことで、多大な損害を発生させている。世界各地に食糧問題をもたらしているバッタによる災厄である蝗害(こうがい)は、食糧輸入大国である日本にも影響を及ぼすことが懸念されている。こうしたなか、市場ではバッタ対策関連株に関心が集まっている。

●日本政府はFAOなどとバッタ対策プロジェクトで連携

世界規模での脅威となりつつあるバッタ被害に対して、日本も国際支援に乗り出している。日本政府は7月下旬、国連食糧農業機関(FAO)、国際協力機構(JICA)、タジキスタン共和国の農業省とのバッタ管理対策改善プロジェクトについて、連携を継続していくと発表した。人間の健康や自然環境に関する作物および放牧地でのバッタの被害を防止・抑制することで、食糧安全保障と農村の生計を強化することが目標だ。また最終的には地域全体の貧困削減と経済的機会の促進を支援する。総額7億9800万円規模の5年間の地域プロジェクトで、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンを含む、全ての中央アジア諸国およびアフガニスタンを実施対象としている。

これらの国は農業が主要産業、もしくは農業産品が主要な輸出品のため、農業生産性の向上は、地域の食糧の安全保障、農民の生活、貧困削減に直結した重要課題となる。中央アジア地域でのバッタの大量発生源は、アラル海やカスピ海沿岸部にも及び、温暖化によりこれまで影響のなかった高緯度地域においてもバッタ被害が報告されている。このため、同地域において効果的にバッタ被害を削減するには、これらの国で連携し、バッタの発生状況の共有と対策を講じる必要もあるとされている。

●新型コロナ流行にバッタ被害が追い打ちかける

バッタ被害に悩む多くの国が以前から洪水や干ばつといった自然災害や紛争などにより食糧不安の状況にあったが、新型コロナウイルス感染症の流行にバッタ大発生が脆弱な状況に更に追い打ちをかけている。バッタによる農作物の被害については、各国が公表に消極的で全容は分かっていないが、実際のところはかなり危機的な状況とみられている。今回の中央アジアなどへの支援に関して、メディアではバッタ駆除の殺虫剤や噴霧器のほか、発生場所のデータを収集・共有するための全地球測位システム(GPS)の受信機を提供すると伝えている。また、殺虫剤散布のためにドローンなどの活用なども見込まれそうだ。

なお、東アフリカから南西アジアにかけて大発生中のサバクトビバッタについて国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)によると、アフリカのモーリタニアから中東、インドまでの南西アジアにかけて広く分布し、約60ヵ国が農業被害に遭い、その面積は陸地面積の約20%とされるようだ。

サバクトビバッタは変温動物のため、低温下では飛翔できなくなる。そのため、ヒマラヤ山脈を越えられず、東アジアまでは及ばないとも考えられている。しかし、中国雲南省では黄色角竹バッタという別のバッタの大群が報告されている。竹やバショウ、イネ科の植物などを食い尽くす被害が伝わっており、食糧大国である中国の農業被害は中国からの輸入に頼る日本にも大きく影響してくるだろう。

●殺虫剤関連の日本農薬やSDSバイオ、保土谷など注目

バッタ対策の関連銘柄は、まずは殺虫剤となる。日本農薬 <4997> は農薬をコア技術として、医薬品、動物用医薬品、生活環境改善関連製品を手掛けており、害虫駆除においては稲・果樹・果菜・豆類・樹木などの広範囲の害虫に効果を示す黄褐色可乳化油状液体を製造している。フマキラー <4998> [東証2]は「ベープ」シリーズをはじめとした害虫の殺虫・駆除および虫よけ製品を製造し、アース製薬 <4985> は虫ケア用品(殺虫剤)や防虫剤を手掛けている。

エス・ディー・エス バイオテック <4952> [東証2]は研究開発型の農薬原体メーカーであり、つくば研究所・みのり農事試験場で、新農薬の研究開発に取り組んでいる。住友化学 <4005> は害虫に対して接触効果、食毒効果がある有機リン系殺虫剤などを手掛ける。保土谷化学工業 <4112> はアグロサイエンスセグメントにおいて、畑作用除草剤、芝生用除草剤、殺虫剤等の分野での製剤などを手掛けている。

●噴霧器で丸山製、クボタ、GPS関連の古野電、ドーンなど

噴霧器においては、丸山製作所 <6316> は農林業機械を手掛けており、人力防除機、背負動力散布機のほか、無人ヘリと同様の少量散布が可能な液体散布用マルチローターを手掛ける。クボタ <6326> においても背負動力噴霧機のほか、農業用ドローンによる薬剤散布を展開している。マキタ <6586> は主力の電動工具のほか、電動芝刈り機や充電式噴霧器など園芸分野も展開。井関農機 <6310> は農業機械を主力としており、人力噴霧機・動力噴霧機などを手掛けている。ヤマハ発動機 <7272> は自動飛行が可能な農業用ドローンを展開しており、産業用無人ヘリコプターに匹敵する高い散布品質を実現している。

GPSの関連としては、船舶用電子機器が主力の古野電気 <6814> が、幅広い分野でGPSに関連する機器・サービスを手掛けている。ドーン <2303> [JQ]は地図情報ソフトなどを手掛けており、GPS関連では人気化しやすい。イメージ ワン <2667> [JQ]は衛星画像やUAV(小型無人航空機)画像などを展開。エコモット <3987> [東証M]はGPS車両運行管理ソリューションを手掛けている。

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