「国際金融都市構想」でフィンテック新旋風、動き出した有望株を追え <株探トップ特集>
―有力株が目白押し、次世代技術を活用し新しいマーケット構築に向けた動きが加速―
東京都では、東京を世界に冠たる国際金融都市とするため、2017年11月に「国際金融都市・東京」構想を策定している。3つの柱となるのは、(1)魅力的なビジネス面、生活面の環境整備(英語対応を含めた行政手続、税制などのビジネス面や、医療・教育などの生活面の環境を整備)、(2)東京市場に参加するプレーヤーの育成(資産運用業やフィンテックを中心に国内外の金融関係プレーヤーの東京市場参入を促進)、(3)金融による社会的課題解決への貢献(投資家保護の徹底や世界的に注目されつつあるESG投資の促進などにより、金融による社会的課題の解決に貢献)である。
例えばフィンテック産業の育成施策として、資産運用業者及びフィンテック系の外国企業の誘致を進めており、外国スタートアップ企業と国内金融機関などのコラボレーションを通じて、東京におけるフィンテック産業の育成を加速させている。前述の構想策定から早くも3年が経過したが、この短い間にも英国のブレグジットや香港を中心としたアジア情勢の変化、新型コロナウイルスの世界的まん延など、国際金融を取り巻く環境は大きく変化している。こうした変化に的確に対応するために、国際金融都市としての東京の地位確立を進める取り組みが今後一段と加速してくることが考えられる。
●東京だけではない国際金融都市の有力候補
実際、10月の会見で菅首相は海外金融人材を呼び込むことで市場の活性化が期待できるとの見方を示している。実現に向けて税制上の措置や行政の英語対応、在留資格上の問題についてスピード感を持って政府一体で取り組みたいと述べており、東京の国際金融都市としての発展を期待する一方、他の地域の金融機能を高めることのできる環境も作っていきたいとして、東京以外の国際金融都市実現の可能性にも言及。こういった流れの中において、大阪府の吉村洋文知事は大阪府市として国際金融都市の実現に挑戦する方針を表明し、フィンテックなどの新技術を活用して新たなマーケットを創造すると主張している。
福岡では国際金融機能を誘致するための推進組織「チームフクオカ」が国の動きも踏まえて誘致を進める方針であり、兵庫県の井戸敏三知事は、SBIホールディングス <8473> の北尾吉孝社長が大阪・神戸地区に国際金融センターを置く構想を表明したことを受けて、金融機関を含めた外資系企業の誘致を一層強化する方針を示している。
●フィンテック技術で新たなステージが創出
英シンクタンクZ/Yenグループなどが発表している9月末のグローバル金融センター指数(GFCI)によるランキングでは、ニューヨークが1位、ロンドンが2位、上海が3位、東京が4位、香港が5位、シンガポールが6位となっている。3月末に東京は3位に浮上していたが、再び上海に抜かれる形となっている。
10月に発生した東京証券取引所の終日売買停止では、ITインフラ整備の重要性が再確認されたが、同時に日本の株取引の約9割を東証が占めている「東証一極集中」に対するリスク分散策についても話題が及んだ。これを考えるうえで、企業が運営する私設取引システム(PTS)の育成も選択肢の一つとなっていることもあり、こうした観点からもフィンテックなどの新技術を活用した新しいマーケット構築に向けた展開の加速が期待され、折に触れて関連銘柄への関心が高まる可能性がある。
●国際金融都市で羽ばたく関連有望株は?
フィンテック関連の中核的な銘柄として、SBIホールディングスは外せない。地方銀行と資本・業務提携を進める「地銀連合構想」を進めており、政府の国際金融都市構想をめぐって大阪にPTSを設立する考えのほか、フィンテック企業の誘致に取り組むとしている。また、セレス <3696> はポイントサイト「モッピー」やアフィリエイトメディアなどのモバイルサービスのほか、フリーランス向け資金調達支援フィンテックサービス「nugget(ナゲット)」を展開しており注目だ。アステリア <3853> も有力関連株の一つ。同社は異なるシステムを持つ企業間のデータ連携やモバイルコンテンツ管理、ブロックチェーンや人工知能(AI)など先進技術への取り組みも積極的に行っている。
このほかでは、TKC <9746> もフィンテックサービスを提供しており、複数の金融機関と取り引きがあってもインターネットを利用してそれらの金融機関から取引データを自動受信できる。メタップス <6172> [東証M]は決済サービス「SPIKE」を軸にキャッシュレス化のみならずフィンテック領域で総合的にサービスを積極展開している。
また、マクアケ <4479> [東証M]は日本最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を運営しており、新たな時代の金融サービスを主導する。フリー <4478> [東証M]は「クラウド会計ソフトfreee」が主力で、米CBインサイツ社が行った調査で世界のフィンテック250社の一角として選出されたこともある。更にアイリッジ <3917> [東証M]も同テーマでは有力な位置にいる銘柄だ。同社はO2O(online to offline)業界のリーディングカンパニーとして、O2O・オムニチャネル・スマートフォンマーケティング領域での事業を推進、アプリ決済や電子地域通貨などのフィンテック、位置情報の活用を中心としたビッグデータの取り組みを進めている。
イルグルム <3690> [東証M]は、大規模ECサイトのバックエンドにフィンテックのブロックチェーン技術を応用。リアルワールド <3691> [東証M]は子会社REAL FINTECHにおいて、キャッシュレス社会に向けた報酬提供インフラを目指している。
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