上方修正後の展開をボリンジャーバンドで分析すると(和島英樹)
「明日の好悪材料Next」~第28回
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
【今回チェックした「明日の好悪材料」記事一覧】
11月27日~12月3日分は業績の変動や個別材料が多く見られた。恵和<4251>は東証2部から1部への指定が決まり、トリケミカル研究所<4369>やロック・フィールド<2910>、ノーリツ<5943>は利益を増額。一方、内田洋行<8057>の決算は想定以上の軟調だった。また、政府は洋上風力発電の促進区域に指定した秋田県沖と千葉県沖の計3区域について、発電事業者の公募を始めたと発表した。
11月27日分 恵和<4251>
■好悪材料~東証が12月17日付で市場1部に指定する。一方、70万株の公募増資とオーバーアロットメントによる売り出しに伴う第3者割当増資を実施するほか、長村惠弌社長らが保有する70万株の株式売り出しを行う
液晶ディスプレイ用高機能フィルムを開発・製造。光学シートではスマートフォンのディスプレイに使われる光拡散フィルムなども手掛ける。
今回の資金調達の手取り概算額は11億4734万円。資金使途は、主として光学シート事業の生産性向上を目的としたシート機の建屋新設および設備新設の一部として充当。また借入金の返済にも回す。
同社が開発した複合拡散フィルムは、高精細で省電力な直下型ディスプレイの部材として一部メーカーに採用されるなど、今後の需要拡大を見込んでいるという。
光拡散フィルムは液晶の場合、バックライトから出る光を拡散するフィルム。エネルギーを有効に利用して、明るさがアップするとともに光ムラのないきれいな画面を実現するという。
12月17日付で市場1部に指定されるため、翌月である1月末の段階でTOPIX(東証株価指数)に算入される。
■『株探』プレミアムで確認できる恵和の通期業績の収益性推移
11月30日分 トリケミカル研究所<4369> ~ ☆テクニカル・チェック銘柄
■好悪材料~ 今期経常を14%上方修正・最高益予想を上乗せ、配当も10円増額
半導体や太陽電池の製造に必要な化学材料を製造販売している。多品種小ロット生産に特色。半導体関連で先行するアジア地域での存在感を強めている。
2021年1月期の第3四半期(20年2月~10月)累計の業績を発表、売上高は73億3900万円(前年同期比20.0%増)、営業利益22億300万円(同31.7%増)となった。
同時に通期の業績を上方修正、売上高は前回予想を6億5000万円上回る98億円(前期比18.5%増)、営業利益は2億8000万円増額の26億5000万円(同13.9%増)、1株利益427.5円となる見通し。期末一括の年間配当は前回予想比10円増配の68円(前期は58円)とする方針。
業績が堅調に推移している背景としては、有力な収益基盤である半導体分野においてあらゆるモノがネットにつながるIoTや次世代通信規格「5G」の普及を見越したサーバー、データセンターに向けた需要が堅調に推移していることを、同社は挙げている。
また利益面では、全社を挙げての経費削減に取り組んだことなども寄与しているとする。
■『株探』プレミアムで確認できるトリケミカル研究所の通期業績の収益性推移
同社の業績動向を探るうえで注視しておきたいのが、「High-k材料」と呼ぶ誘電率の高い膜だ。
半導体の微細化が進む中、線幅が10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下になってきている。幅が狭くなると従来の絶縁膜では電気を通してしまう現象が現れるという。High-kは電気を通しにくく、微細化にも対応できる。
トリケミカルのチャート形状をみると、週足のボリンジャーバンドでは、上昇基調の維持ながらも、目先的にはやや上値の重い展開になる可能性を示唆している。
ボリンジャーバンドは相場の勢いを示すテクニカル指標。ティピカルプライス(高値・安値・終値の平均値=TP)の移動平均線とプラス・マイナスの1σ(シグマ)~3σで構成される。
σとは標準偏差で、プラス・マイナス1σの間に株価が収まる確率はおよそ68%、プラス・マイナス2σでは同95%、プラス・マイナス3σでは同99%となる。
もみ合い相場の際には移動平均線が横ばいなので、上下のラインも横ばいとなる。この時にはプラス・マイナスσ、ないしは2σの間でのボックス相場を形成するのが一般的。
ところが例えば株価がプラス2σを大きく超えて上昇した際には、過熱感よりも「上昇トレンドの発生」を意味することがあり、投資家は追随していく必要がある。TPの移動平均やボリンジャーバンドも上昇に向かう。
今回は週足の13週線を使っている。株価は上向きのTPの移動平均線とプラス2σの間に沿う形で上昇している。いわゆる「バンドウォーク」(バンドに沿って動く)で基調は強い。
一方、プラス3σは下向きに転換しており、株価の上方向へのボラティリティ(変動率)の低下を示唆している。プラス2σもやや鈍化。これらからプラス1σ付近への調整もあり得る。
移動平均線の13週線は足元で1万2700円前後にあり、これを下値のサポートラインの目安にできる。一方、プラス2σを突破すれば、基調はさらに強くなる可能性がある。
■トリケミカル研究所のボリンジャーバンドを表示した週足の株式チャート
12月1日分 ロック・フィールド<2910>
■好悪材料~今期経常を一転30%増益に上方修正
サラダ主体の惣菜店「RF1(アール・エフ・ワン)」が主力。出店は百貨店や商業施設が軸。「神戸コロッケ」などの業態も。
2021年4月期の業績を上方修正し、売上高は前回予想を1億400万円上回る439億7400万円(前期比7.7%減)、営業利益は同3億9900万円増額の6億1300万円(同29.1%増)、1株利益20.3円になる見通し。営業利益の従来予想は同54.9%減益予想の2億1400万円だった。
利益の増額要因は、「アイテム数の集約による生産性の向上や、固定費低減活動によるコスト削減が進んだ効果」などとしている。また売上高についても、コロナでの店舗の営業時間短縮、外出の自粛などの影響は残るものの、緩やかに回復してきているとしている。
■『株探』プレミアムで確認できるロック・フィールドの業績修正の履歴
なお、2021年4月期の第2四半期(5~10月)累計の売上高は206億9800万円(前年同期比17.6%減)、営業利益は1億8600万円(同74.6%減)となっている。中食・惣菜業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響による巣ごもり消費によって、外食から内食、中食に消費行動が大きくシフトしている。
外食企業や飲食店のテイクアウトや宅配サービスの利用増加などで、業界の垣根を越えて競争が激化したことが要因としている。
通期業績の上方修正は中間期までの状況を踏まえ効率化、費用低減を進める一方で、収益環境が上半期より好転することを見越しているが、足元のコロナ感染者の拡大に伴う営業自粛の影響がどの程度になるかは注視しておく必要がありそうだ。
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