ポストコロナ時代担うECの新たな形、ライブコマース関連に熱い視線 <株探トップ特集>

特集
2020年11月19日 19時30分

―中国「独身の日」では販売チャネルの主役に、メディアで多く取り上げられ日本でも関心高まる―

中国で年間最大のインターネット通販セールである「独身の日」が、11月12日深夜0時(日本時間午前1時)に終了した。中国Eコマース(EC)最大手のアリババ集団では、セール期間中の累計取扱高が4982億元(約7兆9000億円)を記録。今年はセール期間を例年よりも延ばしたこともあり、19年の2684億元の1.9倍に拡大して過去最高を記録した。また、中国EC第2位の京東集団(JDドットコム)も2715億元(約4兆2700億円)と前年を3割以上も上回り、上位2社だけで、日本円にして12兆円という驚異の流通額をたたき出した。

これらは日本でも広く報じられたが、同時に今年の「独身の日」セールの最大の特徴として、「ライブコマース」の利用が増えたと耳にした人も多いのではないだろうか。日本におけるライブコマースはまだ広がりをみせてはいないものの、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、EC で買い物をする人は着実に増えており、足もとで警戒される「第3波」の襲来もこの傾向を強める可能性がある。今後、日本でもライブコマースの利用が加速する可能性は高く、関連銘柄に注目したい。

●ライブコマースはネット版テレビショッピング

ライブコマースは、インターネット上で配信される生放送(ライブ)で商品を紹介しながら購入につなげる即売スタイルの手法だ。「ネット上で行われる実演販売」あるいは「ネット版テレビショッピング」と考えるとわかりやすく、一般的なテレビショッピングやECが発信側から一方向に情報を伝えるのに対し、ライブコマースでは視聴者がリアルタイムで質問やコメントを通じて出演者とコミュニケーションをとることができるのが特徴。視聴者は商品に関する疑問や使用感を確認できることから購入後に使用するイメージが湧きやすく、高い成約率につながるとされている。

中国では18年ごろから流行していたが、これまでは販売チャネルの主流にはなっていなかった。だが、今年はコロナ禍により外出が控えられ、街中の商店は休業せざるを得なくなったことで、商店主たちがライブコマースに注目し、閉店している店内でスマホを使って店舗の商品の販売を行ったことで売り手の増加につながった。一方の買い手側も外出自粛のなか、「買い物の手段」としてだけではなく「買い物もできる手頃な娯楽」として利用するようになり、ECの主流チャネルに躍り出るまでになったといわれている。

●日本では今後の定着に期待

日本のライブコマースに関しては、ディー・エヌ・エー <2432> が17年3月にハンドメイド系ライブコマース「Laffy」をスタートさせたほか、メルカリ <4385> [東証M]が17年7月に「メルカリチャンネル」を、BASE <4477> [東証M]が17年9月に「BASEライブ」をそれぞれスタートさせたが、いずれも現在は撤退している。ECの利用が増えているとはいえ、いまだネットショッピング利用世帯の割合は5割弱(総務省「家計消費状況調査」)であることや、中国に比べてECの市場規模が小さいこと、更にライブコマースのアプリの機能が利用者に十分ではなかったことなどが要因とされており、いまだライブコマースへの認知度は低い。

ただ、中国でもアリババが16年3月にライブコマースのサービスを提供し、今年になって主流となったように、消費者に受け入れられるのにはある程度の時間がかかる。日本でも、今回多くメディアにライブコマースが紹介されたことで、数年後にはECのなかでも大きな割合を占める可能性があり、今後の成長への期待は強い。

●ライブコマースを支援する銘柄に注目

ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス <4433> は、12月にEC支援の新たなサービスとして「LIVEコマース」サービスの開始を予定しており注目したい。10月12日に発表した20年8月期業績は、下期にツーリズム分野が新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、EC支援・受託などのデジタル分野が大きく伸長し、営業利益は31億4900万円(前の期比5.3%増)で着地。続く21年8月期は引き続きEC支援が牽引役となり、同35億円(前期比11.1%増)を見込む。

ホットリンク <3680> [東証M]は、7月からRopEar(東京都新宿区)が展開する映像のプロ集団「#やわラボ」と協力し、SNSライブコマース支援サービスを提供しており、注目したい。11月13日に発表した第3四半期累計(1-9月)決算では、同サービスを含むSNSマーケティング支援サービス事業(コンサル、広告運用、アカウント運用など)は、サービスラインアップの拡充もあって前年同期比98.3%増に伸長した。会社側では20年12月期業績予想については第4四半期を堅めにみつつ、営業損益1億4400万円の赤字(前の期16億9900万円の赤字)と損益改善を見込む。

電通グループ <4324> は傘下の電通ダイレクトマーケティングがライブコマースの集客から改善までをサポートする「LIVE★X(ライブクロス)」を提供している点に注目したい。11月11日に発表した第3四半期累計(1-9月)決算は純利益が102億8600万円(前年同期比2.2倍)で着地。事業構造改革費用などを計上した一方、出張費などのコストを削減したほか、海外のM&Aに関する費用負担が減少したことが寄与した。

また、KDDI <9433> は、グループで運営する総合ショッピングモール「au PAYマーケット」アプリで、ライブコマースサービス「ライブTV」を提供しており、関連銘柄に挙げられよう。

●利用拡大でメリットを受ける企業にも注目

このほか、UUUM <3990> [東証M]は、多くのユーチューバーのマネジメントを手掛けていることから、ライブコマースでタレントやインフルエンサーを起用するケースが増えれば、メリットが大きい。

また、イー・ガーディアン <6050> は、ライブコマースなどの動画をリアルタイムで監視しており、不適切な問題動画があればユーザーアカウントの停止や削除依頼の文面作成などの対応を行う動画監視サービスを提供している。両社ともライブコマースの利用が広がれば、商機の拡大につながりそうだ。

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