【植木靖男の相場展望】 ─ 米大統領選を前にした緊迫状態か
「米大統領選を前にした緊迫状態か」
●一人歩きする「新大統領が誰であれ株高」の危うさ
東京市場は高値圏で膠着状態にある。米大統領選を間近に控えて様子見しているようにみえる。
となれば当然のことながら、大統領選の帰趨を巡って議論は賑やかになる。メディアの伝える情勢はバイデン氏が有利というものだ。確かにトランプ氏は新型コロナウイルス感染で分が悪いといわれる。選挙資金の調達でも苦戦しているという。スポンサーのボーイングは「737MAX」問題で収益が落ち、もう一つのスポンサーであるカジノ王シェルドン・アデルソンもラスベガスやマカオのカジノが不振で、ともに資金を提供する余裕などないようだ。
こうしたなか、いま選挙に向けて共和党と民主党が駆け引きを繰り返しているのが追加経済対策だ。民主党の財政支出の規模と共和党のそれとは開きがあり、協議が難航している。だが、パウエルFRB議長は早く、早くと促している。
共和党は最初の数字から引き上げていくというビジネス交渉並みのディールで、民主党は結局、共和党の提案する規模で合意せざるを得ないだろう、との見方がある。どうやら、トランプ氏の方が役者は一枚も二枚も上手というのが関係者の言。とはいえ、これでトランプ氏が得点しても選挙は水モノ、勝てるかどうかは怪しい。
それに、問題はどちらが勝てば市場にとってプラスなのかはっきりしないことだ。これまでは良いとこ取りで、どちらが勝っても株高という見方が一人歩きしているようにみえる。これは危うい。この逆もあり得るからだ。つまりどちらが勝っても、株安になるという見方だ。トランプ氏は再選されれば、もはや無理して株高を演出する必要はなく、株高誘導の手を抜くかもしれない。また、バイデン氏が勝った場合、投票で敗れたトランプ氏はいちゃもんをつけて混乱するかもしれない。つれて、当てにしたバイデン氏の財政大盤振る舞いもかなり先になるかもしれない。
●一番天井までハイテクが牽引、二番天井に向けて主役交代へ
さて、当面の株価をどう読めばよいのか。今週末にかけての日経平均株価は10月に入って初めての危機を迎えた。ファーストリテイリング <9983> の急伸でプラスと思いきや、結局大引けは安く、週明け反発しないと、危機を回避できずに蟻の巣地獄の態となってしまうかもしれない。
まして、TOPIXは日経平均以上に厳しさを増している。選挙前の最も危惧される局面となりそうだ。やはり米国株の大幅反発を期待したいところだ。
幸い、最も望まれていた海外投資家が久しぶりに5~9日の週に買い越しになったという。裁定取引に絡んだ単なる現物の買い戻しなのか定かではないが、主役が買ってくるのは大歓迎だ。それにしても、キモ(肝)となるところで日銀がダンマリを決め込んでいるのには違和感を持たざるを得ない。ひょっとして、先行き相場が急落するのを見込んでいるのか。気になるところだ。
ところで、ここへきての物色の流れはハイテクノロジー株、つまり半導体、オンライン、医療関連が引き続き主役の座を占めている。歴史的にみても一番天井をつけるまではハイテク株、その後調整してからの二番天井に向けては主役が代わる。今回でいえば、景気敏感株に主役が交代する。こうした主役の交代劇は歴史的にみて万古不易の大原則だ。日経平均とTOPIX、NYダウ平均とナスダックの動きからも明らかだ。
ここへきて、マザーズ市場の動きがきわめて強い。理屈はともかく個人投資家に刺激を与えるに十分な値動きだ。
さて今回は王道から、富士フイルムホールディングス <4901> 。アビガンはともかく、世界から新型コロナの製造を受託しており、バイオ医薬品開発・製造受託でのシェアは世界第2位という。マザーズからは医師転職サイトのMRT <6034> [東証M]か。週明け反発するかどうか。また、リードフレーム大手の三井ハイテック <6966> は業績回復が著しいにもかかわらず出遅れだ。
2020年10月16日 記
株探ニュース