異例のコロナ禍「米大統領選」の行方、トランプ氏感染で情勢は混迷へ <株探トップ特集>

特集
2020年10月6日 19時30分

―バイデン候補の支持率は急上昇、大逆転の余地残り依然として予断許さず―

全世界が注視する「米国大統領選挙」まで、あと1ヵ月。いよいよレースは最終盤の追い込みに入ったが、そこへ先週末10月2日にトランプ米大統領が、新型コロナウイルスに感染するという予想もしなかったニュースが飛び込んできた。これに伴い、大統領選は混沌とした状況になっている。市場には民主党のバイデン候補が一段と優勢になったという見方が強まったが、トランプ大統領は健在を強調し早くも現地時間の5日には退院した。これを受け、同日の NYダウは大幅高となった。そんななか、投開票日の11月3日までには「状況が逆転する可能性はまだ十分にある」という見方も浮上している。

●トランプ氏の健在を評価で株価は急反発

世界の市場関係者が、固唾を飲んで見守る米大統領選だが、その行方はトランプ大統領の新型コロナ感染で、一気に状況が変わりつつある。2日の同氏の感染公表を受け、同日のNYダウは一時400ドルを超す下落となる場面があったが、週明けの5日は一転して、465ドル高と急反発した。新型コロナによる健康悪化が懸念されたトランプ大統領は、重症患者向け薬を投与されたものの健在を強調。5日には退院し、大統領選への早期復帰をアピールした。この日のNYダウ急反発の背景には、「トランプ氏の健康悪化を視野に入れ空売りを膨らませていた筋が、買い戻しを入れたようだ」という見方も出ていた。

●バイデン氏の支持率が急上昇、民主党勝利でも株高期待

しかし、目先のトランプ氏の健在が評価されたものの、先行きには健康不安を残しているうえにコロナ対策への批判も強まった。こうしたなか、足もとで民主党バイデン氏の支持率は急上昇している。政治情報サイトの米リアル・クリア・ポリティクスによる集計では、9月初旬ではバイデン50%、トランプ49%と一時拮抗していた両者だが、直近ではバイデン61.0%、トランプ37.5%と一気にバイデン氏優勢に傾いた。

これまで、市場には今回の大統領選が大接戦となり、選挙後も勝者は明確にならず法廷に持ち込まれ泥沼化することを懸念する見方が出ていた。それだけに「バイデン氏が大差で勝てば、法廷闘争は避けられる」(市場関係者)ことを前向きに評価する見方も浮上した。大統領選に加え、同時に実施される議会選挙でも民主党が下院に加え上院も制し完勝する、という見方も強まった。バイデン氏は、法人税増税や富裕層課税を掲げていることから「民主党の勝利は株式市場には逆風になる」という見方が一般的だったが、増税の影響は4兆ドルに対して7兆ドル超の財政支出が予定されていることから、市場には民主党による環境関連事業やインフラ投資に対する期待が急浮上している。民主党が政権を取り戻しても、米連邦準備制度理事会(FRB)によるゼロ金利政策や対中政策などの基本路線は変わらないだけに、「民主党=株安」の図式は急速に後退しつつある。

●民主党政権誕生ならバリューなど景気敏感株が復活か

また、これまでの株式市場のイメージでは、民主党が勝てばハイテク株が買われ、共和党勝利なら製造業などバリュー株が買われるというものだった。しかし、民主党の財政支出による景気刺激策はバリュー株の押し上げ要因となるという見方が浮上している。もちろん、パリ協定復帰を掲げていることから環境関連株には追い風だ。

今年に入っての、電気自動車(EV)最大手テスラの急騰や、クリーンエネルギー関連の米ネクステラ・エナジーがエクソン・モービルを時価総額で一時逆転したことは、その象徴といえる。また、建設資材大手のバルカン・マテリアルズといった銘柄も上昇している。日本株でも、米公共投資関連の信越化学工業 <4063> や太平洋セメント <5233> などは見直されそうだ。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)にとっては財政支出増が米金利上昇要因となり、高PERが修正されかねないことや、納税逃れが問題視されている点が逆風になるとの観測もある。しかし、コロナ下ではIT投資の追い風は続き、結局GAFAは上昇するとの声は多い。

●トランプ氏がコロナ克服なら大逆転の芽残す

ただし、トランプ氏のコロナ感染で情勢はバイデン氏率いる民主党が優勢となったとの見方は強いものの、その一方で、「民主党への追い風はそれほど強くはなく、トランプ大統領の共和党はこの先盛り返す可能性はある」(アナリスト)という声も少なくない。トランプ氏は40%近い有権者層の支持を確保しており、コロナ克服を前面に押し出し、浮動票の獲得に成功すれば「風向きの変化次第では2016年の大逆転の再演も十分あり得る」(同)という見方だ。ただ、そのためには、トランプ氏が健康を取り戻し、コロナに打ち勝った強い大統領というイメージを保つことが絶対条件となる。

その意味で、今月15日と22日に予定されているテレビ討論会に参加し支持を得ることができるかが焦点となる。「もし、トランプ氏が大統領選に本格復帰できれば新型コロナワクチンの早期承認や一段の中国批判で人気を取り戻すことも可能となるだろう」(同)との声もある。逆に言えば、トランプ氏の健康状態が悪化すれば挽回は困難だ。結局、最後はトランプ氏の健康状態に左右されるものの、なお一波乱や二波乱は起こり得る状況にある。

●今後の米大統領選の予定

10月 7日  副大統領候補のテレビ討論会

15日  第2回テレビ討論会

22日  第3回テレビ討論会

11月 3日  大統領選挙

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